【NBA 2019-20シーズン開幕前戦力分析】ブルックリン・ネッツ

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NBA.comのショーン・パウエル記者が2019-20シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第16回目は、ブルックリン・ネッツ編をお届けする。

2018-19シーズン成績:42勝40敗、プレイオフ1回戦でフィラデルフィア・76ersに敗退

新加入:ケビン・デュラント(フリーエージェント)、カイリー・アービング(フリーエージェント)、ディアンドレ・ジョーダン(フリーエージェント)、ギャレット・テンプル(フリーエージェント)、ウィルソン・チャンドラー(フリーエージェント)、トーリアン・プリンス(トレード)

退団:ディアンジェロ・ラッセル、ロデリ・ホリス・ジェファーソン、アレン・クラブ、ジャレッド・ダドリー、デマーレイ・キャロル、エド・デイビス、シャバズ・ネイピアー

このフランチャイズが、6年前の悲惨なトレードから見せる見事な再建は、ネッツがプレイオフに進出したことでさらに勢いが増した。これはショーン・マークスGM(ゼネラルマネジャー)の賢さと、ケニー・アトキンソンHC(ヘッドコーチ)の手腕、そしてもちろんスターにはまだなれていないハングリーな選手たちの努力によるものだ。

若きポイントガードとして、成長と的確なジャンプショットを見せたディアンジェロ・ラッセルは、オールスター出場を果たし、自ら殻を突き破るシーズンとなった。これも、ポール・ピアースとケビン・ガーネットを獲得するためにチームの未来をボストン・セルティックスに委ねることとなったあのトレードから、チームが正しい方向に進めている現れだった。

ラッセルは平均21.1得点、7アシストを記録し、第4クォーターの得点ではリーグのトップ25にランクイン。キャリス・ルバートがシーズン序盤に良いスタートを切りながらも、見るにも耐えない足のケガを負ったことで一時は肝を冷やした。しかしルバートはプレイオフまでに無事復帰することができた。ジョー・ハリスは3ポイント成功率でリーグトップに輝き(47.4%)、オールスターの3ポイントコンテストでも優勝。センターのジャレット・アレンはディフェンス面で大きな成長を見せ、スター選手を相手に数々のブロックを繰り出し、ネット上で話題となった。そしてラッセルとともにプレイメイカーとして活躍したスペンサー・ディンウィディーは、平均16.8得点、4.6アシストを記録するキャリア最高のシーズンを送り、ジャーニーマンからシックスマン・オブ・ザ・イヤー候補になるまでの成長を見せた。

ネッツはさらに76ersとのプレイオフシリーズ初戦を勝利し、その上昇気流をさらに高めた。奇妙なことに、最大の驚きと賞品はオフシーズンに届き、2018-19シーズンは間違いなくネッツにとってのターニングポイントとなった。

Jarrett Allen

 

オフの動き

1970年代にジュリアス・アービングを世に広め、ABAで2度の優勝を収めて以降、ネッツはなかなかスター選手を獲得することができなかった。もちろん全盛期のジェイソン・キッド、デロン・ウィリアムズ、トロント・ラプターズ後のビンス・カーターなどを保有することができた時期もあった。しかし、例としてあげると、ネッツが『Sports Illustrated』の表紙を飾ったのはわずか4回にすぎない。短気なデリック・コールマン、素晴らしいキッド、野獣のようなケニオン・マーティン、そして(年老いたガーネットとピアース擁する)ネッツが優勝候補であると勇敢にも予測したときのみだ。

時代は変わるものだ。

目まぐるしいこのオフシーズン中、ネッツは優勝を経験している全盛期のフランチャイズプレイヤーをひとりどころか、ふたりも獲得したのだ。カイリー・アービングとケビン・デュラントは移籍先にネッツを選び、リーグを震撼させた。1年前にこうなると話していたら、間違いなく笑われていただろう。本来ならニューヨーク・ニックスが夢見ていたオフシーズンなのだが、結果的に彼らはイースト川の向こう側を羨望の眼差しで見るしかなくなった。

これが実現した大きな要因が、マークスGMの存在だ。ひどい状態のチームを引き継いだ彼は、リーグ屈指のGMとなり、ふたりのエリート選手を引き寄せることに成功した。デュラントとアービングは、まさにマークスGMが見えていたものに共感したのだ。若くて良いコアが揃っており、立派なヘッドコーチがチームを導き、ポリエステルの糸でシルクの生地を作り出せるようなGMがいる。

ご存知の通り、引っかかる点はある。2度ファイナルMVPを獲得しているデュラントは、オフシーズン中にアキレス腱断裂の手術を受けており、シーズン全休の可能性が高い。しかしその最悪のシナリオになったとしても、リーグのベストプレイヤーを抱えるネッツはリスクを冒す予定はないだろう。

アービングはまたもやリーグ屈指のポイントガードとしての評価を固めると同時に、風変わりな気分屋という評判にも拍車がかかった。セルティックスでは良いリーダーシップを発揮することができず、NBAファイナル進出を果たすこともできなかった。すぐさまアービングはチームを去る計画を練り、セルティックスファンも決して彼を止めるつもりはなかった。そこでデュラントと手を組み、新たなスタートを切る選択をしたのだ。

デュラントとアービングの獲得で、ネッツはカワイ・レナードとポール・ジョージを獲得したロサンゼルス・クリッパーズとともに、ベスト・オフシーズン賞を同時受賞したと言っても良いだろう。ネッツの再建は大きなジャンプアップを果たすことになるわけだが、それが2019-20シーズン中に訪れるかはデュラント次第だ。しかしデュラントが今シーズンを全休したとしても、アービングは昨シーズンのセルティックスで見せられなかったものを今シーズンのネッツで見せるだけの動機がある。

ネッツのこの大幅な躍進で支払った代償はラッセルを犠牲にすることだった(プラス、多額の金銭)。そしてネッツにとっての彼の価値は、アービングが来る時点で下がっていた。しかしネッツにとって、大きな損失はそれだけだ。ホリス・ジェファーソンのルーキー契約の延長を拒否し、あまり起用しなくなっていたアレン・クラブ(と彼の1800万ドルの契約)をアトランタ・ホークスへトレードし、デュラントとアービングの獲得に必要な費用を捻出した。

クラブのトレードで、ネッツはホークスにドラフト1巡目指名権をふたつを差し出す必要があったが、全体的に見れば大したことではない。このトレードでネッツはさらに成長中のスウィングマン、トーリアン・プリンスも獲得している。安定した3ポイントショット(昨シーズンは39%)をもたらすことができ、彼とハリスでコートにスペースを生み出せる。

さらにボーナスとして、デュラントとアービングを獲得したことで、彼らの友人であり、リバウンドとショットブロックで知られるベテランのディアンドレ・ジョーダンがやってきたことで、センターの層が厚くなる。先発は変わらずアレンのままだと思われるが、キャリア晩年を迎えるジョーダンはフロントコートでの保険となり得る。

劇的な夏となったネッツは、イースタン・カンファレンスで急激に順位を上げるポジションにやってきた。デュラントとアービングというスター選手を獲得し、ディンウィディ、ルバート、アレンといったサポーティングキャストも揃っている。急激に順位を上げられるかはデュラントの復帰にかかっているが、ニューヨークのバスケットボールの強者がどちらの街にいるのかはもうはっきりしている。

原文:30 Teams in 30 Days: Active Nets ready for big jump in East by Shaun Powell/NBA.com

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ