ニューヨーク・ヤンキースのエース、ゲリット・コールは、ピッチクロック導入に伴って投手の怪我が増加している状況に対するMLBの見解に黙っていられなかった。
現地時間4月8日(月)、マイアミ・マーリンズとの試合前、故障明けでキャッチボールを再開したコールは、記者たちを前にして口を開いた。
その前日にMLBは声明を発表していた。
それは、MLB選手会のトニー・クラーク専務理事が出した、ルール変更が投手の故障に影響を与えているのではと危惧する声明に対する反論と言えるものだった。
FOR IMMEDIATE RELEASE
— MLBPA Communications (@MLBPA_News) April 6, 2024
Statement from Executive Director Tony Clark Regarding Pitcher Injuries pic.twitter.com/nFio4eDUGL
「匿名の選手による反対、そして選手の健康と安全に対する重大な懸念があったにもかかわらず、コミッショナー事務局は昨年12月、近年で最も重大なルール変更が導入されてからわずか1年でピッチクロックの時間を短縮しました」
「以来、回復時間が減少したことによる健康への影響に対する懸念は増幅するばかりです」
「この重大な変化がもたらす影響を理解、学習しようとしないこれまでのリーグの姿勢は、我々のゲームそのもの、そして最も価値ある財産である選手たちに対する前例のない脅威というべきものです」
MLB issued the following statement in response to tonight’s comments by the leadership of the @MLBPA: pic.twitter.com/Pgltw9xnZe
— MLB Communications (@MLB_PR) April 7, 2024
「この(MLB選手会による)声明は、球速ならび回転数の増加が腕の故障と強く関連してきたという、過去数十年にわたる経験的証拠、重要な長期的なトレンドを無視したものです。投手の故障を望んでいる人は誰ひとりとしておらず、MLBは現在もこの長期にわたる故障増加の原因を包括的に研究調査し、野球界の医療エキスパートへのインタビューも行っています。その結果、ピッチクロック導入が故障の増加をもたらしたとする確証はないというジョン・ホプキンス大学の独自研究と意見が一致しています。事実、ジョン・ホプキンス大学の調査では、2023年シーズンの平均で、早く投球している投手が遅く投球している投手と比べて故障を抱える可能性が高かったという確証は得られませんでした。また、投球のペースを上げた投手がペースを上げなかった投手と比べ故障率が高いという確証もありませんでした」
コールは、このMLBの反論を「好戦的」と捉え、ためらうことなく自らの考えを語ってみせた。
「MLBからの反応はとても熟考されたものには思えなかった」
コールはスポーツ・ニュースサイト「The Atheletic」のクリス・カーシュナー記者に語った。
「導入してまだ1年のものについて影響がないと言い切るのは、あまりにも短絡的だろう。ピッチクロックの影響がどんなものか、本当に理解できるのはたぶん今から5年ぐらいしてから。今、この問題を終わりにしてしまってもいいことは何もない」
この2年間、先発・救援を問わず、多くのピッチャーが肘の故障を抱えてきた。そして、その原因にピッチクロックが影響しているのか、多くの人たちが疑問を感じていた。そんな中、リーグはこのオフ、ランナーがいるときの時間制限を20秒から18秒に短縮した。ちなみにランナーがいないときの15秒ルールは変更されていない。
選手の代表4人が反対したにもかかわらず導入されたこのルール変更に、コールは困惑せざるを得なかった。
「2秒。この2秒を削る論理的根拠をもたらすだけの広告収入がどれだけのものなのか、自分にはわからない」
コールはまた、ピッチクロックが自身の故障、右肘の神経の炎症とは関係がないと明言した上で、シーズン序盤、ピッチクロックに対応しようとすることでスタミナが落ちたように感じたと語っている。
「この問題が論争になっていること自体にフラストレーションを感じるね。例えて言うなら、『離婚した両親がいて、その子供の態度が悪い。立ち直らせたいけど両親2人の理解が噛み合わない』って感じかな。選手たちの態度が悪いわけじゃない。今ここに問題があるんだから、少なくとも問題を解決するために両者が同じ土俵に立つべきなんじゃないのかってことだ」
コールは戦列復帰に向けて練習を続けている。故障がさらに深刻なものでなかったのはヤンキースにとっては幸運だったと言えるだろう。コールの復帰がいつになるにせよ、この先もこの問題についてコールが口をつぐむことはなさそうだ。
※この記事はスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。翻訳・編集:石山修二
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