完全引退のエメリヤーエンコ・ヒョードルら、UFC未参戦のMMAトップファイターたち

Daniel Yanofsky

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総合格闘技の世界最大の団体『UFC』。1993年の設立以来、世界の名だたるトップファイターが象徴的なオクタゴンのなかで死闘を演じてきたが、その舞台に未だに上がることがない強豪たちもいる。日本時間2月5日に完全引退する皇帝エメリヤーエンコ・ヒョードルもそのひとりだ。

UFCに参戦しなかった、あるいは現在進行系で参戦していない強豪たちを本誌格闘技エキスパートのダニエル・ヤノフスキー(Daniel Yanofsky)記者が解説する。

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長年にわたり、UFCは世界中からトップファイターたちをかき集めてきた。UFCダナ・ホワイト代表は、エディ・アルバレス、ベン・アスクレン、クリス・サイボーグ、マイケル・チャンドラーといった他団体のスター選手を引き抜いてきたのだ。

しかし、UFCのオクタゴンに一度も足を踏み入れたことがないファイターは未だに数多い。

契約の問題もあるだろうし、個人の好みの問題かもしれない。それ以外の理由があるのかもしれない。それが何であれ、大物ファイターの何人かはUFCに参戦していない。そのなかのひとりがエメリヤーエンコ・ヒョードルだ。46歳になるヒョードルはキャリアの最後を飾るであろう試合を2月4日(日本時間5日)に戦う。Bellator 290で同団体ヘビー級タイトルをかけてライアン・ベイダ―との再戦に臨むのだ。そしてその日を最後にその伝説的なキャリアを終えると見られている。

ヒョードルとUFCとの間で契約が結ばれるという噂は以前からあった。しかし、それはついに実現しなかった。もしそうなっていたらどんな世界が開けていただろうと、多くのファンが想像するに違いない。だとしても、ヒョードルのキャリアはUFCに参戦しようとしまいと、その輝きを永遠に失うことはないだろう。

ヒョードル以外にも、ホワイト氏あるいはUFCと契約することなしに強烈な印象を残してきているファイターたちがいる。

UFCに一度も参戦していないトップファイターたち

エメリヤーエンコ・ヒョードル

「ラストエンペラー」と呼ばれるエメリヤーエンコ・ヒョードルは史上最も恐れられたファイターである。その戦績も他の追随を許さない。

2001年から2009年にかけて、ヒョードル(40勝6敗、1ノーコンテスト)は28連勝を飾った。対戦相手にはセーム・シュルト、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、マーク・コールマン、ケビン・ランデルマン、ミルコ・クロコップ、マーク・ハント、アンドレイ・アルロフスキーといった名前が並ぶ。RINGS(リングス)無差別級トーナメント王者であり、PRIDEヘビー級チャンピオンでもある。

ヒョードルはきわめてストイックなファイターで、そのパワーは誰からも恐れられた。16人のファイターをパンチでノックアウトしている。それに加えてサブミッションの技術も高く、一本勝ちによる勝利も15を数える。

サンボと柔道の達人であり、ヒョードルに比肩するファイターはいない。引退後も、史上最強ファイターの呼び名は揺るぎないものになるだろう。

ヒクソン・グレイシー

ヒクソン・グレイシーはプロのMMAファイターとしては11戦しかしていない。そのすべてに勝利したヒクソン(11勝0敗)はUFCに参戦しなかったトップファイターのひとりと考えられている。「ラストサムライ」ことヒクソンはグレイシー一族の最強ファイターと呼ばれていた。この一族の歴史を考えると、その意味するところは大きい。

ヒクソンはすべての試合を一本勝ち(リアネイキドチョーク7、腕ひしぎ十字固め2、マウントパンチ2)で終わらせた。MMA以外では400戦以上無敗だったと言われる。それには柔術トーナメントから路上での喧嘩までもあったとされる。キャリアのハイライトにはバーリ・トゥード・ジャパン2連覇と、髙田延彦とのPRIDEでの2度の戦いが含まれる。

グレイシー一族にはホイスやホリオンなど、ほかにもMMAの歴史に名を残したファイターが多くいる。しかし、「もしUFCで戦っていたらどうなっていただろう」と誰もが想像をかきたてるのはやはりヒクソン、その人である。

青木真也

青木真也は39歳で、その戦績は47勝11敗、1ノーコンテストである。UFCが興味をもつ選手かどうかは分からない。しかし、いくつかの王座を獲得した青木がオクタゴンで戦うことを期待したファンはかつて多くいたし、今でもいるだろう。

青木はMMAの歴史でも屈指の寝業師である。一本勝ちの数は31を数える。柔道とブラジリアン柔術の黒帯でもある。エディ・アルバレス、ヨアキム・ハンセン、宇野薫、桜庭和志、ビトー・ヒベイロ、そしてエドゥアルド・フォラヤンといった有名ファイターを下してきた。

DREAM、DEEP、そしてプロ修斗で戦ってきた青木は、現在はONE Championshipを主戦場にしている。修斗の元ライト級王者であり、DREAMとONEのライト級王者だ。それだけではなく、DDTプロレスリングに参戦するプロレスラーでもある。UFC以外の舞台で殿堂入りに値するようなキャリアを築いている。

イゴール・ボブチャンチン

イゴール・ボブチャンチン(56勝10敗、1ノーコンテスト)がもし2005年に引退していなければ、UFCに参戦していただろう。そのすぐあとにPRIDEはUFCに買収されたのだ。それでも、このウクライナ出身ファイターの圧倒的なキャリアはこのリストから外すわけにはいかない。

ボブチャンチンは元キックボクサーだった。60勝以上のキャリアを引っ提げて、MMAに転向したのは1995年のことだ。それも1日に複数の試合を行うトーナメントが得意だった。PRIDEで史上2位の27試合を戦い、同じく史上2位の18勝を挙げた。

MMAを代表する多くのグラップラーたちをパンチで倒し、ノックアウト勝ちは41を数えた。怪我で引退に追い込まれたが、「北の最終兵器」「アイスコールド」と恐れられたこの身長約173cmの戦士を止めることはだれにもできなかった。

セルゲイ・ハリトーノフ

すでに42歳とはいえ、セルゲイ・ハリトーノフはUFCと契約する可能性がまだ残っている。「死神落下傘」の異名を持ち、ダナ・ホワイト氏と契約していないトップファイターのひとりだ。

PRIDE屈指のハードパンチャーとして名を馳せたハリトーノフのキャリアは、2000年に始まった。ムリーロ・ニンジャ、セーム・シュルト、ファブリシオ・ヴェウドゥム、アリスター・オーフレイム、ジョーイ・ベルトラン、そしてロイ・ネルソンといったファイターたちに勝利してきた。StrikeforceとPRIDEのトーナメントで上位進出を果たしてきたが、優勝の経験はない。

ハリトーノフはM-1とBellatorでも戦っている。直近5試合の戦績は4勝1敗であり、このロシア人ファイターはまだ引退するつもりはないようだ。

第2候補グループ

ムリーロ・ルア、ジーナ・カラーノ、ダグラス・リマ、藤井 惠、ジョー・ウォーレン、パトリシオ・フレイレ、ビビアーノ・フェルナンデス

原文:Fedor Emelianenko and the best MMA fighters to never compete in the UFC
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本編集部

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Daniel Yanofsky