[杉浦大介コラム第2回]ポール・ジョージ インタビュー「多才さこそ僕の長所」

杉浦大介 Daisuke Sugiura

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ここ数年のNBA最大のライジングスターを選んだとき、インディアナ・ペイサーズのポール・ジョージの名前を挙げる人は多いのではないか。

2010年のドラフト全体10位でプロ入りした頃のジョージは、必ずしも将来を嘱望される存在ではなかった。しかし、攻守を兼ね備えたオールラウンダーは毎年確実に成長し、得点力も徐々にアップ。昨季は初のオールスター出場、MIP受賞といった勲章を勝ち獲り、プレーオフでもペイサーズのイースタン・カンファレンス・ファイナル進出に大きく貢献した。

今季も、ここまでエースの目安のひとつである平均20得点超えも果たしており、NBAを代表する選手として風格を漂わせるようになっている。

その期待の23歳がニューヨークを訪れた際、打倒ヒートに燃えるペイサーズの躍進の理由、チームの現状、本人の目標などを語ってくれた。

「優れたリーダーになる術を学んでいきたい」

――今季のペイサーズはマイアミ・ヒートと激しいイースタン・カンファレンス首位争いを続けている。

ポール・ジョージ(以下PG):シンプルに僕たちは良いプレーができていると思う。ヒートと僕たちはタレント数の面ではほぼ同等。経験では劣っているかもしれないけど、学んでいる最中だ。開幕から好スタートが切れて、同時にブルックリン(ネッツ)をはじめとする一部のチームが苦戦して、他のチームを引き離すことができたのは大きかった。

――ペイサーズにこれだけのケミストリーが生まれたことを驚いている?

PG:僕たちは同じコアメンバーでもうしばらくプレーしてきているから、今季もそれぞれが最大限の力を発揮できると予測していた。他のチームを見ても、中心となるメンバーが長い期間を通じて一緒にプレーしているチームはそれほど多くはない。だから僕らは上手くいくと思っていたし、実際にその通りになっているね。

――個人としては、君はスーパースターと呼ばれる選手に含まれる存在になった。守備面を含めて多才な能力が評価されているけど、特に誇りに思っている部分は?

PG:その多才さこそが僕の長所なんじゃないかな。何かひとつだけではなく、複数のことがこなせる選手でありたいと考えてきた。できないことについて言い訳するようではありたくないからね。

――まだ学ばなければいけないと感じている点は?

PG:リーダーシップだ。幸運にも僕は素晴らしいベテランのチームメートに恵まれてきた。それにこのチームにはエゴのない選手たちが揃っている。その中で優れたリーダーになる術を学んでいきたいと思っているよ。

――リーグを代表するチームが試合を行なうクリスマスゲーム(※現地12月25日開催)に君たちが含まれなかったことに批判的な声も多かった。

PG:正直言って、僕自身もウチは含まれないと思っていたよ。ずっとそんな感じだからね。ただ、今後は僕らの扱いも少しずつ変わっていくんじゃないかと思っているけど。

「僕たちにとって、ほとんどパーフェクトな状況」

――熱心なファン、関係者からのペイサーズへの評価は非常に高い。今季はペイサーズから複数のオールスターが選ばれるのでは?

PG:評価が高まって来ているのは感じられるよ。同じスモールマーケットチームでも、オクラホマシティ(サンダー)のレベルにはまだ達していない。ただ、少しずつ近づいているとは思う。

――ランス・スティーブンソンの成長ぶりをどう見ている? 彼もオールスター候補になるかもしれないといった声も出ているけど。

PG:ランスのポテンシャルの高さは誰もが気付いていた。彼は去年の今ごろも良いプレーをしていたけど、今季はより安定感があるね。“好調”というより、“ポテンシャルに見合ったプレーをし始めている”と言ったほうが適切だろう。

――君たちやサンダーのようなスモールマーケットチームが安定している一方で、今季のネッツ、昨季のレイカーズのようにパワーハウスが苦しむこともある。こういうトレンドをどう分析する?

PG:チャンピオンシップ・チームを作るには時間がかかる、一朝一夕ではできないということなんだろう。マイアミ(ヒート)ですらビッグスリー結成直後の開幕当初は苦戦したしね。それでも1年目からファイナルに進んだ彼らは非常に稀なケースだと言っていい。バスケットボールのチームにおいて、選手同士がそれぞれを理解し、良い流れを作っていくにはそれなりの時間が必要なんだ。

――実力に見合ったほど注目度が高まらないことは、ペイサーズにとってポジティブに働いている部分もある?

PG:そう思うよ。おかげで自分を見失わず、常に集中力を保つことができている。モチベーションを高めることにも繋がっている。そして、自分たちの力で少しずつリスペクトを勝ち獲り始めている。僕たちにとって、ほとんどパーフェクトな状況だと言ってもいいと思う。


冒頭で書いた通り、ジョージはリーグ屈指のトップスターとして、その立場を確立した感がある。おかげで取材の競争率も高くなり、今回のインタビューもすべてが筆者からの質問ではなかったことは断っておきたい。

それでも昨年12月下旬のゲーム前、「ジョージのコメントが欲しいんだけど」とチームの広報担当者に頼むと、「あとで必ず連れて来るから」と快く協力してくれたことには感謝している。

ある先輩記者によると、ペイサーズの広報を務めるデイビッド・ベナー氏は自身もスポーツライター出身で、我々の仕事をよく理解してくれているのだという。

最後に余談をひとつだけ。

ジョージの喋り方や取材を受けているときの仕草は、どことなくレブロン・ジェイムスに似ているのだ。

同じナイキ契約選手とあって、彼らはとても仲が良い(ジョージは今年の対戦時に“友人”ではなく“競争相手”だと強調していたが……)。

目標でもあったであろうレブロンに、ジョージはメディア対応の面でも影響を受けているのだろうか?

文:杉浦大介
Twitter: @daisukesugiura

杉浦大介 Daisuke Sugiura

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東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。