8月22日にマディソン・スクエア・ガーデンで行なわれたアメリカ対プエルトリコ戦の第1クォーター5分過ぎ。大歓声の中でデリック・ローズがコートに立った瞬間、数日間に及ぶサスペンスは終わった。
19、20日と2日連続でアメリカ代表の練習を休んだローズは、出場が予定された20日夜のドミニカ共和国戦も欠場。単なる休養であることを強調はしたものの、古傷の膝が悪化したのではないかと疑う声は消えなかった。
しかし、22日は無事に13分35秒をプレーし、6得点、4アシスト。持ち前の爆発力を発揮するまでには至らなかったが、それでもアメリカの112-86での勝利に堅実に貢献した。少なくとも、その動きは膝に大きな不安を抱えている選手のものには見えなかった。
「デリックの状態には自信を持っているよ。デリック自身も自信を感じているんじゃないかな。今夜は素晴らしいプレーをしてくれたと思う。他の選手たちも、彼と一緒にプレーしたいと感じているようだしね」。
マイク・シャシェフスキー代表HCのそんな言葉からも、ローズの現状に対する自信が伝わってきた。こうして2011年のMVPガードは依然としてハイレベルでプレーできることを証明し、FIBAバスケットボール・ワールドカップの開催地であるスペイン行きを阻む要素はなくなった。そして、その数時間後、アメリカ代表の最終ロースター12人が正式に発表されている。
代表候補として残っていた16人から、最後にカットされたのはダミアン・リラード、ゴードン・ヘイワード、チャンドラー・パーソンズ、カイル・コーバーの4人。NBAのライジングスターとして台頭を続けるリラードだが、ローズにメドが立ち、さらにカイリー・アービング、ステファン・カリーと揃った層の厚いガード陣から弾き出された形になった。
ヘイワード、パーソンズは3戦のエキジビションゲームでインパクトを残せなかったのが響いたようだ。国際試合ではシュート力が重要視されるだけにコーバーの落選は少々意外だが、カリー、クレイ・トンプソンのウォリアーズ・デュオをはじめ、今回のチームにはシューターは十分に揃っているという判断だろう。
「16人が残っている今は、みんな今後にどうなっていくかに確信が持てていない。明日は重要な日になるだろうね。(メンバーが決まって、)スペインに到着した後にチームとしてのケミストリーが生まれ、成長していけるんだ」。
プエルトリコ戦後のカリーのそんな言葉は、残ったすべてのメンバーの思いを代弁していたに違いない。ここで12人のメンバーに“当選”が告げられ、振るいにかけられる期間は終わった。2014年版のアメリカ代表は、これから本格的に前に進み始めることができる。
最後に先発メンバーの予想をしておくと、本大会の開幕にもドミニカ共和国、プエルトリコ戦と同じスターター(アービング、カリー、ジェームス・ハーデン、ケネス・ファリード、アンソニー・デイビス)で臨む可能性が高そうだ。変更があるとすればポイトンガードで、コーチKも「(アービング、ローズのどちらを先発させるか)これからのミーティングで話し合うことになる」と語っていた。
ただ、過去2戦で先発したアービングは、ドミニカ戦では12得点(フィールドゴール5/5)、5アシスト、プエルトリコ戦でも11得点、チーム最多の6アシストと好調。得点力と人望のあるローズはベンチからスパークを与える役に最適とも言え、控えなら膝に負担がかかり過ぎないようにプレー時間を少なめにできるのも大きい。今後、シャシェフスキーHC率いるコーチ陣の手綱捌きにも注目が集まる。
ポール・ジョージの故障離脱、ケビン・デュラントの辞退と激震に見舞われ続けたアメリカ代表は、国内での最後のエキジビションマッチでローズが健在ぶりを示したおかげで、良いムードでスペインに旅立つことができる。過去にブラジル(1959、1963年)、ユーゴスラビア(1998、2002年)しか達成していないW杯2連覇の準備はついに整ったのかどうか。
近年の代表ほど支配的な強さは感じさせないが、それゆえに波瀾万丈のスリリングな戦いが続きそうだ。アメリカのバスケットボールファンにとって、2014年のW杯はエキサイティングな大会になりそうな予感がすでに濃厚に漂ってきている。
※文中の日付は現地時間。
文:杉浦大介 Twitter: @daisukesugiura
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