ヒョードルがラストマッチに完敗も、かつてのライバルたちと大団円|Bellator 290

神宮泰暁 Yasuaki Shingu

ヒョードルがラストマッチに完敗も、かつてのライバルたちと大団円|Bellator 290 image

日本、そして世界でMMA最強ファイターとして名を馳せてきた「ラストエンペラー」ことエメリヤーエンコ・ヒョードルが、米カリフォルニアのキア・フォーラムで行われた『Bellator 290』でのラストマッチで、因縁のライアン・ベイダーに1回TKOで敗れた。

完敗したヒョードルを、マーク・コールマン、クイントン・ランペイジ・ジャクソン、ダン・ヘンダーソン、チェール・ソネンなどかつてのライバルたちが労い、皇帝最後の試合を称えた。

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ヒョードルは、ロシア国内での数々のサンボ、柔道の大会を制し、2000年にプロ総合格闘技に転向。RINGS(リングス・ネットワーク)への参戦によって日本の格闘技界でも知られる存在となり、2001年のヘビー級、2002年の無差別級トーナメントを制覇。2004年のPRIDEヘビー級グランプリ優勝および同級王者として、その名を世界に轟かせるようになった。

2001年から2009年にかけて28戦連続無敗を記録したが、その相手にはセーム・シュルト、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、マーク・コールマン、ケビン・ランドルマン、ミルコ・クロコップ、マーク・ハントら超強豪が含まれる。

2012年6月に一度目の引退をしており、ロシアのスポーツ省特別補佐官など政治的活動に軸足を移していたが、2015年4月に競技復帰。復帰戦の舞台はRIZIN旗揚げ3連戦の大晦日大会だった。

2017年からBellator MMAと契約。6月24日のマット・ミトリオン戦で黒星デビューとなったが、2018年4月、ヘビー級ワールドグランプリ1回戦で元UFC世界ヘビー級王者フランク・ミアを撃破し、同年10月の準決勝でチェール・ソネンも破って決勝に進出。この2019年1月26日の決勝戦の相手がライアン・ベイダーだった。

同決勝戦、ヒョードルは1回開始直後にベイダーの左フックを被弾すると、そのままパウンドで秒殺負けを喫した。

これを機にヒョードルは引退カウントダウンに入り、2019年12月29日のRIZINとBellatorの共催イベント『BELLATOR JAPAN』でクイントン・ランペイジ・ジャクソンと対戦。白星で日本ラストマッチを飾った。

2021年10月23日にはロシア開催の『Bellator 269』でティモシー・ジョンソンから1回TKO勝ちを収め、母国での試合を終えた。そして、米カリフォルニアのキア・フォーラムで行われた『Bellator 290』での因縁のベイダー戦が正真正銘ラストマッチとなった。

2019年の初戦は、この階級における「世代交代」として象徴的な試合だった。ベイダー自身、一度勝った相手との再戦に乗り気ではなかったというが、「爺さんになったとき、孫に伝説の男を2度倒したと自慢できる」という動機づけで再戦を受け入れた。

MMA史に偉大な功績を残してきたヒョードルの最後の試合とあって、かつてのライバルたち…コールマン、ジャクソン、ヘンダーソンらが見守った。さらに、専門メディア『MMAjunkie』によれば、ホイス・グレイシー、ランディ・クートゥア、マット・ヒューズ、フランク・シャムロック、ジョシュ・バーネットらにもBellatorから招待状が送られたという。

現役のヘビー級王者として負けられないベイダーは、1ラウンド開始直後から忖度することはなかった。ヒョードルの右を軽くかわしたベイダーは、さらにヒョードルの左フックに合わせて右ストレート。体勢を崩したとみるやパウンドを叩き込んだ。

ヒョードルは両足で挟み込んでガードポジションを取るものの、ベイダーは猛打でいとも簡単に打抜き、肘とハンマーパンチの雨を降らせる。鼻の筋を折ったのか大量出血するヒョードルの状況をみたレフェリーが試合を止めた。1回TKOで、ヒョードルの完敗となった。

勝利したベイダーは、完勝した一方で、多くのファイターが憧れた存在に引導を渡す役目担ったことについて「ほろ苦かった」と告白。ヒョードルに対しては「この競技を背負った存在。まさにレジェンドであり、彼の物語の一部になれることを本当に嬉しく思う。ありがとう、ヒョードル。あなたは男だ」と称えた。

敗れたヒョードルは、悔しさをにじませながらも、多くのファンや戦友たちが自分の最後の試合を見届けてくれたことに感謝した。

「一方的に負けたことは勿論、自分が望んでいた結果を出せなかったことは無念です。しかし一方で、ここにいるすべての人々が私を応援してくれたこと、そして、過去20年近く、私とともにこの競技を歩んできた猛者たちが私に声をかけるためにここにいてくれることをとても嬉しく思います。私は幸せでした。ありがとう」

仲間たちの前でそう話すと、皇帝はグローブをマットに置いた。今度こそ本当に最後の試合を終えた。

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神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。