【NBA 2019-20シーズン開幕前戦力分析】デンバー・ナゲッツ

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NBA.comのショーン・パウエル記者が2019-20シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第27回目は、デンバー・ナゲッツ編をお届けする。

2018-19シーズン成績:54勝28敗

新加入:ジェレミー・グラント(トレード)、ボル・ボル(ドラフト)

退団:トレイ・ライルズ、アイザイア・トーマス

着実に成長し続けた結果、昨季は年間50勝を超え、プレイオフでも経験に勝るサンアントニオ・スパーズをファーストラウンドで下した。明らかに、球団として前進している証拠だ。ただ、カンファレンス・セミファイナルでは、第7戦の末にシード順で劣るポートランド・トレイルブレイザーズに敗れた。

成長段階にあるチームということを考えれば、ナゲッツはシーズン前に期待していたことの大半を手に入れることができた。特に、ニコラ・ヨキッチの成長は大きい。技術に優れるセルビア出身のヨキッチは、シーズンMVP候補にも挙げられるパフォーマンスを披露し、リーグトップクラスのビッグマンという称号を得た。

ヨキッチを中心に据えたオフェンスで彼が残した平均20得点超えに、ほぼ11リバウンド、7アシストというスタッツは、センターがロールプレイヤー化し、ピックセッターとなった最近のリーグでは珍しい。正確で、見ていて驚かされるハイポストからのパススキルは、ビル・ウォルトン、あるいはブラデ・ディバッツを彷彿させる。

チームメイトのジャマール・マレーも飛躍し、チームのリーダー、そしてショットメイカーに成長した。ヨキッチとの相性も抜群だ。ナゲッツはシーズンの大半で、リーグベストのディフェンスを誇るチームだった。モンテ・モリスとマリーク・ビーズリーは、ベンチ出場ながら2人で平均21得点を記録するなど、バックコートの層も厚い。

ただ、良いことばかりだけではない。先発シューティングガードのギャリー・ハリスは負傷により57試合の出場に終わり、成長も見られなかった。ウィル・バートンもフィールドゴール成功率40%と苦しみ、同じくけがで43試合しかプレイできなかった。

しかし、これらは重箱の隅をつつくようなもので、ナゲッツは昨季ホームで34勝7敗という戦績を残し、10年ぶりにプレイオフのセカンドラウンドに勝ち進んだ。ここ数年はドラフトとトレードでのチーム作りを続け、非常に競争力の高いウェスタン・カンファレンスでプレイオフ戦線に踏みとどまるのは、決して簡単なことではない。

 

オフの動き

育成段階が仕上げに入ったら、次は継続性が重要になる。そのときには、出費も増える。この夏にナゲッツは、マレーと延長契約を結び、ティム・コネリーGMの流出を防いだ。

新人時代にエマニュエル・ムディエイ(現ニューヨーク・ニックス)の控えだったマレーは、たった3年で頼れる選手に成長し、クラッチシューターにもなった。先発ポイントガードの座を掴んだとはいえ、マレーの長所はその柔軟性にある。ヨキッチが“ポイントセンター”としてプレイする際には、オフ・ザ・ボール(ボールを保持していないときの動き)での役割もこなせる。キャリア初のポストシーズンで苦しんだことはあっても、平均18.2得点、4.8アシストという立派な数字を残した。おまけに、23歳の誕生日を迎えるのは来年の2月だ。

ナゲッツはこの夏、マレーと5年1億7000万ドル(約183億4600万円)の大型契約を締結している。これまでの成長を見れば、この投資は回収できる。ヨキッチ、マレーという中心選手を、今後3シーズンは契約下に置くことに成功したのだ。

2013年にマサイ・ウジリの後任に就任したコネリーGMは、それ以降バスケットボール運営部門を見事に監督し、球団の期待に応えた。ヨキッチをドラフト全体41位で指名し、マイク・マローンをヘッドコーチに起用した。マローンHCの1年目は33勝だったが、昨季は54勝をあげられるまでにチームは成長した。ロスター編成は正しい方向に進み、成長を停滞させる重荷になるような要素もない。

このオフにアーニー・グランフェルドを解任したワシントン・ウィザーズは、ボルティモア出身で、ワシントンDCの大学に進学したコネリーGMを後任候補に挙げた。ウィザーズでインターンとしてキャリアを始め、家族もDCエリアに住んでいるため、コネリーGMがデンバーを離れる可能性はあった。

しかし、ナゲッツでの上司であるジョシュ・クロンキがコネリーGMの慰留に成功。大抵の場合、報酬の増額が必要になるケースだが、やりかけの仕事を放り出して退団することなど、コネリーGMにはできなかった。若手とベテランが上手く融合し、昨季ウェスト2位のチームを退団するのは難しかったのだろう。

ポール・ミルサップは、3000万ドル(約32億3700万円)が保証されている2019-20シーズンのプレイヤーオプションを行使した。まもなく35歳になり、2009-10シーズン以来最低のスタッツ、2008年以来最少の出場時間を記録した選手には高額な年俸だが、ミルサップはチームに守備重視の意識と、経験をもたらしてくれる。いずれにしても、ナゲッツは現在のチームが作った流れを維持した。そして、ミルサップのオプション行使を含めても、年俸総額をラグジュアリータックス基準額未満に抑えた。

身体能力に優れるジェレミー・グラントを獲得したため、ミルサップの出場時間は減るだろう。グラントは、オクラホマシティ・サンダーで最後のシーズンとなった昨季に3ポイントショットの技術を成長させた。マローンHCが起用法を誤らなければ、大きな戦力になれる。

マイケル・ポーターJr.というワイルドカードもある。1年前のドラフト1巡目で指名され、昨季は腰の負傷で全休したポーターJr.は、ひざの負傷で7月のサマーリーグも全休したが、大事をとっての判断だった。ナゲッツにとって最高のシナリオは、ポーターJr.が健康な状態を維持し、パワーフォワードのポジションに新たな選択肢をもたらすことだ。

コネリーGMは、今年のドラフトで1巡目指名を持っていなかった。だが、ボル・ボルを2巡目全体44位で指名できた。元NBA選手のマヌート・ボルを父親に持つボルは、オレゴン大学時代に足を痛め、NBAチームは完治しないのではと不安視した。ナゲッツは、ポーターJr.のときと同様にボルを扱うだろう。つまり、ボルのデビューは2020-21シーズンになるということだ。

ナゲッツは大規模なロスター刷新を行なわなかった。だが、この3年で作ったチームを維持し、中心となった人材に恩賞を与えた。辛抱強くチーム作りを進めて現在に至った彼らには、焦る必要も、パニックを起こす必要もなかったのだ。

原文:30 Teams in 30 Days: Nuggets to keep rolling with Nikola Jokic, Jamal Murray by Shaun Powell/NBA.com(抄訳)

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ