ラプターズの記者が語る渡邊雄太「彼はどこに行っても愛される」

YOKO B

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ハムストリングのケガで欠場していたブルックリン・ネッツの渡邊雄太が12月10日(日本時間11日)のインディアナ・ペイサーズ戦で復帰した。11試合ぶりの出場ながら、21分18秒間プレイし、10得点、7リバウンドをマーク。さらに、勝負のかかった第4クォーター終盤にも出番をもらうなど、チームからの信頼を獲得していることがうかがえる活躍を見せた。

続く12日(同13日)のワシントン・ウィザーズ戦は2得点に終わったが、リバウンドやブロックに飛び、チームのためにできることを精一杯やる渡邊のプレイスタイルがケガから復帰したあとも変わることはなかった。

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「本当の勝負はこれからなんでさらに気を引き締めて、引き続き崖っぷち精神で頑張ります!」

ネッツのロスター入りを果たした10月18日(現地時間17日)、渡邊はツイッターでそう宣言した。ここまでのネッツでの活躍で、自分の居場所を確保したようには見える。しかし、毎シーズン、NBAに残れるかどうかのギリギリのところで戦っている彼は、油断をしたらいつ切られるかわからない厳しい世界だと身をもって理解している。だからこそ、チャンスが与えられれば『崖っぷち精神』で全力でプレイするのが彼のスタイルだ。

その渡邊の姿には、日本のファンはもとより、現地ファンも心を惹きつけられる。今や彼の人気はうなぎのぼりだが、彼がファンを魅了するのは2年在籍したトロント・ラプターズ時代から変わらない。そして、渡邊を応援したくなるのはどうもファンだけではないらしい。

11月11日(同12日)、オクラホマシティにラプターズの試合の取材で来ていた『Sportsnet』のマイケル・グレンジ記者が、渡邊について「最初に言っておきたいのは、(トロントの)誰もが彼を愛していたということです」と、NBA Japan/スポーティングニュースに話している。

「彼はとにかく心のきれいな素晴らしい人で、ファンだけでなく、メディアでさえ、そして当然チームメイトも、彼の成功を心から望んでいたと思います。彼が本当に優れた才能の持ち主であることは明らかでしたから」

「彼は(ラプターズで)ポジションを獲得するまであと一歩のところまで来ていました。一番の痛手だったのは、(2021年の)トレーニングキャンプの終わりに負傷したことだと思います。あれがなかったら状況は変わっていたかもしれません。トレーニングキャンプの最後に行われたチーム対抗のスクリメージでの彼は、コート上で一番いい選手でした。判断力に優れ、素晴らしいショットを放ち、身体能力も高く、これならチームのローテーションに入る選手になると思ったほどです」

ネッツに移籍後の渡邊の試合も見ているというグレンジ記者は「今のブルックリン・ネッツの状況は(彼にとって)とても理にかなっていると思います」と話す。

「あのチームの選手たちは相手からマークされる。そうなれば、彼は自分の仕事ができます。とても賢いですからね。適切なタイミングでカットをしたり、適切なタイミングでボールを手放したり、飛び込んでティップインもする。そしてハッスルもします」

ラプターズでの渡邊を間近で取材してきたグレンジ記者だからこそ、今のネッツの環境が合っていると感じるところもあるのだろう。と同時に、常に全力の渡邊のプレイスタイルに対する懸念も漏らしていた。

「雄太について見聞きするコメントのひとつに、『成功したい』という気持ちがとても強いということがあると思います。それが理由で、自信を持って、力まずにプレイするのが難しくなるときがあるのではないかと思うのです」

全ポゼッションで手を抜かない渡邊のスタイルがケガを誘因する可能性を懸念するのはグレンジ記者だけではない。チームメイトのケビン・デュラントも渡邊について「今は少しリラックスするように伝えないといけないかもしれない」と話している。

だが、おそらくこれからも、渡邊はコートで誰よりも先に走り、リバウンドに飛び込み、ルースボールにダイブすることだろう。メンフィス・グリズリーズでも、ラプターズでも、そしてネッツでも、そうやって崖っぷち精神で誰よりも努力してきたからこそ、今の彼があるのだから。

「これまで彼が多くの努力を積み重ねてきているのを知っています」と、グレンジ記者は続ける。

「だから、トロントの誰もが、彼の素晴らしい活躍を願っているんです。彼はどこに行っても愛されると思います。彼の成功を願っています」

渡邊は12月16日(同17日)、トロントのラプターズファンの前で今シーズン初めてコートに立つ。彼がラプターズファンにどのように迎えられるのか楽しみだ。

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静岡県出身。大学卒業後渡米し、オクラホマ大学大学院修士課程修了。2014年よりオクラホマシティ在住。移住前にNBAのオクラホマシティ・サンダーのファンとなり、ブログで情報発信を始める。現在はフリーランスライターとして主にNBA Japan/The Sporting Newsに寄稿。サンダーを中心に取材するかたわら、英語発音コーチも務める。