5月1日(日本時間2日)から始まるNBAプレイオフ2018 イースタン・カンファレンス準決勝のクリーブランド・キャバリアーズ対トロント・ラプターズの見どころを紹介しよう。
イースタン・カンファレンス・セミファイナル
第1シード: トロント・ラプターズ(59勝23敗)
第4シード: クリーブランド・キャバリアーズ(50勝32敗)
背景
両チームにとってアンダーカードとも言うべきファーストラウンドは簡単なものにはならなかった。しかしこの対決こそ、ボストン・セルティックスがカイリー・アービング抜きでプレイオフを戦うことことがわかって以来、イースタン・カンファレンスで待ち望まれてきたものだった。
今季の大半を通じてトロントで話題になったのは、進化したラプターズのオフェンスについてだった。これまではカイル・ラウリーとデマー・デローザンによるピック&ロールを繰り返すばかりだったが、今ではボールを動かし、オープンな選手を生み出す形に変わっている。このシステム変更こそ、チームが大きな成功を収められた要因の一つであり、2016-17シーズンはリーグ30位だったラプターズのアシスト率(47.2%)は今季、同11位(59.0%)に改善された。
球団記録の年間59勝をマークしたラプターズが、ここまでシステムを変えた本当の理由は、プレイオフでキャブズに勝つためだ。過去2年のプレイオフで、ラプターズはキャブズ戦で2勝8敗と大きく負け越している。NBAファイナルに勝ち上がるには、絶対にキャブズは越えなければならない存在だ。ドウェイン・ケイシー・ヘッドコーチとマサイ・ウジーリGMは、万能性のあるオフェンスでなければキャブズには勝てないという結論に至ったのだ。
ケイシーHCとウジーリGMが新たなやり方を決めてからというもの、キャブズにも変化が見られた。今年2月のトレード期限でロスターを刷新し、ポイントガードのジョージ・ヒルを獲得したほか、ポストシーズンでの経験が少ない3選手(ジョーダン・クラークソン、ラリー・ナンスJr.、ロドニー・フッド)を加えた。このときキャブズは、彼ら3選手がレギュラーシーズンで勝つためのノウハウを得られればと考えていた。
だが、事はそう簡単にはいかなかった。ナンスJr.はベンチからチームに活力を与え、期待通り守備で貢献できているものの、クラークソンはインパクトを残せていない。フッドはユタ・ジャズ時代に平均16.8得点、3ポイントショット成功率38.9%を記録していたにもかかわらず、キャブズでは平均10.8得点、3P成功率も35.2%に落ち込んだ。そしてプレイオフが始まってからも挽回できていない。
つまり、キャブズはシーズン後半からレブロン・ジェームズに頼りきりの状態ということだ。依存度で言えば、ジェームズが一度目に退団した2010年以前より高い。プレイオフでジェームズを支えているチームメイトは、今のところカイル・コーバーくらいだろう(インディアナ・ペイサーズとの第7戦でトリスタン・トンプソンが躍動するまでは)。ファーストラウンドでキャブズが3勝目をあげるまで、ジェームズはそれぞれ46得点、32得点、44得点を記録した。そして、第7戦でも45得点の大活躍を見せなければならなかったのだ。
今回のシリーズは、誰もが想像していたようなものにはならないだろう。だが、注目すべきところが多い記憶に残るマッチアップになるはずだ。レギュラーシーズンでリーグ上位の戦績を残したチームが、誇り高き偉大な選手のいるチームと激突する。後者のリーダーはサポーティングキャストにがっかりさせられても、彼らを引っ張っている。この2チームによるシリーズは、見応え十分だ。
キープレイヤー
もしフレッド・バンブリート(ラプターズ)の価値に対する疑念があるのなら、ワシントン・ウィザーズとのファーストラウンドを見れば答えがわかる。
レギュラーシーズン中、ラプターズのベンチは強力で、先発がベンチに下がっている間に選手層の厚みを生かして対戦相手を疲弊させた。ラプターズベンチが今季記録した100ポゼッションあたりの得失点差はリーグ1位の+8.3で、エフェクティブフィールドゴール成功率(3ポイントショットの効果を考慮したFG成功率)は同3位の54.0%だった。
それだけラプターズのベンチは好調そのもので、対戦相手にとって悪夢のような存在だった。しかし、バンブリートが肩の負傷によりウィザーズとのファーストラウンドで5試合を欠場すると、100ポゼッションでの得失点差はプレイオフに進出した16チーム中14位の-9.9に落ち、エフェクティブFG成功率も同14位の48.4%にまで下がってしまった。それはリバウンド率にもあてはまり、44.5%に落ち込んでしまったのだ。
バンブリートが一人で全てを解決できるわけではない。だが、ベンチを安定させている彼の存在はラプターズに欠かせない。キャブズのベンチ陣は、2月のトレード以降もリーグ平均以上の力を持っていた。しかしプレイオフでは苦しんでいる。ラプターズが今シリーズを制するには、ベンチ陣の力をアドバンテージとして生かす必要がある。バンブリートの復帰は、それだけ重要な意味を持っていると言える。
注目の数字:103.4
今季のラプターズは、レギュラーシーズンでの100ポゼッションあたりの平均失点でリーグ5位(103.4点)で、キャブズがファーストラウンドで対戦したペイサーズは同14位(105.6点)だった。ペイサーズより守備に優れている以上、ジェームズ個人による猛攻撃にも良い形で対応できるだろう。
ただ、イーストの他チームと同様に、ラプターズにもジェームズを1対1で止められる選手はいない。今季は新人のOG・アヌノビーがジェームズとマッチアップする機会が多かったが、NBAのマッチアップデータによれば、ジェームズは今季アヌノビーとの1対1から61.9%のショットを成功させている。ただ、ジェームズを抑えるのは難しいとしても、他の選手を封じることは可能だ。
キャブズのオフェンスの中心はスポットアップショットとトランジションで、奇遇にもラプターズが守備で得意な2つのプレイタイプでもある。キャブズは今季レギュラーシーズン中に全ポゼッションのうちトランジションの割合がリーグ4位の17.5%、同プレイから100ポゼッションあたり1.13得点(同7位)を記録。ラプターズは、対戦相手がトランジションをしかけてきた際、ポゼッションあたりの平均失点をリーグ最少の1.03点に抑えた。
スポットアップの数字を見てみると、キャブズはレギュラーシーズンでポゼッションあたりリーグトップの平均1.08得点を記録したのに対し、ラプターズは同プレイでの失点をポゼッションあたりリーグ9位の0.99点に抑えた。キャブズはプレイオフに入ってスポットアップからの得点を平均0.84得点(16チーム中15位)に落としている。
もしこれら2つのプレイでラプターズの守備が機能すれば、オフェンス時にジェームズが抱える負担は限度を超えてしまうだろう。
予想
そろそろキャブズは“収穫される時期”を迎えているのかもしれない。しかし、それと同時にジェームズがチームを牽引できている以上、どのチームが相手であれ、敗退を予測するのは簡単ではない。ラプターズは、このシリーズのためにチーム改革を行なった。彼らには、スランプに喘ぐキャブズのロールプレイヤーたちを窒息させられるだけの選手層も揃っている。
それでもなお、ジェームズがイーストでのシリーズで敗れる姿は想像できない。2010年を最後に彼がイーストで負けていない歴史を踏まえ、キャブズが第6戦までに勝ち上がりを決めると予想したい。
原文:Raptors vs. Cavs: Preview, predictions as Toronto attempts to dethrone LeBron James by Sean Deveney/Sporting News(抄訳)