いや、今回は想像する必要もない。ダンカン自身、何度も口にしているからだ。
いつもなら、自分の思いや表情を外に出さないダンカン自身だが、去年のファイナルに負けた悔しさについては、珍しいほど語っている。去年のNBAファイナルでの負けを忘れるのがどれだけ大変かという話になったときに、こう言った。
「しばらく忘れられない。僕はとてもいい記憶力を持っているんだ。特に、自分のミスや負け試合については忘れない。第7戦の負けはまだ覚えている。いつでも、僕の頭の中にあり、何か少しでもそれに関係することを見たら頭の中に浮かんでくるんだ」。
さて、ファイナル第1戦、エアコンの故障という異常事態のために、いつもより暑く、両チーム選手とも汗をしたたり落としての試合となった。38歳のダンカンにとっては、体力的に厳しい試合だ。
「こんな試合は、島(生まれ故郷のバージン諸島)を離れて以来かもしれない。かなりひどい状態だった」とダンカンも、暑さに苦しんだことを認めた。
それでも、それだけ過酷な状況でも、ダンカンは頼もしかった。フィールドゴール10本中9本を決め、21点、10リバウンドをあげ、特に、苦しい時間帯のスパーズを引っ張った。若いチームメイトたちが活躍できる舞台を作った。
試合後、厳しい状況での、彼とマヌ・ジノビリの“年寄り2人”が活躍したことについて聞かれたダンカンは、“年寄2人”という表現に「いったい、どう答えたらいいのかわからないよ」と苦笑した。
そう言いながら、2人のプレーの本質を突く言葉をズバリと言った。
「僕らは2人とも、本気で勝ちたいと思っている。そのためなら何でもやろうと思っている」。
現役でプレーできる残り時間が少ない2人だからこその言葉だ。
「(優勝するためにファイナルであげなくてはいけない)4勝に一歩近づいた。去年、何があったかは関係ない。まだ、改善しなくてはいけないこともたくさんある。日曜(第2戦=日本時間9日・月曜)には、もう少しいいプレイができて、もう1勝あげられることを願っている」。
そう言うと、バージン諸島のように暑いAT&Tセンターを後にし、サンアントニオの街へと帰っていった。
文:宮地陽子 Twitter: @yokomiyaji
【関連記事】