NBAプレイオフ2018は5月13日(日本時間14日)からカンファレンス・ファイナル(決勝)が始まる。ウェスタン・カンファレンス決勝のヒューストン・ロケッツ対ゴールデンステイト・ウォリアーズの見どころを紹介しよう。
ウェスタン・カンファレンス
第1シード: ヒューストン・ロケッツ (65勝17敗)
第2シード: ゴールデンステイト・ウォリアーズ (58勝24敗)
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背景
昨年6月にロケッツがクリス・ポールを獲得した時点で、同チームは必ずウェスタン・カンファレンス決勝まで勝ち上がらなければいけないという空気に包まれていた。オフの補強は対ウォリアーズを意識したもので、万能性が高く守備に秀でる選手、ウォリアーズに対抗できるだけの3ポイントシューターを獲得した。
一方のウォリアーズは、昨季のプレイオフで17試合を戦い16勝をあげて優勝し、各チームのフロントオフィスを震え上がらせた。この結果、ウォリアーズという絶対的な力を持つチームに対抗するより、数年先の未来に集中すべきという考えに至ったチームは多かったかもしれない。
ウォリアーズに抗うために補強を実行したオクラホマシティ・サンダーは、ファーストラウンドでユタ・ジャズに敗れ、失敗という烙印を押された。もしロケッツがアグレッシブにウォリアーズに向かっていかない限り、昨季と同様に今季のプレイオフも茶番になってしまう可能性はある。
ロケッツはポールだけを獲得したわけではない。アグレッシブで、ボールをシェアするウォリアーズのオフェンスが相手でも、スウィッチに難なく対応できるディフェンダーのPJ・タッカーとルーク・バー・ア・ムーテもロスターに加えた。シーズンを通じて守備の改善に努めたロケッツは、シーズン途中にジェラルド・グリーンを獲得し、ベンチのパンチ力を上げた。
このプランが予想以上に機能し、ウォリアーズ以外からも勝利を重ね、今季NBAベストレコードの65勝(17敗)をマーク。ウォリアーズに7ゲーム差をつけ、ウェストの首位でプレイオフに勝ち進んだ。ロケッツの守備は改善され、100ポゼッションあたりの失点はリーグ6位の103.8を記録。マイク・ダントーニ・ヘッドコーチが就任した1年目の昨季は同18位(106.4点)だった。
ロスターをオーバーホールしたロケッツに対し、ウォリアーズが採った方法は、現状維持だった。それもそのはずで、何かを変える必要がなかったからだ。ローテーションのトップ4(ケビン・デュラント、ステフィン・カリー、クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーン)はオールスターで、セカンドユニットを支えた屈強なベテラン陣(アンドレ・イグダーラ、ショーン・リビングストン、デイビッド・ウェストら)はフリーエージェントの権利を取得後チームと再契約した。
ロケッツがローテーションのトップ10中4人を入れ替えたのに対し、ウォリアーズはガードのクイン・クックを加えたのみ。クックは、カリーがひざの負傷により離脱していた間に先発を務め、カリーが復帰後もローテーションの一角としてプレイしている。ビッグマンのケボン・ルーニーの出場時間は増えたものの、彼は直近3年ウォリアーズに所属している選手だ。
両チームは、似た形でカンファレンス決勝にまで勝ち進んだ。ロケッツは1回戦でミネソタ・ティンバーウルブズ、準決勝でジャズをそれぞれ4勝1敗で下し、ウォリアーズも1回戦でサンアントニオ・スパーズ、準決勝でニューオーリンズ・ペリカンズに4勝1敗で勝った。直接対決を迎えるにあたり、両チームともに好調を維持している。ロケッツはプレイオフでの100ポゼッションあたりの平均得点でリーグ1位の110.1得点、ウォリアーズは同4位の108.8得点を記録。守備ではウォリアーズが100ポゼッションあたりの平均失点でリーグ最少の99.3点、ロケッツが次に少ない102.1点に抑えている。
今季レギュラーシーズンを通じてリーグベストの2チームだったのだから、この数字に驚きはしない。誰もが待ちわびたメインイベントが始まろうとしている。
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注目のマッチアップ
トレバー・アリーザ vs ケビン・デュラント
アリーザは、デュラントとマッチアップする上で必要な要素をすべて兼ね揃えた珍しい選手の一人だ。サイズ、リーチ、敏捷性に優れているだけでなく、NBAで14年の経験を持っている。
今季アリーザがデュラントとマッチアップしたのは開幕戦のみで、同試合の27ポゼッションでデュラントと対峙し、同選手をフィールドゴール14本中4本成功(成功率28.6%)に抑えた。最大7試合のシリーズで同様の守備をデュラント相手に実行するのは容易いことではないものの、アリーザはそれだけの技術を持った選手だ。しかも、クリント・カペラがペイント内を守ってくれる以上、アリーザはペリメーターでの対デュラントに集中できる。
また、デュラントに関する興味深い数字もある。今季のプレイオフで記録している3P成功率はわずか28.1%で、出場したレギュラーシーズンのラスト9試合での3P成功率も33.3%だった。
キープレイヤー
ポールは、キャリア初のカンファレンス決勝を迎える。ジャズとのカンファレンス・セミファイナル第5戦で、ポールはほぼアンストッパブルな存在だった。10本中8本の3P成功を含むFG22本中13本を決めて、プレイオフでの自己最多41得点を記録し勝利に貢献。ジャズとの第5戦まで、ポールは今季のプレイオフで3P成功率29.4%と苦しんでいた。
ポールの存在はロケッツにとって大きい。今季のプレイオフでジェームズ・ハーデンがFG成功率40%未満だった4試合で、ロケッツは4勝0敗と負けていない。これらの試合でポールはFG成功率は48.8%を記録し、平均26.8得点の活躍でチームを支えた。2012-13シーズンから昨季までの4年間、ハーデンがFG成功率40%未満に抑えられたプレイオフでの15試合では、チームは5勝10敗で負け越した。
カンファレンス決勝でも、ハーデンが不調の場合はポールがオフェンスのセーフティネットとして活躍する必要がある。そして、守備でもカリーを抑えなければならない。
今季のレギュラーシーズン中、ポールはウォリアーズ戦で平均16.0ポゼッションでカリーとマッチアップし、カリーはFG成功率38.5%を記録している。エリック・ゴードンもカリーとマッチアップする機会が多く、1試合あたり平均17.0ポゼッションで対峙したが、カリーはFG成功率66.7%も記録した。
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注目の数字:0
2016年2月9日(同10日)にウォリアーズとロケッツは対戦しているのだが、同試合の第4クォーター残り5分9秒から現在まで、トンプソンはハーデンに対して1度もファウルを記録していない。相手からファウルを誘う術に長けるハーデンにとって、フリースローは彼のゲームを支える大事な要素だ。しかしトンプソンはハーデンの守備に人一倍気を使い、ファウルの誘いには引っかかっていない。
ハーデンとトンプソンは、今季のレギュラーシーズンでは2試合で対戦している。両試合の大半を通じて、トンプソンはハーデンのマークについた。ハーデンはウェストの中で最も守るのが難しい相手の一人で、トンプソンもまたリーグトップクラスのウィングディフェンダーだ。『NBA.com』のデータによれば、ハーデンは今季トンプソンと1試合平均38.5ポゼッションで対峙し、平均11.0得点、FG成功率50%、3P成功率57.1%を記録した。
だが、トンプソンからは1本もフリースローを獲得できていない。今季平均10.3本のフリースローを獲得しているハーデンを相手に、この数字は見事だ。ハーデンの調子が今シリーズの結果を左右すると言ってもいい。ジャズとの第5戦でFG22本中7本の成功に終わったハーデンは、今季のプレイオフでFG成功率41.7%と苦しんでいる。
ウォリアーズとトンプソンが成すべきは、ハーデンをフリースローラインに立たせないことに尽きる。ハーデンは今季ウォリアーズと2度対戦し、合計6本しかフリースローを獲得できなかった。
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予想
ロケッツがディフェンディング王者を打ち破る可能性については、いくらでも論じられる。もしハーデンとポールが同時に試合を支配し、カペラがレーンを封じ、ロールシューターたちがショットを決め続ければ、ウォリアーズとて苦戦は免れない。
だが、ウォリアーズにはポストシーズンでの経験が豊富にある。勝ったときの喜び、負けたときの苦しみを誰よりも理解している。たとえロケッツのような優れたチームが相手であっても、彼らは簡単に揺らがない。それだけの選手層、柔軟性を持ち、コーチングでもウォリアーズに若干のアドバンテージがあるからだ。
今年のカンファレンス決勝も、これまでと変わらない。ロケッツはウォリアーズを倒すため、1年がかりで構想を練ってきた。それでも彼らは負ける。第6戦までにウォリアーズがNBAファイナル進出を決めると予想したい。
原文: Rockets vs. Warriors: Preview, predictions as Western Conference powerhouses collide by Sean Deveney/Sporting News (抄訳)
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