【独占】渡邊雄太インタビュー「確かにそういう考え方もあるなと」…決断を促した妻の一言(杉浦大介)

杉浦大介 Daisuke Sugiura

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渡邊雄太の5年目の挑戦が始まっている。まもなく28歳の誕生日(10月13日)を迎える日本出身のフォワードは、今秋、無保証の契約でブルックリン・ネッツのトレーニングキャンプに臨んだ。

10月3日(日本時間4日)にブルックリンで行われたフィラデルフィア・76ersとのプレシーズン初戦では、10得点、4リバウンドと好スタートを切った。このまま好調の波に乗り、多くのスーパースターを擁するネッツで開幕ロスター入りすることを多くの日本のファンが期待していることだろう。

大事な挑戦の始まりとなる76ers戦の前に、その渡邊がロッカールームで単独インタビューに応えてくれた。

ネッツでの役割、同僚ケビン・デュラントとの練習でのマッチアップ、スティーブ・ナッシュ・ヘッドコーチ(HC)との関わりなど、話題は多岐に及んだ。さらに、ネッツとのキャンプ契約を承諾するまでに揺れた心の内と、再チャレンジを決断する要因のひとつとなった夫人からの一言についても詳しく言及してくれた。

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マッチアップするのがいつもKDなんですよ(笑)

――トレーニングキャンプで練習をしてみて、ネッツは自身のこういうところを評価してオファーをしてくれたんだと感じた部分はありましたか?

渡邊:しっかり頭を使ってプレイができているところは評価してもらえているのかなと思います。今までやってきた通り、要所要所でスペースを見つけ、カッティングして簡単なレイアップを決めたり、といったプレイはみせられています。1対1でクリエイトできる選手はこのチームにはたくさんいますよね。僕はそういうのはあまり得意なタイプではないので、違うところで自分の良さが生かせれば、このチームでの役割が明確になってくるんじゃないかなと感じています。

――渡邊選手の最大の武器というとやはりディフェンスですが、先日、ナッシュHCに話を聞いた際、オフェンスの長所のほうを重点的に話してくれました。攻撃力も評価されていると感じますか?

渡邊:逆にこのチームではたぶんディフェンスの評価、まだ良くないと思います。練習中、僕がマッチアップするのがいつもKD(ケビン・デュラント)なんですよ(笑)。紅白戦をやっても、パワーフォワード(PF)のポジションで出ることが多いので、そうするとKDとマッチアップ。自分では一生懸命やっているんですけど、KDが相手だとまだどうしようもないときはあります(笑)。だから正直、ディフェンスではまだアピールはできていないですね。

――デュラントは学生時代から好きなプレイヤーとして名前を挙げていた選手でした。実際にチームメイトになってみて、印象は?

渡邊:これまで対戦相手としてプレイして、彼がすごいっていうのはもちろん知ってはいました。ただ、練習を一緒にやってみて、改めて「これが僕がずっと見てきたケビン・デュラントなんだな」という感じです。練習も一生懸命やりますし、上手くなるべくしてなったと感じます。彼はもうNBAに入って15年目ですよね。この世界であれだけずっと高いパフォーマンスを維持しているのにはやはり理由があるんだと改めて思いました。

――その選手との日常的なマッチアップは素晴らしい経験ではありますが、ディフェンスでのアピールは困難ですね(笑)

渡邊:そうですね(笑)。あとディフェンスに関して言うと、昨季まで所属したトロント・ラプターズとネッツはシステムが全然違い、そこに対するアジャストメントも進めなければいけません。そんなに頻繁に間違えるわけではないですが、ラプターズのときの癖で必要以上に(相手に)寄り過ぎてしまったりとか。このチームにいる以上、このチームでやらなければいけないことをしっかりと徹底しなければいけません。

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この夏はあまり自分がやりたかった練習はできなかった

――無保証でのキャンプ参加ということで、今季は絶対にケガができない立場でもあります。コンディションを保つために何かやっていることはありますか?

渡邊:この夏は正直、練習をあまりできませんでした。まずロサンゼルスでケガしたため、日本代表に入る前の6月は丸々1か月、練習ができませんでした。7月に入ってもアジアカップの試合中に足首を捻挫をしてしまい、そこからまた1か月くらい練習はできない状態でした。だからこの夏はあまり自分がやりたかった練習はできなかったんです。

今もそういう事情をしっかりと話して、足首のトレーニングだとか、コートに入る前のケアだとかをいろいろ進めてはいます。ただ、ケガをしたくてしたわけではないですし、バスケ選手である以上は故障はつきもの。ケガをしないためにやることは全部やっているので、そこはもうあまり気にせず、それでもしてしまったらもうしょうがないという感じではあります。

――ナッシュHCの話に戻ると、現役時代は日本人初のNBAプレイヤーになった田臥勇太選手(現Bリーグ 宇都宮ブレックス)の同僚だった人でもあります。コーチとそのときの話もしましたか?

渡邊:ネッツに来てすぐぐらいのときに、「ユウタ・タブセって覚えている?」って話をしたことがあったんです。「もちろん覚えているよ」って言われました。(ナッシュHCは)すごく気さくな人なんですよ。だからいろいろと話をしてくれるんですけど、そのときもたくさん話しました。(田臥選手がどんな選手だったかとか)そういう話で結構盛り上がりましたね。

――去年、しっかりと動ける体重を保つためにシェフを雇ったという話もしていました。5月にご結婚を報告され、生活にも変化があったと思いますが、シェフの方のお世話にも依然としてなっているんですか?

渡邊:はい、まだ作ってもらっています。もちろんずっと一緒にいてくれるわけではないですし、妻も食事を作ってくれます。その辺はこれからもスケジュールを見ながら、うまくやっていければいいかなと思っています。結婚したから終わりではなく、バランス良くシェフの方にもお願いできればと考えています。

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妻は僕が何をするにしても全力でサポートしてくれる

――ネッツのキャンプに参加という結論に辿りつくまでに、Gリーグでやり直すことも考えたということですが、その経緯も少し話してもらえますか?

渡邊:東京オリンピックもそうでしたけど、(アジアカップでも)日本代表で久しぶりに自分がメインの立場で長い時間プレイできるという状況は本当に楽しいものでした。その時点でも今のようなトレーニングキャンプの参加オファーはもらっていたんですけど、契約をもらえるほどではありませんでした。それだったら、NBAに行っても、去年のようにロスター14~15番目の選手になってしまうんじゃないかな、と。だったらGリーグからスタートして、プレイタイムをもらい、自信や力をつけた上でNBAからのコールアップを狙うのがいいんじゃないかなと思ったんです。そのあたりに関しては代理人ともかなり話はしました。

――そういったときに奥様の存在と言葉が大きかったのでしょうか?

渡邊:そこで妻ともいろいろと話をして、まず僕が何をするにしても全力でサポートしてくれるという大前提でいてくれました。でもそのなかで、「今までやってきたことをここでやめていいの?」といった感じで言われたんです。確かにそういう考え方もあるなと思いました。

キャンプの契約だって、もらいたくてももらえない選手はたくさんいます。ましてやNBAのロスターに残るチャンスがある状況です。それを蹴ってGリーグに行くというのはもったいないし、今まで自分が積み上げてきたものを否定してしまうような気がしたんです。3年連続でのこういう立場で実際に大変ですし、正直、いろいろとストレスもかなりありますけど、そこでここでやっていくと決めたんです。

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杉浦大介 Daisuke Sugiura

杉浦大介 Daisuke Sugiura Photo

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。