インディアナ・ペイサーズがドマンタス・サボニスやマルコム・ブログドン、キャリス・ルバートらを放出し、明らかに再建に乗り出した中で、マイルズ・ターナーがまだチームにいるのは少し奇妙だ。
誰もトレードの引き金を引かなかったのは、ターナーがそれだけの選手ではないということなのか。
NBA有数のビッグマン
オールディフェンシブチームに選ばれたことはないが、選出されもおかしくなかったのは一度ではない。リーグ有数のショットブロッカーであり、過去4年のうち2回、ブロックでリーグトップだった。
リーグ最高級のブロッカーたちの多くは、できるだけ多くのブロックを狙い、良いポジショニングニングをすることを犠牲にする。だが、ターナーはそうではない。ファウルをしない率は異様なほどで、堅実な基礎を持ち、それが最高級リムを守る力を支えている。
『BBall-Index』によれば、ターナーは最高のリムプロテクターのひとりだ。
Rim Protection matters for Centers hoping to have a strong defensive impact. But it's not the only key!
— BBall Index (@The_BBall_Index) July 28, 2022
⬆️ Elite Impact on Team Defense
⬇️ Bad Impact on Team Defense
➡️ Elite Rim Protectors
⬅️ Bad Rim Protectors
🟣🟡 Defensive Role
▫️⬜️ On-Ball Defensehttps://t.co/Xnn6TCpu23 pic.twitter.com/3jSoqvqlcS
NBAのプレイオフでビッグマンに求められるのは多才ぶりだが、ターナーにはそれもある。
要するに、ターナーはルディ・ゴベアを除き、リーグ最高のビッグマンディフェンダーとなり得る選手なのだ。どのチームも欲しがるような、守備の支えなのである。
リバウンドが弱いのか?
ターナーの守備に関する欠点は、リバウンドだ。6フィート11インチ(約211センチ)、250ポンド(約113キロ)というサイズの選手なら、1試合平均6.7リバウンドは少しがっかりさせる数字だろう。リーキーシーズンを除き、ターナー加入以降のペイサーズは、チームのディフェンシブリバウンドがリーグで下から3番目の数字にとどまっている。
生の数字が示すように、ターナーは決して悪いリバウンダーではない。サボニスと一緒にコートに立っていた時は、ペリメーターの外で守らなければいけないことも多かった。それでリバウンドを拾うための良いポジションにいられなかったのだ。
ボックスアウトに関しても勤勉だ。2021-22シーズンのNBAのトラッキングデータによれば、1試合平均のボックスアウトは14位。大量のリバウンドを拾っているわけではないが、少なくとも相手を遠ざけるための仕事はしているということだ。
攻撃は一長一短
攻撃面でのターナーのアイディアは魅力的だ。フロアを広げ、相手のセンターを引き出し、インサイドでも支配的になれるこのサイズの選手は多くない。
残念なのは、ターナーがそれらの半分を見せる場が練習にとどまっていることだ。
攻撃に関するターナーの大きな武器は、ピック&ポップの3ポイントショットだ。だが、それらを十分に決められていない。昨季は3P成功率33.3%と数字が落ちた。通算3P成功率も34.9%と大差ない。尊重できる数字ではあるが、相手チームが本当に恐れるほどでないのは明らかだ。
ターナーの3Pは大半がオープンなかたちから決めたものだ。昨季、NBAのトラッキングデータで6フィート(約183センチ)超と定義されるオープン3P試投100本超だった179選手のうち、ターナーは35位だった。そして成功率は32.5%だ。
彼を守るディフェンダーが喜んでヘルプに向かうのでは、ターナーのチームメイトにとって得点するのがより難しくなる。それに、相手がターナーをハードに守っていない時は、ターナーの攻撃におけるもうひとつのスキル、クローズアウトに来たときのアタックも効率的でなくなる。
ショットが決まっている時のターナーは見事だ。昨季序盤には、多彩なレパートリーの動きから40得点をあげたこともあった。
🔥 @Original_Turner was LOCKED IN Friday night.
— NBA (@NBA) October 23, 2021
40 points (career-high)
15-22 FGM
5 threes
10 rebounds
3 blocks pic.twitter.com/SCndq9qbqi
また、ターナーはプレイメーカーとしても一定であり、ペリメーターでボールを受けた時に、基本的な読み以上のことができない。
ターナーの3Pの脅威がもっと安定していたら、彼の攻撃力に対する見方はもっと楽観的なものとなるだろう。『Cleaning the Glass』のスタッツによれば、リムフィニッシャーとしては向上した。ポストからの攻撃も着実に向上しており、昨季は89パーセンタイルだった。
これらはどういう結論を導くか。守備におけるターナーの価値は非常に高く、理論上は練習より良く見えるジャンプショットで、攻撃も悪くはないということだ。
トップ50に入る選手というのが筆者の見解だ。オールスター選出には及ばないが、優勝を競うチームで非常に優れたスターターとなることはできるかもしれない。
契約状況
契約は最終年を迎え、新シーズンのサラリーはわずか1800万ドル(約24億3000万円/1ドル=135円換算)。リーグのサラリーリストでは76位。適正価格で非常に動きやすい契約だ。
トレードされない理由
ターナーは優勝を競うチームならどこでも起用されるようなタイプの選手だ。そして再建のタイムラインを考えれば、ペイサーズは彼を大きく活用できない。
また、『The Athletic』のジャレッド・ワイス記者が昨季報じたように、ターナー本人もチームにおける自分の役割に満足していないようだ。
ターナーはワイス記者に「ここでは見せかけのロールプレイヤー以上の評価をされていないのは明らかで、僕はもっともっと何かしらの機会を望んでいる」と話した。
「ここで与えられた役割をこなせるように、本当にハードにトライしているし、最大限に生かす方法を見つけようとしている。この2、3シーズン、それに努めてきた」
「でも、数字上で、ローテーションのロールプレイヤーという以上の評価をされていないことは明白だよ。自己評価はもっと高いんだ」
繰り返しになるが、なぜ彼は移籍しないのだろうか。
彼自身もその答えを知りたがっているようだが、ペイサーズは最大のリターンを得るために粘っているのだ。ポッドキャスト『Indy Cornrows』でホストを務めるマーク・シンドラーが見解を示している。
シンドラーは「自分の推測と仮定に過ぎないが、報道を見る限り、ペイサーズはマイルズに対する見返りという点で他チームと大きく異なっているようだ」と話した。
「トレードデッドライン(期限)で移籍すると思っていたが、実現したのは(サボニスの)トレードだった。それで(ターナーの)トレードが実現するかどうかがもう少しグレーになった」
「それから足を負傷したことも、再びドラフト前のトレードの価値を損ねたのは確実だ」
ポッドキャスト『Locked on Pacers』のホストを務めるトニー・イーストも、同様の見解を示した。
イーストは「最近のシーズンでのケガが大きな要因だ。それにターナーはシューターとしての評価が落ちた」と述べている。
「優勝を競うチームのほうがずっと良いだろう。だが、実際に彼をトレードで獲得するためのリソースや資産が、彼にとってベストのチームたちに常にあるわけではない」
ターナーはまだどこかで移籍する可能性があるように思われる。契約最終年を迎える中、来年夏に無制限フリーエージェントとなる彼を戻すかどうかは不明だ。
サラリーキャップの点で彼を獲得できるといいうチームは多いだろう。だからこそ、最終的に何もなく彼を失うより、ここで彼を移籍させるほうが理にかなっているかもしれない。
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