ラプターズ戦が不振の王者ブルズが立ち直るきっかけに
マイケル・ジョーダンとシカゴ・ブルズが優勝した1997-98シーズンを追った全10話のドキュメンタリーシリーズ『The Last Dance』(邦題『マイケル・ジョーダン: ラストダンス』)の第1話と第2話では、このシーズンのブルズがいかに苦労したかがよく記録されている。
最初の3か月、スコッティ・ピッペンが不在だったブルズは、イースタン・カンファレンスで何とか戦い抜くのに、マイケル・ジョーダンに強く頼っていた。開幕から21試合を終え、ブルズは12勝9敗とイーストで7位という成績。2連覇中だった王者が、イースト10位にわずか1ゲーム差という状況だったのだ。
12月中旬に行なわれた2勝19敗のトロント・ラプターズとの一戦は、さほど意味がない試合かと思われた。だが、この一戦はブルズが本来の姿に戻るお膳立てとなるゲームになった。
まだ創設から3シーズン目だったラプターズを相手に、ブルズは97-70と大差で圧勝した。ミルウォーキー・バックスをわずか62得点に抑え、球団史上最少失点で勝利した数日後のことだった。
ラプターズは第1クォーターでわずか9得点しかあげられず、前半終了時点でも29得点と、試合は最初から終わったかのようだった。
当時のブルズのアシスタントコーチだったジミー・ロジャースは、ハーフタイムに放送局のWGNに対し「もちろん、かなり守備が良いね」と話している。
「第1Qは素晴らしい守備のスタートを切ることができたと思う。堅実で良いクォーターだった。第2Qは我々がスクラムゲームと呼ぶものだったね。攻守両面で少しぐちゃぐちゃだった」。
守備がラプターズを苦しめていた一方で、ロジャースはより多くの得点を望んでいた。ハーフタイムまでにブルズは40得点にとどまり、フィールドゴール成功率がわずか34%と不調だったからだ。
「(最近は)あまり得点できていない。今夜もそうだ。ここで打ち破り、堅実で良い後半にしたい」。
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最終的にブルズはFG成功率46%と、ショットを沈めることができた。だが、チームがショット不振から抜け出せたのに対し、ジョーダンは違っていた。FG16本中4本成功とわずか11得点に終わったのだ。自身のシーズン最少得点だった。特に5日間で4試合目だったこともあり、得点への負担が大きくなっていた影響が出始めていたのは明らかだ。
しかし、この白星を皮切りに、ブルズはその後の11試合で10勝をマークする。ジョーダンもその間に平均32.7得点、6.7リバウンド、FG成功率49.4%と復調し、最終的には5回目となる最後のシーズンMVP受賞を果たしている。
1月10日(同11日)には開幕から欠場していたピッペンがシーズンデビュー。その時点でブルズは24勝11敗とイースト首位に立っていた。最終的には、62勝20敗とユタ・ジャズに並ぶリーグ最高成績でシーズンを終えている。
理由がなんだったにせよ、ブルズは本来の自分たちに戻る瞬間を必要としていた。そしてそれは、ラプターズを犠牲にして訪れたのだ。
ちなみに、オフシーズンにピッペンとのトレードの噂にも上がった当時ラプターズの新人トレイシー・マグレディは、この試合で23分間プレイし、FG10本中3本成功で8得点、6リバウンドを記録している。
原文:A routine win over the Toronto Raptors turned around the 1997-98 season for the 'Last Dance' Chicago Bulls by Carlan Gay/NBA Canada(抄訳)