【NBA 2019-20シーズン開幕前戦力分析】ボストン・セルティックス

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NBA.comのショーン・パウエル記者が2019-20シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第20回目は、ボストン・セルティックス編をお届けする。

2018-19シーズン成績:49勝33敗

新加入:ケンバ・ウォーカー(フリーエージェント)、エネス・カンター(フリーエージェント)、カーセン・エドワーズ(ドラフト)、ロメオ・ラングフォード(ドラフト)、グラント・ウィリアムズ(ドラフト)、タッコ・フォール(フリーエージェント)

退団:カイリー・アービング、テリー・ロジアー、アル・ホーフォード、マーカス・モリス、アーロン・ベインズ

ほぼ年間50勝、そしてプレイオフでもカンファレンス・セミファイナルに進出したのなら失敗とは見なされないケースが多いものだが、2018-19シーズンのセルティックスに対する期待は大きかった。カイリー・アービングとゴードン・ヘイワードが負傷のためいなかったにもかかわらず、1年前はカンファレンス・ファイナルに勝ち進んだのだから、それも仕方がない。コンディションが整ったチームならば、NBAファイナル進出、もしくは優勝だって狙えると思われてしまう。

しかし、シーズン序盤からトラブルが続き、クリスマス前の時点で彼らはイースト上位のチームではないと思われた。ローテーションのほぼ全員のパフォーマンスが期待値に届かなかったのだ。アービングは平均24得点、7アシスト近くのスタッツを残したが、気まぐれな態度が目立ち、一度はセルティックスとの再契約を仄めかしながらも心ここに在らずの状態だった。また、若い選手を叱責し、後に謝罪するなど混乱を招いた。結果として、彼はロッカールームでリーダーシップを発揮できず、チームケミストリーも構築されなかった。

フェアかどうかは別にして、多くのファンはアービングを責めた。アービングのほかにも、ジェイソン・テイタムも1年目のポストシーズンで見せた魔法を2年目に取り戻すことができなかった。同じことは、1年前から後退したテリー・ロジアーにも当てはまった。本来ならチームの象徴になるべきだったアービングが生み出したのは、フラストレーションだけだった。

復帰したヘイワードも、オールスターに選出されたユタ・ジャズ時代のようなプレイができず、時には4番目のオプションになった試合もあった。彼が先発で起用されたのは、わずか18試合のみだ。マーカス・スマートも高額な契約を結んで迎えたシーズンに、平均9得点、4アシスト程度の成績に終わった。

たとえイーストの上位でプレイオフに進出したって、セルティックスにとっては忘れたい1年になった。

 

オフの動き

アービングはブルックリン・ネッツと契約したが、この報せを聞いて驚いたボストンのファンは一人もいなかっただろう。むしろファンは、アービングを空港まで送り届けたかったのではないだろうか。それだけ、ファンと彼との関係は、すでに破綻していた。

いろいろなことがあったにせよ、ダニー・エインジGMは、リーグトップクラスのポイントガードの代役として誰を獲得すれば良いか、という難問に直面した。再契約に失敗した以上、エインジGMはプランBに切り替えた。新たな計画は、アービングと同等のスコアラー、ケンバ・ウォーカーの獲得だ。

アービングと違って、ウォーカーは余計な荷物を背負っていない。昨季までシャーロット・ホーネッツに所属し、オールスターに2回も選出されたウォーカーは、セルティックスで歓迎された。ホーネッツのマイケル・ジョーダン筆頭オーナーがフランチャイズプレイヤーにマックス契約を出し惜しみした以上、ほぼ同額の契約をボストンから提示されれば、ウォーカーにとっての選択は簡単だった。

PGとしての才能だけで比べれば、アービングのほうが明らかに格上だ。しかしウォーカーは確かな実力を持った選手で、全盛期にあり、余計なドラマも生まない。

セルティックスにとってサプライズだったのは、アービングではなくアル・ホーフォードの退団だった。来年の夏に契約を満了後、セルティックスが延長契約を提示するか微妙だった空気を察したホーフォードは、ジミー・バトラーが退団したことで使える資金が増えたフィラデルフィア・76ersと、4年1億900万ドル(約117億1800万円)で契約した。セルティックスなら、30代の選手にこれだけの金額は提示しなかっただろう。ホーフォードにとっても、76ersへの移籍は渡りに船だった。優勝を狙えるチームでプレイができ、ジョエル・エンビードにセンターを任せて、適正ポジションのパワーフォワードに専念できるからだ。

ホーフォードが抜けた穴を埋めるため、セルティックスはエネス・カンターと2年1000万ドル(約10億7500万円)という格安の条件で契約した。アービングとウォーカーの比較と同様に、カンターもホーフォードと比べれば格が落ちる。特に守備面では影響があるだろう。それでも、カンターはオフェンスでチームに貢献でき、適切なシステムでは役に立つ。

ロジアーをチームに残す必要はなく、ウォーカーを獲得するため、ホーネッツにサイン&トレードで放出した。PGの層を厚くするため、セルティックスはドラフト2巡目にエドワーズを指名。パデュー大出身のスコアリングPGは、ロジアーに近いタイプだ。

ドラフト指名権を溜め込んでいたセルティックスは、ラングフォードとウィリアムズを指名。ラングフォードは、インディアナ大学時代の評価こそ低かったが、球団はチームの育成プログラムで才能が開花すると期待している。

同様に、PFとしてはサイズに乏しいものの、テネシー大に3年所属し、毎年レベルアップしたウィリアムズへの期待も大きい。

エインジGMとスカウトの見る目が正しければ、やがてエドワーズ、ラングフォード、ウィリアムズは戦力になるだろう。

またエインジGMは、ドラフト外のタッコ・フォールとも契約。身長229cmで、才能はまだ荒削りだが、少なくともトレーニングキャンプには参加し、見込みがあればGリーグで経験を積ませるはずだ。

今年の夏は、セルティックスにとって変化の時期になった。球団を引っ張れるPGとオールスターのセンターを失ったとはいえ、イースト上位に近いポジションは維持できるかもしれない。

原文:30 Teams in 30 Days: Kemba Walker takes spotlight after Boston's busy offseason by Shaun Powell/NBA.com(抄訳)

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ