渡邊雄太「あそこで止め切れるかどうかがグレートとグッドの差」|ブルズ戦後一問一答(11月2日/現地1日)

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杉浦大介 Daisuke Sugiura

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11月1日(日本時間2日)にバークレイズ・センター(ニューヨーク州ブルックリン)で行われたシカゴ・ブルズ戦に途中出場したブルックリン・ネッツの渡邊雄太が、試合後のロッカールームで日本メディアの取材に応じた。

試合前にスティーブ・ナッシュ・ヘッドコーチが突如退任するという衝撃的なニュースが報じられて迎えたこの試合で、渡邊は今季自己最長となる約28分出場し、昨年12月以来となる二桁得点(10点)をマーク。試合には敗れたものの、攻守ともに手応えを感じさせるプレイを連発し、大きなインパクトを残した。

そんな興奮の1日の最後に行われた囲み取材の一問一答をお届けする(抜粋。質問は要約)。

今の自分ならあれぐらいできるという自信を持っています

――痛い敗戦だった。

渡邊:昼くらいに(スティーブ・ナッシュHC退任という)みんなにとって衝撃的なニュースが入ってきました。自分たちもプロなので、どういう状況でもプレイしなきゃいけません。途中までは良いプレイができていたんですけど、言い訳はできないですけど連戦(の2日目)というのもあって、最後は疲れが出た感じかなとは思いました。

――ボールムーブメント、ディフェンスなど内容的には向上したのでは。

渡邊:負け方がまだ内容のある負け方。ディフェンスも今日はそんなに悪くなかったですし、確実にチームとして成長しているとは感じています。

――個人としては総合的に見て今季のベストゲームだったのでは。

渡邊:ディフェンス時の足も動いていたと思いますし、オフェンスでも積極的にシュートを狙ったりして、得点はシーズンハイ。ただ、良いディフェンスをしても決め切られたことがありました。(第3クォーター終了間際に決められたデマー・デローザンのショットは)しょうがない部分もあるんですけど、あそこで最後、止め切れるかどうかがグレートディフェンダーとグッドディフェンダーの差なのかなとも思っています。あそこでもう少し相手の嫌がることをできるんじゃないかなとも思います。

――3ポイントショットは2本成功と好調を保っている。

渡邊:3Pはプレシーズンからずっと調子がいいので、一切躊躇なく打てていますし、もう今は入るとしか思っていません。いつも通りやれたというか、特に良かったというわけではなく、今の自分ならあれぐらいできるという自信を持っています。

このチームに何が必要なのかはわかっています

――ショットセレクションの良さの背景には周囲への信頼があるのか。

渡邊:基本的に僕がコートに立っているときは自分が最後のオプションでいいと思っています。KD(ケビン・デュラント)やカイリー(アービング)が相手を引き付けて、自分はノーマークのシュートを決め切るというのがこのチームでの役割。もう少し積極的になったほうがいいという声も聞くんですけど、それはチームメイトやコーチが言っているわけでもなく、周りが言っていること。僕はこのチームに何が必要なのかはわかっていますし、コーチ、チームメイトたちもその部分を信頼しているからこそプレイタイムをもらえていると思うので、ブレるつもりはないです。

――デュラントとの呼吸が合ってきているように見える。

渡邊:彼のところは絶対、ダブルチーム(2人がかりでのディフェンス)がつきます。彼がダブルチームをされたときに一瞬、みんなが止まってしまっているので、もう少し打開方法を考えなければいけません。そこでもっと動けば必ず誰かがノーマークになる。彼とカイリーのオフェンス面の負担があまりにも大きすぎるので、もうちょっと楽になるように、助けてあげなきゃいけないと思っています。

――デローザンのショットを叩き落とした今日2本目のブロックはインパクトがあり、試合を中継したTNTの放送席でも騒がれていた。直前のオフェンス時にファウルがもらえず、その勢いも影響したプレイだったのか。

渡邊:自分の中でファウル(された)かなと思い、アピールしてしまったんです。ただ、僕の立場でそんなことをやっている暇はありませんでした。たとえファウルだとしても、アピールしている暇があったら一目散に(ディフェンスに)戻らなければいけなかったんです。それが一瞬、ファウルだろってアピールしてしまい、やばいと思って全力で戻ったらちょうど(デローザンが)レイアップにいくところ(でブロックに成功)。

結果として良いプレイにつながりましたけど、(審判の判定に対するアピールは)自分はまだやっちゃいけないことでした。KDやカイリーなら許されるアピール。僕なんかがやっていいことではなく、あれは個人的に反省点です。ブロックできて結果オーライというだけですね。

ブレずにやり続けなきゃいけない

――ナッシュHCの退陣はどのタイミングで知り、どう感じたのか。

渡邊:昼ちょっと前くらいに選手全員に連絡が入って、『ナッシュHCと別々の道を歩むことになった』と知らされました。ナッシュHCはまず人間として素晴らしい人。選手としてもあれだけすごいキャリア(※現役時代2年連続MVP受賞等)を積みながら、人間としてもこんなに素晴らしい人がいるんだと思うくらい。僕のロールモデルというくらいの人だったと思います。

僕のことを信頼してプレシーズンのときから使ってくれていたんで、僕としては彼を勝てるコーチにしたかったという思いが強かった。まだ始まったばかりなので、このタイミングでというのは正直残念ではあります。

ただ、ビジネスの世界でもあるので、切り替えてやるしかないですし、プロの1人としてこういう状況でもしっかりと常に結果を出さなければいけません。今後、チームがどう変わっていくか分からないですし、HCが変わればまたチームもがらっと変わります。プレイタイムに影響することもあり得るので、そういうときでも自分はブレずにやり続けなきゃいけないと思っています。

――コーチと選手たちが一丸となって結果を出せなかった原因はどこにあったと思うか。

渡邊:チームとしてまだひとつになれていなかったのかなと思います。コーチが求めていることに選手が反応できていなかった部分もありましたし、一方で選手が思っていることと、ナッシュHCだけではなく、コーチングスタッフも、全員の思っていることにズレがあったりもしたのかもしれません。そういうのは時間がかかるし、これから改善されていく部分だと僕は思っていました。だから、このタイミングで(退任)というのは、僕は正直、ショックだし、残念です。

――次戦(日本時間5日)はワシントン・ウィザーズとの対戦だが、八村塁選手との顔合わせはやはり楽しみか。

渡邊:試合が始まってしまえばもう、ひとつの敵チームではあります。ただ、こうやって僕と塁が一緒にNBAでやれているっていうのは、日本のバスケットボール界にとってすごい大きいことですよね。僕たちはいつもそう考えながらプレイしているわけではないんですけど、自分たちがやっている結果として、そうなっているところは絶対にあるので、楽しんでやれればなと思っています。

取材・一問一答構成:杉浦大介

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ

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東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。