「初球からど真ん中。何を考えているんだか」。ホームランをポカスカ打つ大谷翔平に対するメジャーリーガー投手への日本球界の“あきれた声”である。日米投手の攻め方はこうも違う…。
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太平洋挟んで“ショータイム”
ホームランの量産に加えて盗塁数がものすごいスピードで増えた。打って、走って。まるでスーパーマンのような活躍ぶりである。
「いまのメジャーリーグでもっとも話題になる選手」
大谷番の記者はそう言う。無安打の日でもそれはそれでニュースになるから、気の休まるときがないそうである。
ドジャースのファンは、ロサンゼルスの誇り、とも自慢する。実況中継のアナウンサーは、大谷の一撃が外野席に放り込まれるたびに、そのときに備えていた刺激的な言葉を負けじとマイクに放り込んでいる。日本のメディアも負けていない。大谷の結果はニュースの枠を確保しているようで、打とうが三振しようが必ず伝えてくれる。
「古い例えで恐縮だが、カラスの鳴かない日はあっても、大谷のニュースは毎日お知らせしています」
テレビ局の話である。まさに太平洋を挟んで“ショータイム”。大谷は日米のメディアを完全に手中に収めている。
男vs男、大谷の圧勝
「オオタニは史上最高のバッターの一人だ」。ホームランを浴びた投手はそういう言い方をする。たとえリリーフ投手でも。究極の言い訳、か。
大谷は試合後の会見で多くを語らない。「うまく打てた」程度で、理屈を並べ立てて一打を誇ることはまずない。
驚くのは投手が初球からストライクゾーン、それも平然と真ん中あたり、大谷の得意とするコースに投げ込むことである。まずボールを意識的に投げて様子を見るようなピッチングは滅多にお目にかかれない。
男vs男の勝負といった感じである。メジャーリーガーは確かに、勝負を避け、逃げることは恥と思っている。ファンから「意気地なし」「チキン野郎」と小バカにされるからで、なじられるくらいなら打たれても対決だ、ということなのだろう。映画の西部劇ではガンマンが向かい合って勝負をするシーンがあるが、投手たちにはそんな意気がある。
来日した好打者にこんな例があった。待球主義が特徴で投手に何球か投げさせてから打つというタイプだったのだが、ファンは初球から打ちにいかないスタイルが気に食わないらしく、見逃すたびにブーイングを浴びせられたというのである。ファンから支持を得られないところから日本行きとなったという。
打者は初球から振って行くし、投手もいきなりストライクを投げ込んでくる。
大谷にとってはいきなり好球を投げてくるのだから狙いやすい。ホームランボールを見逃さない正確さが本数に表れている。ガンマンを次々と撃破しているニッポン男児大谷は絵になる。
日本の投手はバットを振らせない
大谷のすごさを認める一方、メジャーリーグ投手の攻め方に日本の投手経験者は首をかしげる。
「ホームランバッターに初球からストライクを投げるというのは、いったいどういうことなのか、理解できない」
こういう話である。かつてのエースがテレビで「抑える自信はある」と発言しているし、日米の違いは正反対という声は多い。
かつて現役メジャーリーガーをはじめ大物外国人選手が来日したとき、日本の投手はどう対応したか。
代表的な戦法は「バットを振らせないこと」だった。四球で歩かせ、打者はそれで調子が狂い、ボール球を無理やりスイングし、不成績に。日本流にやられて帰国することになる。四球攻めに遭い、そのやり方に抵抗し、バットを逆さに持って打席に立った大物選手もいたものだった。
阪神時代の江夏豊は、巨人のホームランバッター王貞治に対し、意識的にボールを3球投げてから勝負に出たことがあった。その3球の間に王の様子を読み取るのである。
こういった駆け引きは日本の得意とするところで、エースと強打者の対戦は緊張したものだった。
メジャーリーグ投手の対大谷は球威と変化球勝負で、駆け引きはうかがえない。また投手の牽制球は日本投手より劣るから盗塁はし放題の状態に見える。メジャーリーグは“見える勝負”なのに対し、日本は“見えない勝負”といってもいい。
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