NBAプレイオフ2018も、4月27日(日本時間28日)からカンファレンス・セミファイナル(準決勝)が始まる。今回は、ウェスタン・カンファレンス準決勝のヒューストン・ロケッツ対ユタ・ジャズの見どころを紹介しよう。
ウェスタン・カンファレンス
第1シード: ヒューストン・ロケッツ(65勝17敗)
第5シード: ユタ・ジャズ(48勝34敗)
背景
ロケッツにとって、第8シードのミネソタ・ティンバーウルブズとのファーストラウンドが第5戦までもつれた結果は、考えられる限りの苦戦だった。第4、5戦ではオフェンスを修正(2試合合計241得点)したものの、第1戦からの3試合ではフィールドゴール成功率42.7%、3ポイントショット成功率31.5%に落ち込んだのは今後の不安材料でしかない。
ジャズの守備はレベルが高い。とりわけ今季の最優秀守備選手賞候補の一人、ルディ・ゴベアがプレイしていれば強固になる。もしゴベアがオクラホマシティ・サンダーとのファーストラウンド第5戦の後半でファウルトラブルに苦しまなかったら、同シリーズは第5戦で終わっていたかもしれない。ゴベアは第5戦の後半をベンチから見守るしかなく、その間に25点差からサンダーが大逆転勝利を収めた。最終的に第6戦で勝ち上がりを決めたが、第5戦の結果が示す通り、ゴベアの守備力は凄まじい。
今季ジャズは、レギュラーシーズンでの100ポゼッションあたりの平均失点でリーグ2位(101.6点)の数字を残している。22試合で20勝を記録した2018年1月24日~3月17日(同1月25日~3月18日)にジャズが記録した100ポゼッションあたりの平均失点はリーグ最少の94.5点で、同期間中にトロント・ラプターズが記録した平均失点は同2位の102.1点だった。この数字を見るだけで、ジャズの守備が対戦相手をどれほど窒息させられるかがわかる。
しかしながら、ロケッツはレギュラーシーズンでのジャズ戦で苦しまなかった。平均17.5点差でスウィープ(4勝0敗)したばかりか、前述したジャズが20勝2敗を記録した時期に黒星をつけた2チーム中1チームこそロケッツだ。さらに、昨年11月5日(同6日)に対戦した際には、今季のシーズンMVP受賞が濃厚なジェームズ・ハーデンがフィールドゴール25本中19本を成功させ、56得点、13アシストの大活躍だった。
今シリーズは、リーグトップクラスの守備を誇るジャズと、同じくトップクラスの攻撃を誇るロケッツの戦いになる。両チームともにファーストラウンドでは長所に陰りが見られたものの、もし2チームが本来の力を発揮すれば、優れた守備が優れた攻撃をプレイオフシリーズで抑えられるかがわかる。
レギュラーシーズンでの対戦を判断材料にするならば、優れた攻撃を持つロケッツにアドバンテージがある。
キープレイヤー
今シリーズで注目されるのは、両チームの先発バックコートだ。ジャズには新人ながらスター選手のドノバン・ミッチェルとポイントガードのリッキー・ルビオ(第6戦で痛めたハムストリングが問題なければ)のデュオが、ロケッツにはハーデンとクリス・ポールのコンビがいる。ただ、ロケッツにとって大きなアドバンテージになるのは、ベンチに控えているシックスマンのエリック・ゴードンだろう。トップレベルのシューターであるゴードンが、勝負を決める役割を担うかもしれない。
今季は足と腰の負傷を抱えていたため、ゴードンにとって良いシーズンだったとは言えない。また、先発とベンチを行ったり来たりしたチーム事情による影響もあった。今季のゴードンの3P成功率は35.9%で、同選手にとってショットの62.7%を占める3P試投数は8.8本だった。オールスターブレイク後にはリズムを取り戻し、成功率は球宴前の33.4%から43.5%に上昇している。
ウルブズとのファーストラウンドでは、チームメイトと同様に第3戦までショットが不調で、3試合で26本中6本(成功率23.1%)しか3Pを成功させられなかった。それが第4戦からの2試合では17本中7本(成功率41.2%)に改善。ゴードン以外のベンチ陣は第4、5戦で11本中2本しか3Pを決められなかったが、ゴードンの調子さえ良ければ問題はない。ゴードン一人の復調により、ウルブズとの1回戦ラスト2試合でオフェンスが安定したのには、少々驚かされる。
注目の数字:26.1
これは、ロケッツがファーストラウンド中にボールハンドラーが得点を決めるピック・アンド・ロールを使用した割合で、リーグ1位の数字だ。ウルブズはこのプレイに対応できず、ロケッツは1ポゼッションあたり同プレイから1.00得点(リーグ1位)、1試合では27.6得点を記録した。レギュラーシーズン中、ロケッツは同じプレイから1試合平均17.7得点を決めた。
準決勝でもロケッツは同じプレイをジャズに仕掛けるだろう。ただ、ジャズはピック・アンド・ロールに対する守備でウルブズより優れている。ジャズはレギュラーシーズン中、ピック・アンド・ロールからの失点を1ポゼッションあたり0.80点(リーグ5位)に抑えた。
ジャズは、ロケッツが多投してくる3Pに耐えなければならない。運が良ければ調子が良くない日もあるだろうが、ロケッツのオフェンスの中心はピック・アンド・ロールだ。もしジャズがロケッツのピック・アンド・ロールを無力化できれば、アップセットが起こる確率は高くなる。
予想
今年の1月中旬にゴベアが復帰して以降、ジャズは30勝5敗という成績を残した。同じ時期にこれを上回る戦績を残したのはロケッツのみで、34勝5敗をマークしている。つまり、ジャズは年間65勝を記録したロケッツを相手に、衝撃的なアップセットをやってのけられる可能性を秘めているということだ。
たしかに可能性はある。だが、ジャズにはフロントコートのタレントと選手層が不足している。今の戦力では、ロケッツと第7戦まで戦うのは難しい。第6戦までにロケッツがカンファレンス決勝進出を決めると予想する。
原文:Rockets vs. Jazz: Preview, predictions as James Harden faces NBA's toughest defense by Sean Deveney/Sporting News(抄訳)