地元マイアミでのNBAファイナル第3戦に92-111で大敗を喫し、対戦成績1勝2敗となった後でも、ヒートの選手たちにはどこか余裕が感じられた。
プレイオフでのヒートは2012年のカンファレンス・セミファイナルでセルティックスに3連敗を喫したのを最後に連敗はなく、敗戦後のゲームでは13連勝中だ。そんな実績に裏打ちされた自信か、会見に登場したレブロン・ジェイムスとドウェイン・ウェイドは笑顔を浮かべたほどだった。
「修正しなければならない点はあるけれど、心配しすぎているわけではない。僕たちのシステム、チームメイトを信じている。次は第3戦より良いプレーをしなければいけないということだ」。
レブロンの冷静な言葉の背後には、スパーズが第3戦のような驚異的なシューティング・パフォーマンスを再現することはない、という確信もあるのだろう。
第3戦でのスパーズは、前半終了時でフィールドゴール成功率75.8%と、プロレベルのバスケットボールでは考えられない勢いでシュートを決め続けた。グレッグ・ポポビッチHCが「あんなことはもう二度と起こらない」と語った通り、第4戦はより落ち着いたペースの試合になるに違いない。
ただ、たとえ敵地でのゲームでも、スパーズが第4戦で再び大量得点をあげることは十分に可能に思える。今シリーズでは3戦中2戦で110得点以上と、総じてオフェンスは好調だ。何より、常にカギを握るポイントガードのマッチアップで、ここまでスパーズがヒートを圧倒しているのが大きい。
スパーズのトニー・パーカー、パティ・ミルズの2人は、ファイナル3試合で平均25得点(FG成功率49.1%、3ポイントシュート成功率50%)、7.6アシスト、2スティールをあげ、平均6.6得点、5.3 アシスト、4.7ターンオーバーと低迷するヒートのマリオ・チャルマーズ&ノリス・コールの2人に大きく差を付けている。
特に、凡ミスを連発し、持ち前の思い切りの良さが消えてしまったチャルマーズの自信喪失は、ヒートにとって痛恨だった。平均3.3得点(FG成功率25%)、3.0ターンオーバーという先発PGの不振は守備面にも影響し、マッチアップするスパーズのガード陣に自由を与える結果となっている。
「(チャルマーズの低迷の理由は)自分には分からない。僕はただ自分の仕事をこなし、彼に対して厳しいディフェンスをすることを心がけるだけ。チャルマーズが良いプレーをすると、ヒートはいつも勝つからね」。
パーカーの言葉通り、ビッグショットを躊躇せずに放つチャルマーズは、これまでヒートにとってのXファクターの一人であり続けてきた。その選手と、控えのコールが攻守両面で不発のままならば、第4戦でもパーカー、ミルズ、ダニー・グリーン、マヌ・ジノビリといったスパーズのバックコート陣が再び爆発することになるだろう。
また、第4戦では、ヒートのエリック・スポールストラHCの選手起用にも注目が集まる。
スターター変更はないにしても、チャルマーズの不振が続いた場合、早めに見切りをつけてコールやレイ・アレンを投入することは十分に考えられる。
あるいは、今シリーズここまで出場時間2分のみながら、ディフェンスに定評あるトニー・ダグラスを起用するか。
それとも、足の故障の影響で本調子と言えないにもかかわらず、全試合で15得点以上をあげてきたパーカーを勢いづかせないため、早い時間帯からレブロンにマッチアップさせるか。
ファイナル史上、1勝1敗で迎えた第3戦を制したチームの優勝確率は83%(30勝6敗)。数字上ではすでにかなり有利な立場にあるスパーズが、第4戦も制して王手をかければ、シリーズの行方は見えてくる。
ヒートにとって“マスト・ウィン”(必勝)、スパーズにとっては勝てば栄冠に大きく近づく大事な第4戦――。PGのマッチアップと指揮官の思い切りの良い決断が、ここで重要なポイントとなってくることは間違いないだろう。
文:杉浦大介 Twitter: @daisukesugiura
※NBAファイナル第4戦は日本時間13日(金)午前10時スタート!
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