2010年が始まったとき、女子の総合格闘技(MMA)はまだ未知の存在だった。UFCのダナ・ホワイト社長が女性ファイターの価値を認めていなかったからだ。
アマンダ・ヌネスは総合格闘家としてのキャリアを4勝1敗の成績でスタートさせている。その後の飛躍を予感させるだけの好成績だった。だが、その後でこのブラジル人ファイターは2010年2月から2013年1月までの間に3勝2敗とやや低迷した。ヌネスの道がひらけたのは2013年にUFCが初めて女子の試合を行うことを決めてからだ。
UFCデビュー後のヌネスは2試合連続のTKO勝ちと上々のスタートを切った。当時のバンタム級チャンピオンだったロンダ・ラウジーの挑戦者候補に名前が挙げられるようにもなった。ところが2013年9月のUFC178でヌネスはキャット・ジンガノに3ラウンドTKOで敗れ、タイトル挑戦権はジンガノに渡ってしまった。
ヌネスは頂点を目指すには変化が必要だと感じていた。彼女は戦い方を変え、その後は負けなしの9連勝を飾った。そのうち7試合をKOもしくはTKOで勝っている。
しかもヌネスが挙げたその9勝はいずれも強敵を相手に挙げたものだった。現UFCフライ級王者のヴァレンティーナ・シェフチェンコを2度に渡って破り、ミーシャ・テイトからUFCバンタム級タイトルを奪い、ラウジーをわずか48秒で倒し、ラケル・ペニントン、元UFCバンタム級王者のホリー・ホルムを次々と下した。さらに21連勝中で”無敵の女王”と称されたクリスチャン・サイボーグを51秒でノックアウトし、UFC女子フェザー級王者のタイトルも獲得した。UFC史上、2つの階級で同時にチャンピオンになった女性ファイターはヌネスが初めてだ。男性でもコナー・マクレガーとダニエル・コーミエの2人しかいない。
2010年代におけるこれらの圧倒的なパフォーマンスがヌネスをその他大勢の無名ファイターから世界チャンピオンへ押し上げ、そして史上最強女子ファイターにも名前が挙げられるようになった。
スポーティングニュースは2010年代女子MMA最高選手にアマンダ・ヌネスを選出した。
次候補者:クリスチャン・サイボーグ、ロンダ・ラウジー
数字で見るアマンダ・ヌネス
キャリア通算戦績:13勝3敗
ヌネスは2016年7月のUFC200でミーシャ・テイトからUFCバンタム級タイトルを奪い、その後4回防衛に成功している。ヌネスはまた2018年12月のUFC232でクリスチャン・サイボーグを破り、フェザー級タイトルも獲得している。
他からの評価
「私こそ歴代最高選手(G.O.A.T.)です。私は地球上でもっとも強い女性を破りました。私がその称号に相応しいと思います」 - ヌネス本人
「その通り、ヌネスが歴代最高選手(G.O.A.T.)だ。彼女こそが最高だ。135パウンド以下と145パウンド以下の両方でベルトを賭けた試合に勝っているのだからね。間違いなく本物だ。サイボーグはそれまで最も恐れられていたファイターだよ。そのサイボーグをヌネスはいとも簡単にノックアウトしてしまったからね」 - ダナ・ホワイトUFC社長
「ヌネスのジャブはまるで右ストレートみたいだし、右ストレートで打たれるとトラックにぶつけられたような気がする。私はあの試合で半分ぐらいから覚えていない」 - ミーシャ・テイト
「誰が歴代最強の女性ファイターかはもはや議論にもならないよ。あとはヌネスがどの高さまでそのバーを押し上げるかどうかだ。女性だけに限らず、歴代最強ファイターになるかもしれない。2つのベルトを防衛し続けたらそうなるだろうね。アマンダに勝てる人間を今は思いつかない」 - ダン・ランバート(アメリカン・トップ・チーム オーナー)
次の10年を担うのはメイシー・バーバー
2020年代を目前にして、女性ファイターの選手層はかつてないほど厚くなった。その中から抜きんでた存在を探すとメイシー・バーバーが浮かび上がってくる。
2017年6月にプロ転向をして以来、バーバーの戦績は8勝0敗だ。そのうちの7試合をTKOかギブアップを奪っているうえ、直近の3試合はUFCで行われたものだ。このコロラド出身の21歳になるファイターがオクタゴンの中で見せる多彩なコンビネーションは女子だけに留まらず、総合格闘技界全体を驚かせている。
バーバーがこれからどれだけ強くなるか? それはまだわからないが、これからの彼女の試合から目を離せない。
(翻訳:角谷剛)
▶スポーツ観るならDAZNで。スマホやTVでスポーツをいつでも楽しもう