この試合のスパーズ勝利の伏線は、誰もが“完璧な試合”と賞賛した第3戦の試合後にあった。スパーズのグレッグ・ポポビッチ・ヘッドコーチは、第3戦のチームの出来に満足していなかったのだ。
流れるような、理想的なオフェンスの陰になって目立たなかったが、ディフェンスではヒートに51%を超える確率でシュートを決められていた。ヒートのスターターのうち、不振のマリオ・チャルマーズを除いた4人だけなら、7割以上のフィールドゴール成功率だった。
第4戦の前、ポポビッチは言っていた。
「第3戦で、私たちのディフェンスは平均的な仕事しかできていなかった。だから(第4戦の準備は)ディフェンスにすべての力を注いでいた」。
そう言ってから、多少の照れ隠しもあるのか、「ま、コーチっていうヤツは勝っても負けても、何か文句を言うものだ。だから、今回もそれをやっただけさ」と付け加えた。
そんなポポビッチも、さすがに敵地で2試合続けて、自分たちのバスケットボールができたこと、第3戦よりディフェンスがよくなったことに満足そうだった。
第4戦の勝利で王手をかけた後、ポポビッチは言った。
「選手たちがこれだけすばらしい試合をしてくれたこと、しかも、それを敵地のマイアミでできたことが嬉しい。あとはホームに戻り、同じぐらいか、さらにいい試合をすることだ」。
ポポビッチが、ここまで手放しで褒めることもあるのかと驚くほどだ。
逆説的かもしれないが、第4戦がそれだけスパーズにとって完璧な試合となったことが、ヒートにとっては唯一の付け入る隙なのかもしれない。
もっともポポビッチのこと。第4戦後、サンアントニオに戻る飛行機の上では、映像を見直して、少しでもうまくいっていないところがあれば、細かくメモしているかもしれないが。
文:宮地陽子 Twitter: @yokomiyaji
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