NBAプレイオフ2018は、5月13日(日本時間14日)からカンファレンス・ファイナル(決勝)が始まる。今回は、イースタン・カンファレンス決勝のボストン・セルティックス対クリーブランド・キャバリアーズの見どころを紹介しよう。
イースタン・カンファレンス
第2シード: ボストン・セルティックス(55勝27敗)
第4シード: クリーブランド・キャバリアーズ(50勝32敗)
▶ NBAプレイオフを観るならRakuten NBA Special
背景
昨年に続いて、今年もNBAファイナル進出の切符をかけ、セルティックスとキャブズがイースト決勝で激突する。NBAの歴史においては、昨年と同じ顔合わせで、イーストのライバルチーム同士によるシリーズになるということだ。
ただ、それは表面的な話であって、シリーズの中身は1年前、10か月前、半年前、いや6週間前の時点で想像していたものと大きく異なる。
昨年のオフに両チームの間で大型トレードが成立した時点で、そして今季の開幕前の時点では、キャブズとセルティックスがイーストの決勝で激突するのは運命のように思えていた。カイリー・アービングと交換でアイザイア・トーマス、ジェイ・クロウダー、ドラフト指名権を獲得したキャブズに対し、セルティックスは昨年のオフにユタ・ジャズからフリーエージェントになったゴードン・ヘイワードと契約してチーム強化に成功したからだ。
またキャブズは、セルティックスの天敵ともいえるドウェイン・ウェイドとも契約するなど、周囲の好奇心を煽るストーリーは出来上がっていた。
そして両チームは、ついにイースト決勝で戦う。しかし予定されていたストーリーは関係なくなった。今季開幕戦で対戦した両チームは、シーズン途中でまるで別チームのように変わってしまったのだ。
キャブズは2月のトレードデッドラインにロスター刷新を断行。クロウダー、トーマス、ウェイドを放出し、ラリー・ナンスJr.、ジョーダン・クラークソン、ロドニー・フッド、ジョージ・ヒルを加えた。セルティックスは開幕戦でヘイワードが足首に重傷を負って離脱し、3月下旬にはアービングがひざの手術でチームを離れた。そしてプレイオフ開幕からチームを支えてきたダニエル・テイズ、マーカス・スマート、ジェイレン・ブラウン、そしてシェーン・ラーキンまでも負傷を抱えた状態でプレイし続けている。
たしかに2年連続の同一カードは実現する。だが、昨年のイースタン・カンファレンス決勝に出場した24選手の中で、今年のカードにも顔を連ねるのはわずか9選手しかいない。
去年に続いて今シリーズにも出場する代表的な選手は、キャブズのレブロン・ジェームズだ。マイアミ・ヒート時代(2010-11~13-14シーズン)を含め、8年連続のNBAファイナル進出を目指している。
そのジェームズを支えるサポーティングキャストは、不安定なパフォーマンスを続けている。特に、トレードデッドラインに獲得した4選手の不調が目立つ。フッドは、トロント・ラプターズとのカンファレンス・セミファイナル第4戦の第4クォーターで出場を拒否して話題になった。すでに大差をつけて勝負が決まっていたにもかかわらず、そして今年のプレイオフで平均4.6得点、3ポイントショット成功率13.3%と苦しんでいるにもかかわらず、出場を拒否した理由は謎でしかない。
ジェームズの状態は、過去のポストシーズンと比べても群を抜いている。今年は平均34.3得点、9.4リバウンド、9.0アシスト、フィールドゴール成功率55.3%を記録しているほか、試合終盤のクラッチショットでチームに勝利をもたらした試合も少なくない。
けが人を多数抱えるセルティックスが、タレントレベルで上回るミルウォーキー・バックス(1回戦)とフィラデルフィア・76ers(準決勝)に勝てた最大の要因は、ブラッド・スティーブンズ・ヘッドコーチの手腕にある。今シリーズ中、スティーブンズHCは3年目ながらプレイオフでキャリア初のスターターを務めているテリー・ロジアー、新人のジェイソン・テイタムをチームトップのオフェンスオプションとして機能させなければならない。
スティーブンズHCは、オフェンスではチームに有利なマッチアップを実行しながら、1回戦ではヤニス・アデトクンボ、準決勝ではベン・シモンズを苦しめた守備に信頼を置いている。
その結果、セルティックスはプレイオフ開幕前の時点では不可能と思われたカンファレンス決勝に勝ち進んだ。アービング、トーマスらを含む当初のストーリーは書き換えられたが、今シリーズで注目されるのは、リーグトップクラスの戦術家と言われるスティーブンズHCが、2009年以降どのチームも達成できていないジェームズ対策を実現できるのか、それともジェームズが今年もNBAファイナルの舞台に立つかどうかに尽きる。
▶ NBAプレイオフを観るならRakuten NBA Special
注目のマッチアップ
レブロン・ジェームズ vs マーカス・スマート(with セルティックス)
76ersとのシリーズで主にシモンズを抑えたのはマーカス・モリスだった。今シリーズでもディフェンス面で与えられる役割は大きい。しかも、シモンズより相当にタフな選手が相手になる。
ジェームズが今季のプレイオフで残しているスタッツ、パフォーマンスに関しては先述の通りだ。セルティックスが昨夏デトロイト・ピストンズとトレードを成立させ、エイブリー・ブラッドリーを放出してまでモリスを獲得した理由は、ジェームズとのマッチアップで残している実績にあった。モリスを『レブロン・ストッパー』と呼ぶ声もあるほどで、彼はタフで、フィジカルも強い。今シリーズを通し、ジェームズを可能な限り苛立たせる必要がある。
モリスは今季レギュラーシーズンの2試合でジェームズと対戦し、平均27.5ポゼッションで12.0得点に抑えた。今季2試合以上でジェームズとマッチアップした選手で、12.0得点以上を許したのは8選手。ジェームズがFGの50%をモリスとのマッチアップで放ったことを考えれば、たしかに『レブロン・ストッパー』と言える。
今シリーズではジェイレン・ブラウンのヘルプにも期待できる。バックスとのファーストラウンドで痛めたハムストリングが万全な状態ではないが、ブラウンもジェームズとマッチアップするだろう。レギュラーシーズンの対戦では、モリスよりブラウンのほうがジェームズとマッチアップした回数は多いのだが、スティーブンズHCはブラウンのオフェンスが必要になるため、守備でジェームズにぶつけて疲弊させたくはないと考えているはずだ。
ジェームズ対策のワイルドカードには、新人のシェミ・オジェレイを挙げたい。201cm、106.6kgという体躯に恵まれ、守備には定評がある。またバックスとのシリーズでは先発に抜擢され、アデトクンボを苦しめた。今季の対戦では限られた時間ではあったものの、オジェレイはジェームズとマッチアップした経験がある。その際、ジェームズはFG成功率こそ59.5%という高い数字を残したが、平均13.0ポゼッションで2.0得点だった。
▶ NBAプレイオフを観るならRakuten NBA Special
キープレイヤー
アル・ホーフォードが今シリーズにかける意気込みは相当なものだろう。キャリア11年で10回ポストシーズンに進出しているホーフォードは、そのうち4回、プレイオフでジェームズのキャブズと対戦したものの、一度も勝てていない。
しかも、ホーフォードのチームはジェームズのキャブズと過去17回対戦し、対戦成績は1勝16敗。これらの試合でホーフォードは平均10.9得点で、ジェームズは29.6得点だった。
だがセルティックスがアップセットを成し遂げるためには、攻守両面でホーフォードの活躍が必要になる。アービングの不在によりオフェンスで普段以上の負担を背負っているホーフォードは、今プレイオフで自己最多となる平均17.2得点を記録。チームの若手がアップダウンを経験する中で、誰よりも安定しているホーフォードのオフェンスでチームは勝ち上がってくることができたのだ。
守備でもホーフォードの役割は大きい。ジェームズへのディフェンスでヘルプに入る必要があるが、それ以上にキャブズのフォワード、ケビン・ラブを封じなければならない。ラブはインディアナ・ペイサーズとのファーストラウンドでは平均11.4得点、FG成功率33.3%と不調だったものの、ラプターズとのカンファレンス・セミファイナル第2戦では31得点、11リバウンド、第3戦では21得点、16リバウンド、第4戦では23得点、6リバウンドを決めてスウィープに貢献した。
ジェームズを抑えるのは大変だが、ホーフォードはラブを徹底的に抑えなければならない。ホーフォードは今季レギュラーシーズンの対戦でラブと平均32ポゼッションでマッチアップし、5.0得点、FG成功率25.0%に抑えた。
ホーフォードは、プレイオフでの対ジェームズという厄を払いたいだろうが、そのためにもラブを打ち負かさなければならない。
▶ NBAプレイオフを観るならRakuten NBA Special
注目の数字:9.0
ジェームズは今プレイオフでの10試合の第4クォーターに出場し、リーグ最多の90得点(平均9.0得点)を記録している。第4クォーターでのFG成功率は50.8%で、フリースローも25本中20本を成功させている。もし僅差の争いになれば、キャブズは試合終盤、ジェームズにボールを集める。NBAのクラッチスタッツ(第4Q残り5分以内で5点差以内でのスタッツ)を見ると、ジェームズはリーグ3位の4.6得点、FG成功率50%という数字を記録している。
これはキャブズにとってアドバンテージだが、セルティックスにも終盤に強い選手はいる。その選手こそが、ロジアーだ。今プレイオフで平均18.2得点の活躍を見せているロジアーの勝負強さはジェームズと遜色ない。クラッチでの平均得点はリーグ4位の4.0得点で、同条件下でFG10本中7本、3Pも5本中4本を成功させている。ロジアー以外にホーフォードもクラッチに強い。同条件下ではリーグ7位の3.9得点を記録している点も見逃せない。
クラッチの状況になってジェームズ以上に頼れる存在はいない。ただ、僅差の争いになっても、セルティックスには少なからず希望がある。
▶ NBAプレイオフを観るならRakuten NBA Special
予想
アービング、ヘイワードという2人のオールスター不在のなか、ここまで勝ち上がったセルティックスの勢いは凄まじい。テイタム、ロジアー、ブラウン、オジェレイに与えられた役割も大きく、プレイオフで得ている経験は何にも代え難いものがある。
ジェームズとの対戦も彼らの成長に繋がるだろう。来季ならば、彼らがNBAファイナルに勝ち上がる大本命と見なされるてしかるべきだ。
だが今季は、ジェームズの存在が大きすぎる。スティーブンズHCはあらゆる方法を用いてジェームズを苦しめ、それが機能するタイミングもあるかもしれない。だがジェームズは、常にイースト最高のディフェンスを打破する方法を見出してきた。それは今回も変わらないだろう。第6戦までにキャブズが勝ち上がると予想する。
原文:Celtics vs. Cavs: Preview, predictions for big Eastern Conference rematch by Sean Deveney/Sporting News(抄訳)
▶ NBAプレイオフを観るならRakuten NBA Special