富樫勇樹レポート(6): 8日間に渡るNBAサマーリーグを終えて(宮地陽子)

Yoko Miyaji

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それぞれ母国の代表活動に参加するため、ラスベガスを離れたのだった。これは、富樫にとっては好運なことだった。メケルが抜けたことで、富樫は最終戦も2番手のポイントガードとしてプレイできることになったのだ。

第1クォーター終盤、カレブ・カナレスHCが富樫の名前を呼び、最初の出番がやってきた。マッチアップの相手はデイビッド・ストックトン。殿堂入りの名ポイントガード、ジョン・ストックトンの息子だ。試合途中からは、デル・カリーの息子で、ステファン・カリーの弟のセス・カリーともマッチアップした。もっとも、二世選手たちを相手にしても、富樫に気負いはなかった。

「特に意識することなく、本当に普通に試合はできたかなと思います。どんな相手でも、やることに変わりはないので」と富樫は言う。

実際、試合に出てまもなく、ストックトンを相手に味方のスクリーンを使うと見せ、クロスオーバーから逆をついての鮮やかなドライブインでレイアップを決めた。第2Qには、今度はカリー相手に味方のスクリーンを使い、スピードでヘルプ・ディフェンスも振り切ってのドライブインでレイアップを決めて、4得点目をあげた。

ただ、2日前の試合と違ったのは、外からのシュートが決まらなかったことだ。試合を通して4本の3ポイントシュートを打ったが、1本も決まらなかった。

「きょうも緊張したわけでも、空気にのまれたわけでもなく、気持ちの面で準備はできていたと思うんですけど、シュートの精度が少し……3ポイントが入らなかった」と、富樫も試合後に振り返っている。

「ただシュートは入るときと入らないときがあるので、それはこれからまた練習して、確率を上げていければと思います」。

3Pが決められなかったことに加えて、後半に3本のターンオーバーをしてしまったのもマイナスだった。もっとも、そのうちの1本はチームとしての練習期間が少ないことからくる味方とのコミュニケーション・ミスによるターンオーバーだったが、すぐにその選手に話をしにいっている。ポイントガードとしては、うまくいかなかった後にこういったコミュニケーションを取ることも大事な仕事だ。

結局、この試合で富樫は15分43秒に出場し、4得点、3リバウンド、1スティール、3ターンオーバーを記録、マーベリックスは88対62と大差の勝利で最終戦を終えた。

ひとつ、ポイントガードとしてスタッツ面で気になることがあるとすれば、2試合続けてアシストが1本もなかったこと。実際、今回のサマーリーグで4試合に出場し、富樫の通算アシスト数はわずか1本に終わった。テーブル・オフィシャルのアシスト基準が、通常のNBAよりも厳しい基準だったということもあるが、ポイントガードとして総アシスト数1本は寂しい。

もっとも、カナレスHCは、それは気にするほどのことではないと言う。

「彼は全体としていいフロアゲームを展開したと思う。(富樫のパスの後に)チームメイトがファウルされてシュートを決められなかったことも、アシストがつかなかった一因だと思う」。

さらにカナレスHCは、サマーリーグを通しての富樫のプレーについて、「コーチの目から見て、すばらしかった。彼のスピードは相手のディフェンスにとって対応が難しい。いつでも攻撃モードにいて、アグレッシブだったのもよかった。今後の彼にとって、その姿勢はプラスになると思う」と評価した。

8日間に渡るサマーリーグの全日程を終えた富樫は、サンズ戦後にサマーリーグでの経験を次のように振り返った。

「今回の渡米は、サマーリーグに出るという目標で来たので、それが達成できたっていうのは、自分の中で大きな自信にもなりましたし、自分に何が足りないかもわかりました。フィジカルはもちろん、プレイしている中でも細かい点で感じることはたくさんあったので、この経験をこれからも生かし、成長していければと思います」。

富樫はこの後いったん帰国し、日本代表の合宿に参加。台湾で行なわれるジョーンズカップに出場した後、秋にはDリーグ入りを目指して再び渡米する予定だという。

文:宮地陽子  Twitter: @yokomiyaji

 


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