MLBニューヨーク・メッツの千賀滉大投手がデビュー戦で8奪三振という上々の滑り出しを見せた。『お化けフォーク』と称される決め球について、本誌『スポーティングニュース』のKevin Skiver記者が解説する。
お化けフォークで8個の三振を奪う
マリアノ・リベラのカッター。 トレバー・ホフマンのチェンジアップ。 最近ではジョーン・デュランのスプリンカー。 そして次は、千賀滉大のお化けフォークか!?
今年のオフシーズンにNPBの福岡ソフトバンクホークスからMLBのニューヨーク・メッツに7500万ドル(約102億円)の契約で移籍した千賀は、4月2日(日本時間3日)のマイアミ・マーリンズ戦でMLBデビューをはたした。その日の千賀は5回1/3を投げ、3安打1得点3四球を与え、そして8個の三振を奪った。
マーリンズが千賀から喫した8個の三振すべては『お化けフォーク』を空振りしたものだった。
「千賀は本当に良い球を持っている。速球は150キロ後半だし、とても的を絞りにくい。多くの球種を持っているし、それをいろいろな角度から投げてくる」とマーリンズのジョーイ・ウェンドルはニューヨーク・ポスト紙に言った。ウェンドルはこの日千賀からライナーとフライを放ったが、2打数0安打だった。
お化けフォークは1球ごとに落ちるタイミングや落差が変わるようだ。どうやらボールの行方は千賀だけが知っているらしい。速球のように見えて、まるでテーブルから落ちるような軌道を示す。
Kodai Senga, 97mph Fastball and 85mph Ghost Fork, Overlay. 😯 pic.twitter.com/C4OLiSUQzk
— Rob Friedman (@PitchingNinja) April 2, 2023
千賀滉大のお化けフォークとはどんな球なのか
面白いことに、千賀のお化けフォークは誰にも厳密な分類が不可能のようだ。
野球とは秩序を重んじるスポーツだが、千賀のこの球はまるで混乱の極みだ。MLB公式サイト上のデータ解析ツール『Baseball Savant』はフォークボールに関してはボールの回転率を測定しない。千賀のボール落差も表示しない。あまりにも1球ごとの変化が大きいので数量化ができないのだ。
Bend the Knee before Senga's Ghost Fork. 👻🍴
— Rob Friedman (@PitchingNinja) April 2, 2023
6th and 7th Ks (all on the Ghost Fork) pic.twitter.com/XzYUAnuxHv
単純に言えば、千賀のお化けフォークとは、打者が変化に反応できる位置までは速球に見えて、そこから急激に変化するフォークボールである。ボールはストライクゾーン低めぎりぎりのところに落ちることもあるし、ワンバウンドすることもある。ホームベース近くで見えなくなってしまうことから、お化けの名がついた。
そう、千賀が投げるボールは消えてなくなるのだ。
2 More Ghost Fork Ks for Kodai Senga. 👻🍴 pic.twitter.com/GbPharX3u6
— Rob Friedman (@PitchingNinja) April 2, 2023
メッツのバック・ショーウォルター監督はことさらにお化けの表現を避けるが、ジェイコブ・スタリングスや何人かのマーリンズ選手は試合後にその言葉を信じるようになった。
「あれを打つのは難しいよ。僕が三振したのはスプリットか、何と呼んでいいのか分からないけど、とにかくすごい球だった」とスタリングスはニューヨーク・ポスト紙に言った。
千賀の投球を分布チャートで見ると興味深い。
千賀のスイーパーは高めに浮かぶことがあるが、お化けフォークは完璧にコントロールされている。常に打者のベルトより低い位置にあるのだ。このコントロールがあるからこそ、千賀は自信を持って投げることができるのだろう。
下のチャートはさらに興味深い。
千賀はこの日フォークを26球投げた。打者がバットを振ったのは14回で、そのうちの9回は空振りだった。空振り率64%は驚異的と言うしかない。
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千賀滉大の「お化けフォーク」グローブ
千賀は自分自身を知っている。特製のグローブは瞬く間にMLBのトップへと登りつめた、そしてそれは2つとない。
A moment of appreciation for @kodaisenga’s glove 👻🍴 pic.twitter.com/M6Qn0vuaJM
— New York Mets (@Mets) April 2, 2023
これは千賀の代名詞なのだ。デビュー戦では立ち上がりはやや苦しんだ。最初の4人の打者には、2塁打とシングル安打を打たれ、2人を歩かせた。それ以降のマーリンズはわずか2人しか出塁できなかった。
千賀の日本プロ野球での通算成績は11シーズンで防御率2.59、奪三振1252個である。オールスターに3度選出され、2020年には投手3冠(勝利数、奪三振数、防御率)を獲得した。2019年シーズン後にポスティング移籍を希望したが、ホークスはそれを認めなかった。
千賀のデビュー戦ではほかにも見どころがいくつかあった。立ち上がりに苦しんだ初回で最後のアウトを取ったスターリング・マルテに感謝し、またダブルプレーを取った内野陣にも感謝した。
Kodai Senga waited for Starling Marte after his catch to end the 1st inning and they both got a big welcome in the dugout pic.twitter.com/YLIIxCZFQ8
— SNY Mets (@SNY_Mets) April 2, 2023
Kodai Senga gets the double play to end the 2nd and waits on the field to give thanks to the Mets fielders pic.twitter.com/HISzxWL2r8
— SNY Mets (@SNY_Mets) April 2, 2023
アビサイル・ガルシアがピッチクロックによる三振を喫すると、ベンチにいた千賀は驚いた表情を見せた。
Avisail Garcia strikes out on a pitch clock violation and Kodai Senga’s reaction is great 😅
— FOX Sports: MLB (@MLBONFOX) April 2, 2023
(via @SNYtv)pic.twitter.com/0mnZKpls1Q
メッツは千賀に大きな信頼を寄せている。千賀のデビュー戦はそれを裏切らなかった。次回の登板は4月8日(同9日)に予定されている。対戦相手は同じだが、今回は本拠地デビューになる。シティー・フィールドでの快投ショー再演が待ち遠しい。
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