[杉浦大介コラム第11回]The Final Answer――アレン・アイバーソン最後のメッセージ:スピーチ編

杉浦大介 Daisuke Sugiura

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現地3月1日(土)、フィラデルフィアのウェルズ・ファーゴ・センターで行なわれたフィラデルフィア・セブンティシクサーズ対ワシントン・ウィザーズ戦のハーフタイム中に、アレン・アイバーソンの永久欠番セレモニー(#3)が開催された。

オールスター選出10回、得点王4回、2001年にシーズンMVP、ファイナル進出……シクサーズの歴史上でも、アイバーソンほどファンを歓喜させ、興奮させた選手はいない。そんな地元の元ヒーローの最後の晴れ舞台とあって、今季は閑古鳥が鳴くことも多かったアリーナも超満員。素晴らしい雰囲気の中で、感動的なイベントは進んでいった。

今回はセレモニーでのアイバーソンの感動的なスピーチ、その後に行なわれた会見時のコメントをまとめてお届けしたい。フィラデルフィアの英雄は、久々の“故郷”への登場でいったい何を語り残したのか。

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アイバーソンに贈られた祝福ツイートまとめ
●アイバーソン永久欠番セレモニー - Allen Iverson Jersey Retirement Ceremony (※NBA Japan Facebookページ内)
●アレン・アイバーソン写真集 - Allen Iverson of the Sixers (※NBA Japan Facebookページ内)

※以下、アイバーソン本人のスピーチ。


まるで夢でも見ているような感じだ。夢じゃないか、はっきりさせておかなければいけないな(といって耳に手をやって歓声を煽る得意のポーズを取る)。

(大歓声を聴いて)これは夢ではなくて、そして俺はどうやら自分の家にいるようだ。家族に向けて話しているんだ。

まず最初に、俺の目標になり、インスパイアしてくれたことをマイケル・ジョーダンに感謝したい。他の子どもたちと同じで、俺もマイク(ジョーダン)のようになりたかったんだ。だからバスケットボールをプレーしたいと思わせてくれたことを彼に感謝したい。

俺が男として成長するのを助けてくれて、キャリアを通じて身近で世話をしてくれたことを(元妻の)タワナ・アイバーソンに感謝したい。俺を愛してくれた。だから彼女は俺にとって常に世界で最も大切な人なんだ。

ティアラ、デュース、アイザイア、メシア、ドリームという子どもたちには、俺にとっての支えであり続けてくれたことを感謝したい。このダンスフロア(コート)で思うようにならなかったときでも、家に帰れば、お前たちが気分を良くさせてくれた。ありがとう。

(マネージャーの)ゲイリー・ムーアには、スポーツがどんなものか教えてくれたことに感謝したい。誰かが頂点に立つとすれば、それは俺なんだと信じさせてくれた。感謝しているし、愛している。

母親のアン・アイバーソン、父親のマイケル・フリーマン、妹のブランディとリーシャ、弟のミスターにも感謝したい。

友人たちにも感謝したい。俺にはたくさんの友人がいて、ここで全員の名前を呼ぶことはできない。それでも、みんなは俺が愛していることを分かってくれているはずだし、俺もみんなが愛してくれているのを分かっているよ。

アーロン・マッキーには、彼の名前を呼ぶときに泣かないと約束したんだ。だから冷静さを保ちたい。アーロン・マッキーには俺の兄貴になってくれたことを感謝したい。兄貴であり、素晴らしいチームメートだった。

テオ・ラトリフ、ディケンベ・ムトンボ、エリック・スノー、デリック・コールマン、スプーン(クラレンス・ウィザースプーン)、ダグ・オーバートン、そして俺の大切なラリー・ヒューズにも感謝したい。

すべてのチームメート、そして対戦相手でさえも、俺からすべてを引き出してくれたことに感謝したい。

フィラデルフィアのファンたち。みんなはどんなに俺を愛してくれているかを語りたがるけど、信じてくれ、その気持ちは俺も同じだよ。

そして、シクサーズのチームの人々、パット・クローチ(元オーナー)、ビリー・キング(元GM)……俺みたいなヤツがこうやって多くの人たちに感謝するなんて誰も思わなかっただろうな。しかし、彼らはみんな俺のキャリア、人生の一部なんだ。

(記者の)スティーブン・A・スミス、ハワード・エスキン、ディー・ライナムにも感謝したい。そして、天から見守ってくれるフィル・ジャスナー(と言って空を指す)。良いことも悪いことも、見たままに記してくれたことをあなたたちに感謝したい。

ドクターJ(ジュリアス・アービング)、モーゼス・マローン、モー・チークス、チャールズ・バークリー、ボビー・ジョーンズ……信じられないよ。俺の名前もこんな凄い人たちと同列に並べられるようになったんだ。

夢は実現しないなんて俺の前で言うのは馬鹿げている。夢は叶うんだ。フィラデルフィア、愛しているぜ。この街の人々は俺を受け入れてくれて、自分らしくいさせてくれた。過ちを犯しても、そこから人間らしく学ばせてくれた。俺を包み込み、この街を永遠の故郷にしてくれたんだ。

ここで名前を呼べなかった人も、俺がどう思っているかは分かってくれているはずだ。そして、あなたが俺をどう感じてくれているかも俺は分かっている。

親友のラサーン・ラングフォードがここにいてくれたらどんなに良いだろうと思う。しかし、彼は天国からすべてを見て、涙を拭ってくれているよ。

みんなを愛している。俺を信じてくれて、気にかけてくれた。バスケットボール選手としてだけでなく、一人の男としてだ。フィラデルフィアのファンは、間違いなく世界最高のファンだ。世界最高だ。

さあ、パーティの時間だぜ。


>>>記者会見編に続く

文:杉浦大介
Twitter: @daisukesugiura

杉浦大介 Daisuke Sugiura

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東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。