大谷翔平のFA交渉はどうなる? 保証額約650億円+出来高が最低ラインか

Ryan Fagan

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大谷翔平の次の契約がどうなるかは常に大きな話題を呼んできた。

その中でも一際興味を集めているのが、契約の総額だろう。球史で最大の金額になることについては疑いの余地はない。最低でも10年以上の期間で5億ドル(約725億円、以下すべて1ドル145円で計算)を越える総額になるのか。それとも6億ドル(約870億円)、もし億万長者のオーナーが争奪戦に加わると7億ドル(約1015億円)の可能性もあるのではないか。

交渉の材料はすべてテーブルの上に乗っているようだ。

こうした議論には誰もが胸を躍らせていた。野球ファンは最終的な数字がどのようになるのかを楽しみに待っていた。しかし、大谷の右肘靱帯(じんたい)に損傷が発覚した。球界を揺るがした悲報である。大谷の次の契約を決める最重要部分が不透明になってしまった。

出来高、オプトアウト、そしてボーナスなどが契約に含まれるはずだ。あるいは我々がかつて聞いたことがないような新規の内容が加わるかもしれない。大谷が前例なき地平に足を踏み入れることはこれが初めてではない。

筆者の推測では大谷の契約内容は次のようになる。10年間、保証額4億5000万ドル(約650億円)、それに球団側オプションが1年3000万ドル(約43億5000万円)と1000万ドル(約14億5000万円)のバイアウトが付く。加えて、2年、4年、そして6年ごとに選手側にオプトアウトが与えられる。投手としての出来高金額が合計で1億8000万ドル(約261億円)が健康状態に応じて加算される。

以下はその詳しい内容である。

大谷の次の契約における出来高ボーナス

球団側として出来高ボーナス制は好ましい方法だ。選手がケガなくボーナスが発生するだけの成績を挙げるとすれば、それは短期的にも長期的にもチームに恩恵をもたらす。一般的に出来高は2つの要素で構成される。出場回数、あるいは個人賞である。

MLBの労使協定では成績によって出来高を決めることを禁じている。たとえば、打率3割、本塁打35本、または200奪三振などのことである。代わりに用いられるのは出場回数だ。不安要素(故障歴、年齢など)がある先発投手は投球イニング数や先発登板数に応じてボーナスを受け取ることがある。打者の場合は健康を保つことで到達できる異なった目標数値、たとえば500打席、125試合出場、などが設定される。こうした目標は簡単に達成されることがある。

多くの選手は個人賞によって出来高ボーナスを受け取る。オールスター選出、MVPやサイヤング賞を獲得することなどである。それらより「低い」レベルの賞には、たとえばゴールドグラブ賞、シルバースラッガー賞、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズやワールドシリーズのMVPなどもある。

大谷にとって、打者としての出場回数は問題にはならない。しかし、投手としては交渉の対象になるだろう。大谷の過去3シーズンの先発登板数と投球イニング数は以下の通りである。

2021: 23 先発登板・130 回1/3 
2022: 28 先発登板・166 回
2023: 23 先発登板・132 回

推論を述べるとすれば、ボーナスは投球イニング数80回から始まり、25回から30回ごとに段階的に増えるのではないか。先発登板数を基準にする方が好まれるかもしれない。その場合は12試合から始まって、17,、23、 28という具合に増えるだろう。

そして、これらによって発生するボーナスは小さなものではない。25万ドル(約3625万円)ごとのような話ではないのだ。段階目標に達するたびに数百万ドル(数億円)規模のボーナスが発生するだろう。大谷がケガなく投手として働くことができれば、1000万ドル(約14億5000万円)単位の年間契約額にそうしたボーナスが毎年加算されていくことになる。

大谷の契約には個人賞による出来高ボーナスも含まれるかもしれない。しかし、今回の負傷によって、その可能性は小さくなった。

大谷がオプトアウト権利を手にするわけ

オプトアウトとは選手が契約期間の残りを破棄し、フリーエージェントになることを選ぶ権利である。

恐らく、大谷は最低でも1回、あるいは複数回のオプトアウトが含まれる契約を希望していただろう。エンゼルスについてはポジティブなことしか口にしていないが、過去6年間一度もプレーオフ進出に近づいたことさえない状況を大谷は繰り返したくはないはずだ。特定のチームに10年間固定されることを望まないだろう。どんなチームでも不振に陥ることや、再建モードに入ることはあり得るからだ。

そうすると、2シーズン終了後のオプトアウトは合理的に見える。もし大谷がトミージョン手術を受けることになれば、2024年シーズンは投げることはできない。マウンドに戻ってくるのは2025年になるかもしれないが、それすらはっきりしない状況だが、その頃には大谷自身も、そして野球界全体も、大谷がどのような投手になるかが分かってくるはずだ。だから、2年がいいのではないか。

または、2年契約だけを結んで、2025シーズン終了後にフリーエージェントになるという選択肢はあるだろうか。大谷にとってはリスクの高い方法だ。最悪のシナリオは大谷の肘が元に戻らず、あの圧倒的な投球ができなくなることだ。2025年シーズン終了後に「ただの」打者としてフリーエージェント市場に出るとしたら、大谷の価値は下落を免れない。大谷の契約は現在の「二刀流選手」であることが大前提なのだ。

別の故障が発生する可能性もある。それによって大谷が投手と打者の両方をこなせなくなるかもしれない。その意味において、大谷が短期の契約を望む理由はない。そのためのオプトアウト権利なのである。

契約期間後半にオプトアウトを行使するかどうかは、その時のチーム状態によって決まるだろう。

予想される契約オプション

オプトアウトは契約期間の前半に発生し、後半にはオプションが行使されることが多い。短期間の例は昨オフシーズンにコディ・ベリンジャーがシカゴ・カブスと結んだ1年契約プラス2024年の相互オプションだ。長期間の例はジョーイ・ボットがシンシナティ・レッズと結んだ10年契約プラス2024年の球団オプションである。

オプションには3つの種類がある。

① 球団オプション:球団が選手の契約を更新するかどうかの選択権があること。球団が更新しないときめたとき、バイアウトが支払われる。

② 相互オプション:球団と選手が合意することによって契約が更新される。どちらかが拒否した場合、選手はフリーエージェントになる。

③ 選手オプション:選手に決定権がある。

今回の負傷があっても、大谷の契約は最低でも8年か9年以上になることはほぼ間違いない。理由は上に述べたとおりだ。1年か2年のオプションが付く可能性は大きい。その場合、年間契約額は前年より低くなり、しかしバイアウトの金額は高くなるだろう。オプションのシーズン前に、仮に大谷が健康とはほど遠い状態であっても、大谷の市場価値からすると、球団側がオプションを拒否することは考えにくい。

原文: Shohei Ohtani's free-agent contract: Look for $450M guaranteed, with incentives for more
翻訳:角谷剛
 

Ryan Fagan

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Ryan Fagan, the national MLB writer for The Sporting News, has been a Baseball Hall of Fame voter since 2016. He also dabbles in college hoops and other sports. And, yeah, he has way too many junk wax baseball cards.