バーチャルリアリティーで、NBAの試合観戦が新たなる境地へ

Sean Deveney

バーチャルリアリティーで、NBAの試合観戦が新たなる境地へ image

2017年のNCAAトーナメント期間中、元NBAのスター、スティーブ・スミスは、実況として高く評価されているスペロ・デデスと共に、ウェストバージニアの対ノートルダム2回戦を解説者として中継していた。ファウル判定が出た後、マウンテニアーズのコーチ、ボブ・ハギンスは、顔を真っ赤にしてつばを飛ばしながら審判に抗議した。ハギンスの十八番となっている光景である(ちなみにその試合では、39回というけた外れの違反がコールされた)。

▶スポーツ観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう

試合中、スミスはサイドラインの外側にいるハギンスに注目し続けた。

「彼こそが、大学バスケットボールにおける純粋なエンターテインメントだ」とスミスは言う。

このとき何が起きていたのか。つまりこの試合を見ていた視聴者は、ボールから視線を外し、ハギンスに目を向け続けていたスミスと同じ光景を見ていたのだ。彼は、サイドラインの外側でまくしたてるコーチの秘密の話に入り込むことができた。それが気に入った視聴者はハギンスを見続ければよく、そうでなければ試合に戻ればよかったのだ。

「ハギンスの怒りはどんどん爆発した」とスミスは説明した。「ただ見ていたかったんだ。観客の中には僕と共にそれを見ているファンが大勢いて、僕は自分が今見ていることについて話す。そうすると皆と一緒にスタンドに座っているような感覚になる」。

このすべては、放送局TNTとインテルのパートナーシップによる革新的なバーチャルリアリティー(VR)技術がもたらした。そして今シーズン、NBAにもこの技術が持ち込まれた。2月のオールスターウィークエンドに先立ち、1月15日のロケッツ対クリッパーズ戦と、1月25日のティンバーウルブズ対ウォリアーズ戦で、「NBA on TNT」が試験運用した。

この試みはレギュラーシーズン中も続けられ、7試合がVRで中継された。そして現在は、プレーオフの様々な試合がVRで中継されている。ウェスタン・カンファレンスのファイナルも、全試合VRで提供される予定である。

VRで試合を体験したことのない人にとっては、実におもしろい経験である。視聴者は10のカメラから視点を選べるのだが、それはつまり、コート上やサイドラインの外、さらには観客席でさえ、あらゆる場所の光景を見られるということなのだ。どこでも好きなところに目を向けられ、実際の試合会場にいるような感覚を再現するのが目的である。

「違うアングルに慣れるには少し時間がかかる」とスミスは言った。「でもボールが上に上がった時にみんながゴールの支柱のアングルから見るのは自然なことになりつつある。選手たちがピック・アンド・ロールを始めたら、また別のアングルに切りかえる。それは僕だけだけどね。何であれ、そういうのが視聴者1人1人にとって当然のことになってくるだろう」。

「僕はピック・アンド・ロールの外の動きにも注意を払う。僕の妻はスタンドをのぞき見して、ジャック・ニコルソンやカーダシアン姉妹を見るだろうね。そういうこともできるんだ」。

カメラは全部で5つある。アリーナ上部に設置した全体を見るカメラ、アナウンサーテーブル上のコート脇のカメラ、バスケット下の各ゴール支柱のカメラ、観客としての体験をより高める、自由な動きをするカメラだ。

VR視聴を成功させる難題の1つは、多くの視聴者にとって、これが初めての体験であるということだ。視聴者には、自分がどのように試合を観戦するか再考することが求められる。同じことが、スミスやデデスのような放送解説者や、中継車の技師にも当てはまる。

「2Dの場合、カメラは前方のみしか切り取ることができず、コントロールできる範囲が非常に狭いです」とインテル・スポーツの顧客推進マネージャー、ナターシャ・バンクスは言う。「VRはカメラが180度なので、目の前で起こっていることだけでなく、180度の全視界に意識がいくことになり、周囲の状況すべてを知ることができます。解説や実況の人々が、視聴者に“左を向いて、ここで起きていることを見てください”と声をかけるなんてことが確実に実現できます」。

大きな魅力は、視聴者がバスケットボールの攻守のプレーを自分が好きなように見ることができる点である。試合の最中にスタッツを呼び出すこともできるし、もし視聴者が望むなら、ピック・アンド・ロールから速攻ダンクシュートまで、あらゆるプレーの解説を、すべてのアングルから見ることができる。

「まだまだできることは多そうです」とデデスは言った。「試合中、スミスと私が顔を見合わせて“ワオ!”と叫ぶような瞬間があります。コートのスペーシングや奥行感覚を体感できます。そしてスミスのような長年プレーしてきた元スター選手が、この新しい視点から何をどう見るのか、楽しみですね」

「彼はピック・アンド・ロールを100万回見てきましたが、それをどこどこの視点から見るとか、コーチを画面に入れて彼のボディランゲージを見るとか、VRならユニークな方法で体験できます」

それこそが、スミスお気に入りの点だ。

「高度なピック・アンド・ロールが起きたのを横から見る場合、通常は上からの視線で見ることになる」とスミスは言う。「でもそれを支柱から見た場合、僕はポイント・ガードが何を見ているのか、コーナーにいるシューターがどこにいるのか、ディフェンスが何をしているのかを見ることができる。横からの角度で見ている時にはボールから目が離せないから、そこで起きていたことを見逃しているんだ。僕はその“起きていたこと”が見たい」

そして彼は、そう思っているのが自分だけではないと実感している。NBAをVRで観戦している人は増え続けている。試合の細部まで知り尽くしたいファンは、より深く試合を理解することができるだろう。スミスはこうなることを予測していた。

「NBAのファンたちは賢く、きっと他のスポーツのファンと比べても、知識が豊富だと思う」とスミスは言った。「彼らは高度な統計データを分析できるし、傾向も知っているし、専門用語も知っている。いたるところでそのことを目にする。例えばツイッターを見ても、NBAのファンたちはNBAについて熟知していることが分かる。彼らはVRによってNBAをますます好きになるんだ」

【ジロ・デ・イタリア注目記事】
ジロ・デ・イタリアとは?|初夏のイタリアを駆け巡る世界3大自転車レース

【DAZN関連記事】
【必読】DAZN(ダゾーン)の"トリセツ" 最新・2018年版!
ネットでプロ野球中継を視聴する方法を紹介
DAZNでのプロ野球の放送予定や試合スケジュール
DAZNでF1放送を視聴する方法は?
【最新・2018年版】F1の放送予定・レース日程まとめ
ネットでMLB中継を視聴する方法を紹介
MLBの試合日程・放送予定|テレビでの視聴も可能?/2018シーズン

原文:Virtual reality experience allows fans to see NBA action like never before

翻訳:日本映像翻訳アカデミー

Sean Deveney

Sean Deveney is the national NBA writer for Sporting News and author of four books, including Facing Michael Jordan. He has been with Sporting News since his internship in 1997.