黒人ドライバーのガレージで見つかった絞首縄。米国が差別問題で揺れるなかNASCARが鮮明写真を公開

Tadd Haislop

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NASCARがレース会場での南軍旗掲揚の全面禁止措置を発表した直後、絞首縄のような形状をしたロープが、ある黒人ドライバーのガレージで発見された。絞首縄はかつての黒人に対するリンチを想像させ、人種差別による暴力の脅迫と見なされている。FBIの捜査では事件性が認められなかったが、果たしてこの写真を見てその結論に納得する人はいるだろうか──

6月21日(日本時間22日)のタラテガ・スーパースピードウェイにおいて、リチャード・ペティ・モータースポーツのチームメンバーがダレル・” ババ” ・ウォレスのガレージに絞首縄がぶら下がっていたのを発見した。それ以来、何枚かの写真がすでにソーシャルメディアでシェアされてきたが、NASCARが25日(同26日)に公開した下の写真ほど鮮明なものはなかっただろう。

NASCAR社長のスティーブ・フェルプス氏は、この写真はNASCARの保安スタッフが調査の一環として撮ったものだと述べた。フェルプス氏はNASCARが行った調査についてこうも述べている。

「NASCARは私たちがレースを行うすべてのレース場のすべてのガレージを徹底的に調査しました。全体で29のレース場、1,684のガレージ、そのうち縄状のものが結び目をつけてぶら下がっているのが見つかったのは11例だけでした。そして、絞首縄の形状をしていたものは21日(同22日)にババ ・ウォレスのガレージで見つかったものしかありませんでした」

26歳のウォレスはNASCARの3つの全米シリーズに参戦する唯一の黒人ドライバーである。そのウォレスは所属するリチャード・ペティ・モータースポーツとNASCARによる誤解によって、厳しい批判にさらされてきた。タラテガ・スーパースピードウェイにあるウォレスのガレージで21日(同22日)に発見された絞首縄はFBIとNASCARの両方によって調査され、ウォレスに対する憎悪犯罪はなかったという結論が下されたのだ。

FBIはその縄はガレージを吊り下げるためのもので、昨年の秋からすでにそこにあったと捜査で明らかにしたのだ。

「私たちはその縄が2019年10月の週末に、レースが始まる前まではそこになかったことを突き止めました。縄はその週末のどこかの時点で置かれたと判断しています。残念なことに、当時のガレージへのアクセスに関するルールと運用は現在より緩やかだったので、私たちは誰がこのような形の縄をそこにぶら下げたのか、そしてそれがなぜだったのかを明らかにはできませんでした」とフェルプス氏は言った。

ウォレスは23日(同24日)夜にCNNのインタビューに応じ、ガレージで見つかったものが何だったのかをNASCARとFBIから明確に説明を受けたと言った。ウォレスは彼のガレージのドアにぶら下がっていて、そこから切り離された縄も見せられた。

ウォレスは同インタビューで以下のように述べている。

「私は長年レーサーをしています。数えきれないほどのガレージを使いましたが、今まであんな縄がぶら下がっていたのを見たことはありません。もしあれがガレージを開けるためのロープの結び目だったと主張して、証拠の写真や動画をアップしたい人がいるのなら、勝手にすればいいと思います。FBIは何回もあれを絞首縄だったと言いました。NASCARの経営陣もあれは絞首縄だったと言いました。私はピットクルーたちから私の車があったガレージにぶら下がっていたものについて証言も得ています。あれは絞首縄でした。あんなものは今までに見たことがありません」

「私はクルーのチーフに相談しました。私たちが早まった決断をしていないことを確かめたかったのです。私は“これは結び目なんかじゃない。どう見ても普通じゃない”と言いました。彼はこう答えました。“ババ、これは簡単に結んだだけでできるようなものではないよ。これを作るにはかなり時間がかかったはずだ”」

NASCARがFBIに捜査を依頼したことについてフェルプス氏はこう答えている。

「はっきり申し上げますが、このようなことが起きたら、私たちはまた同じようにします。これだけの証拠があった以上、私たちは調査をしなくてはいけなかったことは明白でした」

(翻訳:角谷剛)

Tadd Haislop

Tadd Haislop is the Associate NFL Editor at SportingNews.com.