リオネル・メッシが2022年スポーティングニュース年間最優秀アスリート賞に輝いた理由

Mike DeCourcy

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FIFAワールドカップ・カタール2022において歴史的なパフォーマンスを見せたリオネル・メッシが、『スポーティングニュース』の2022年の年間最優秀アスリート賞を受賞した。本誌のマイク・デコーシー記者が、その理由を解説する。


1968年の創設以来サッカー選手が初受賞

2022年を通じてリオネル・メッシ(アルゼンチン代表/パリ・サンジェルマン所属)が地球上で最も偉大なサッカー選手だったのは、1か月間だけだったかもしれない。だがそれは、理想的な1か月だった。どちらがより重要だったかは分からないが、一生の夢をかなえるため、そしてキャリアにつきまとった呪いを払しょくするために、最高の存在とならなければいけない1か月だった。

FIFAワールドカップは4年ごとに開催される。5大会に出場した選手はごくわずかだ。メッシは優勝するためにそれだけの挑戦を必要とした。初出場だった2006年と違い、自分よりも地位が確立されたベテランのビッグスターたちはいなかった。2010年と違い、アルゼンチン代表を率いていたのは、マラドーナという現役時代の天才的キャリア以外の経歴がなく、その仕事にふさわしい才能もないと思われた「名前」重視の監督ではなかった。そして2014年や2018年と違い、アルゼンチンは刺激に満ちた、若く団結したチームだった。

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彼らはレオにワールドカップで優勝させようと、全員が唯一の目標に向けて意気込んでいたのかもしれない。結果、彼はその優勝を成し遂げることができた。

非常に魅力的だったワールドカップ決勝の余韻が残るなか、『スポーティングニュース』は年間最優秀アスリート賞にメッシを選出した。1968年に始まったこの賞がサッカー選手に贈られたのは初めてだ。

メッシはUEFAチャンピオンズリーグで4回、国内リーグで11回、そしてコパ・アメリカで優勝を果たしている。これらのタイトルを目指すなかで見せたサッカーのほうが、今回のワールドカップ以上だったかもしれない。実際、2011年にバルセロナでチャンピオンズリーグを制覇した際、メッシは13試合で12ゴールをあげている。2013年にバルサがラ・リーガで優勝したときは、46得点11アシストという成績を残した。リーグ王者となったチームの総得点の51%に関与したのだ。

しかし、FIFAワールドカップ・カタール2022におけるメッシの支配ぶりには、より多くの意味があった。しかも、彼は極めて重圧のかかるなかでそれを成し遂げたのである。

かつてペレやマラドーナが成し遂げたことを達成する上で、今回はメッシにとって最後のチャンスだった。ペレやマラドーナは、メッシより若くして優勝を経験している。メッシは昨年6月に35歳となったが、ペレがブラジル代表で最後の試合に出場したのは31歳のときだった。マラドーナは30歳で1990年のワールドカップ決勝を戦い、以降の公式戦出場は5試合だ。

しかしメッシは、サッカーにおいては老いたとされる時期に、これまで成し遂げていなかったことを達成した。そしてそれは、誰も成し遂げたことのないものだった。アルゼンチンの7試合のうち5試合でマン・オブ・ザ・マッチに選ばれており、これはFIFAワールドカップの新記録だ。異なる2大会で大会最優秀選手を意味するゴールデンボールを受賞した唯一の選手にもなった。また、グループステージ、ラウンドオブ16、準々決勝、準決勝、決勝と、大会のすべてのラウンドで得点をあげている。これも、史上初のことだ。

おそらくは史上最高のワールドカップ決勝となった白熱のフランス戦で、メッシは前半に先制点となるゴールを決めた。望んだようにそのリードを保つには至らなかったが、延長後半には優勝に迫る追加点をあげている。それでもフランスの粘りでPK戦に持ち込まれたが、メッシはそのPK戦で1人目のキッカーを担当し、成功させてみせた。マラドーナの傑作だった1986年以来となる優勝にアルゼンチンを導くべく、メッシはできる限りのすべてをやってのけたのだ。

クラブでの快挙も欠かせない。2021-2022シーズンのフランスのリーグアンで2位マルセイユに15ポイント差をつけて優勝したパリ・サンジェルマンで、メッシは15アシストを記録した。そのうち10アシストは2022年にマークしている。2022-23シーズン前半戦は、リーグ戦の13試合で7得点10アシストを記録し、チャンピオンズリーグのグループステージ5試合で4得点4アシストをマークした。すべて、35歳の選手としては驚異的だ。ただやはり、メッシの2022年といえばワールドカップだろう。

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MLBニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジは、アメリカン・リーグの新記録となる62本のホームランを放った。ヤンキースは99勝をあげ、ヒューストン・アストロズに敗れたが、アメリカン・リーグ・チャンピオンシップ・シリーズまで勝ち進んだ。

NBAゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリーは、自身にとって4つ目の優勝リングを手にした。得点ランクでリーグ10位、プレイオフでは5位の成績を残し、NBAファイナルでは最多の平均31.2得点をあげている。

しかし、2022年のスポーツ界において、メッシ以上に多くのことを要求されたアスリートはいない。そして彼はその要求を満たしただけでなく、支配したのだ。数年おきにしか用意されない舞台で、サッカーにおいて稀有なやり方で、それを達成したのである。

年間最優秀アスリート賞の候補選手は、ほかにもいる。だが、受賞者として理想的なのは、ひとりしかいない。

原文:Why Lionel Messi as The Sporting News Athlete of the Year? No one else conquered the entire world
翻訳・編集:スポーティングニュース日本版編集部

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Mike DeCourcy

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Mike DeCourcy has been the college basketball columnist at The Sporting News since 1995. Starting with newspapers in Pittsburgh, Memphis and Cincinnati, he has written about the game for 35 years and covered 32 Final Fours. He is a member of the United States Basketball Writers Hall of Fame and is a studio analyst at the Big Ten Network and NCAA Tournament Bracket analyst for Fox Sports. He also writes frequently for TSN about soccer and the NFL. Mike was born in Pittsburgh, raised there during the City of Champions decade and graduated from Point Park University.