大谷翔平はアーロン・ジャッジのホームラン記録「62本」を超えられるか? データで分析してみた

Edward Sutelan

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大谷翔平がまたしても信じがたいことをやってのけている。

このロサンゼルス・エンゼルスの二刀流スーパースターは6月27日(日本時間28日)の試合で2本の本塁打を打ち、現在メジャーリーグの本塁打王である。この日2本目の本塁打は、爪が割れたために投手を降板した直後に打ったものだった。それだけではない。投手としては10個の三振を奪い、シーズン奪三振数を127に伸ばし、この分野でもケビン・ゴーズマン(トロント・ブルージェイズ)に次ぐアメリカン・リーグ2位なのである。

日本時間6月28日時点で、大谷の本塁打数は28本である。言うまでもなく素晴らしい数字であると同時に、多くの人にある期待を抱かせる。62本というアメリカン・リーグ記録を樹立した2022年のアーロン・ジャッジを抜けるのか、だ。

大谷は極めてタフな選手だ。ここまで79試合に出場しており、この数字でもメジャーリーグ全体で2位である。今の驚異的なペースで本塁打を量産し続ければ、シーズン62本はまったくの夢物語ではないように思える。

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そこで、大谷の本塁打ペースを分析し、2023年にどこまで記録を伸ばすことができるかを予測した。さらに昨シーズン同じ時期のジャッジと比較し、大谷が60本台に到達する可能性も探ってみた。

大谷のここまでの成績は?

6月27日(同28日)時点で、大谷の本塁打数は28本である。すでに大谷自身がメジャーリーグで記録してきたシーズン本塁打数で3番目の多さだ。2021年には46本の本塁打を打ち、アメリカン・リーグ最優秀選手賞(MVP)を受賞した。昨シーズンは34本で、同賞投票ではジャッジに次ぐ2位だった。

夏に入り、大谷のパワーは気温とともに増してきたようだ。6月ここまでにメジャーリーグ最多である13本の本塁打を打った。4月は7本、5月は8本だった。

パワーが増しているのは投手としても同じだ。6月ここまでの奪三振数は37個である。
 

『Opta Stats』によると、大谷翔平はメジャーリーグ史上初めて1か月間に本塁打を10本以上打ち、同時に35個以上の三振を奪った選手である。同じ月ではなくても、月間本塁打10本以上と月間奪三振35個以上をキャリアで一度でも記録したことがある選手は他にひとりしかいない。ベーブ・ルースだ。

大谷の本塁打ペースがこれからも持続すると信じられる理由は多くある。野球データ解析サイト『Fangraphs』によると、大谷のHR/FB(フライが本塁打になる確率)は29.5%である。キャリア通算の27.1%より2.4%だけ高い。フライそのものを打つ確率はキャリア最高の40.9%であり、強打率(17.7%)はMVPシーズンの2021年(22.3%)にやや劣る。

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大谷はこれから何本のホームランを打てる? データで分析

大谷がエンゼルスに留まってシーズン残り81試合に出場し、現在のペースで打ち続けたら、162試合での合計本塁打数は50本ちょうどになる。

しかし我々はこの予測に本塁打数に影響するいくつかの要因を加えてみた。それには球場による違いや野球というゲームに関係した他の要素が含まれる。

スポーティングニュースは大谷が2023年シーズン残りで打つ本塁打数をシミュレーションしてみた。まず残り81試合すべてに出場すると仮定した。大谷がここまで79試合に出場していることと、直近2シーズンで最低157試合以上に出場していることが根拠だ。

シミュレーション・モデルは大谷の全キャリアを通じたデータを使用し、最近のデータを重視した。さらにいくつかの要因を加味して、今シーズン残りのすべての試合で現在28本の本塁打数がどれだけ伸びるかをシミュレートした。そのモデルは20,000回に及び、可能な限り大きなサンプルから結果を予測した。
 

チャートを見ての通り、予測値はかなり分散している。残り81試合の長丁場では、様々なことが起こり得るからだ。平均値ではモデルは大谷の本塁打数を48本としている。過去の例からすると、大谷はシーズン後半に失速すると見られているためだ。しかし、最も可能性が高いとされる49本でも、その確率は9.1%に過ぎない。

だからと言って、大谷の本塁打数がそれ以上にならないと断定はできない。いくつかのモデルでは最多で68本に及ぶ可能性も示唆しているのだ。ただし、その確率は低い。63本に到達する確率は0.1%、60本台に到達する確率は0.6%である。

2023年のデータのみを使用したシミュレーションでは、予測本数はかなり高くなる。平均値では56本となり、最多では76本(メジャーリーグ史上シーズン最多記録を3本上回る)の可能性さえある。それでもジャッジを抜く63本に到達する確率は10.5%に留まる。

今シーズンここまでに出場した79試合ではサンプルとしては小さい。我々はそれより大谷の全体像から今後の好不調を占ってみたい。

最終的にジャッジを上回る可能性は高くはない

ジャッジが2022年に記録した62本の本塁打に到達する可能性を感じさせる選手は多くない。大谷はそのひとりだ。しかし、シーズン60本塁打という記録がとてつもなく困難なのには理由がある。

大谷の2023年シーズンここまでの驚異的な本塁打ペースをもってしても、昨シーズンのジャッジに比べると、僅差ではあるが下回っているのだ。2022年シーズンの中間地点でジャッジの本塁打数は29本だった。日本時間6月28日時点の大谷は28本である。

一見すると今年の大谷は昨年のジャッジと似たペースであるように見えるが、ジャッジはシーズン後半に大爆発し、そこから33本の本塁打を打った。

そこで、大谷の今シーズンの本塁打ペースをシミュレーションの最多モデル、平均モデル、最少モデル、そしてジャッジの2022年と並べてみた。
 

はっきりさせておくが、最少モデルが起こる確率は非常に低い。大谷の6年のキャリアで10試合以上続けて本塁打が出なかったことは9回しかない。最長は24試合連続無本塁打だ。最少モデルは10試合連続無本塁打が4回あり、そのなかに17試合以上連続が2回あると仮定している。故障でもない限りは、それが起こる可能性は極めて低い。

最多モデルは大谷がシーズン残りをほぼジャッジと同じペースで打ち続けると仮定している。ただしジャッジはアメリカン・リーグ記録更新が近づいたシーズン終盤にやや失速した。7試合連続で本塁打が出ず、最終14試合でわずかに2本の本塁打だった。

平均モデルは大谷が今シーズンここまでのペースをほぼ維持すると仮定したものだ。好不調の波がいくつかあり、結論としては本塁打数は現在から20本増えるのみと予測している。

大谷の本塁打数を追いかけることは今シーズン後半の大きな楽しみになる。ただ合計本塁打数については期待値を低めにしておいた方がよいだろう。野球界のステロイド時代が過去になった現在、記録更新は稀有な出来事だ。


原文: Shohei Ohtani home run pace: Tracking how Angels phenom compares to Aaron Judge's 2022 AL-record season
翻訳:角谷剛
 

Edward Sutelan

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Edward Sutelan joined The Sporting News in 2021 after covering high school sports for PennLive. Edward graduated from The Ohio State University in 2019, where he gained experience covering the baseball, football and basketball teams. Edward also spent time working for The Columbus Dispatch and Cape Cod Times.