[杉浦大介コラム第4回]リッキー・ルビオ インタビュー「一歩ずつ前に」

杉浦大介 Daisuke Sugiura

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勝てるはずの試合を落としてしまっているのは反省点

――まず最初にスペイン代表の話から始めたい。スペイン人の友人記者から、君が今夏の世界選手権をとても楽しみにしていると聴いている。この大会が君をエキサイトさせている理由は?

リッキー・ルビオ(以下RR):それはもちろん母国スペイン開催だからだよ。地元で代表チームの一員としてプレーできるのが素晴らしいことなのは間違いない。ただ、現時点ではそのことはまったく考えていないんだ。現在の僕はNBAのシーズン中で、ミネソタの仲間たちと一緒にプレーしている。それだけに集中しているよ。

――同僚のケビン・ラブもアメリカ代表として出場して、スペインで対戦することになるかもね。

RR:うーん、たまに彼とそのことを話すこともあるけど……ただ、今言った通り、それは今考えるべきことではないんだ。

――それではNBAの話をしよう。君にとって3年目となった今季はどう?

RR:悪くはないよ。自分たちが望む通りの成績をまだ残せていないのは確かで、それは残念に思う。勝てるはずの試合を落としてしまっているのは反省点だ。ただ、今シーズン前半戦の中でも、ウルブズが秘めている可能性は随所に示してこれたんじゃないかな。

――ウルブズには才能ある選手が揃っているけど、今季は接戦のゲームで苦しんでいることはよく語られている(注:現地1月20日時点で4点差以内のゲームではなんと0勝11敗)。

RR:僕たちはまだ若いチーム。ゲーム終盤により力強くプレーする方法を、これから先にみんなで学んでいかなければいけない。

――君個人の話をすると、スペインの先輩であるホセ・カルデロン(ダラス・マーベリックス)は、NBAで経験を積んだことにより、今季の君はより効率的にプレーできていると語っていた。それについてどう思う?

RR:PGの仕事とは、チームメートにとってベストのプレーを見つけ出していくこと。周囲の選手たちのことを良く知り抜いて、コーチの考えも投影させなければいけない。僕も何年かプレーしてきて、進歩している部分も確かにあるのかなとは思う。

――それでは自身のプレーの中でさらに上達させる必要があると考えている部分は? シューティングの不調が盛んに取り沙汰されているけど、それについては?

RR:すべての面でより良い選手になりたい。これで十分だなんて思うことはないからね。もちろんその中でも特に向上が必要だなと思う部分はあって、僕の場合にはそれはジャンプシュート、アウトサイドジャンパーだ。さっきも言った通り、PGにとって最も大事なのはチームメートを活かすこと。それをこなしながら、さらに自身のシュート力もアップさせるというのは簡単なことじゃない。ただ、今後もできる限りのことはしていくつもりだよ。

いまだに喋れるのは“アリガトウ”くらい

――筋力トレーニングもかなり重点的にやっているようだね。君はNBAでは体格的には華奢なほうだから、積極的に行なっているのかな?

RR:身体作りも僕が重点を置いているポイントの一つだ。タフガイ揃いのNBAでプレーしていこうと思ったら、力強い身体は欠かせないからね。

――日本人トレーナーの佐藤晃一さんと一緒に念入りにトレーニングしているのを見させてもらった。彼との呼吸はどう?

RR:素晴らしいよ。彼がウルブズで仕事をするようになって1年目だけど、上質で、正しいトレーニング方法を供給してくれる。彼のことはみんな頼りにしているんだ。僕は少し日本語も学ぼうとしたんだけど、それは難しかったけどね。いまだに喋れるのは“アリガトウ”くらいだ(笑)

――君は“天才児”としてかなり大きな注目を浴びて2011-12シーズンにNBAデビューした。しかし、3年目を迎えて以前ほど話題には上がらなくなっている。この状況を自身ではどう感じている? 君は性格的に大人しいから、むしろやり易いのかな?

RR:僕に限らず、1年目の選手というのは余計に注目されるもので、その翌年にはまた新たなルーキーに注目が移っていく。それはごく自然なことだ。僕は以前も今も、周囲にどう見られているかはあまり考えない。重要なのはチームメートと一緒に楽しんでプレーすることだけだ。

――今シーズンの目標は?

RR:あまり先のことは考え過ぎず、目の前のことを一つずつやって行こうと思っている。みんなで努力して、ケミストリーを養成し、少しでもより良いチームになっていきたい。それでいて楽しむことも忘れたくはない。

――君は14歳でプロデビューし、オリンピック、ユーロバスケットなど様々な大舞台を早くから経験してきた。NBAのプレーオフでプレーできる日が楽しみなんじゃない?

RR:プレーオフでプレーするために一生懸命に努力しているんだ。ただ、それについて具体的に考えるのはまだ少し先のこと。まずは接戦を勝ち切る術を学ぶことだ。一歩ずつ前に進んでいかなければいけないからね。


「彼も日本人だよ!」。

取材を申し込んだ際、アスレチックトレーナーの佐藤晃一さんを紹介してくれたのはルビオ本人だった。そのときにはまるで少年のような笑顔を見せてくれたが、実際にインタビューを始めてみると、その口は必ずしも滑らかではなかった。

ロッカールームで同僚たちに囲まれていたためか、スペイン代表関連だけでなく、自分自身に関する話は積極的にはしたくない様子だった。取材を通じて、とにかく“チームのため”を強調しようとする姿勢を崩すことはなかった。そのこだわりが少々必要以上だった(ように思えた)のは、ルビオのもともと謙虚な性格からか、あるいは今季のウルブズがやや停滞しているからか。

一般的に“伸び悩んでいる”と見なされながら、それでも今季の平均アシストはリーグ6位(8.2)、スティールは1位(2.66)と素晴らしい数字を残している。誰の目にも明らかな卓越したセンスを持ったスペインのファンタジスタが、再び強烈な輝きを放ち始めたとき、また話を聴いてみたいと思わずにはいられなかった。

文:杉浦大介
Twitter: @daisukesugiura

杉浦大介 Daisuke Sugiura

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東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。