MLBのギャンブルポリシーはどう規定されている?|水原元通訳賭博問題

Edward Sutelan

石山修二 Shuji Ishiyama

MLBのギャンブルポリシーはどう規定されている?|水原元通訳賭博問題 image

結局のところ、今シーズンもまたMLBの話題の中心は大谷翔平となっている。ただ、その注目のされ方はこれまでとちょっと違っている。

大谷の元通訳、水原一平氏が大谷の資金から「巨額の窃盗」を行ったとされ、ドジャースから解雇されたためだ。水原氏はESPNのインタビューの中で賭博による負債を100万ドル(約1億5000万円、1ドル=150円換算、以下同)以上抱えていたことを認め、ESPNは総額が少なくとも450万ドル(約6億7500万円)に達していたと報じている。

[AD] Amazonで米大学NCAAグッズをチェック!

水原氏も大谷サイドも当初は、大谷が水原氏の負債を肩代わりしたと語っていた。だが後に、大谷は賭博の負債について全く知らなかった、水原氏が自分の立場を利用して大谷への話を作り上げていたと説明を変えている。大谷は3月20日の時点まで、自分の口座から資金がなくなっていたことに気づいていなかったと報じられている。

「メジャーリーグベースボールは大谷翔平と水原一平氏に関する嫌疑がメディアで報じられてから、本件についての情報収集を進めている。調査部門は本件を調査する正式なプロセスを今日の早い段階からスタートさせた」とMLBは3月22日付(現地時間)のプレスリリース内で発表している。

関連記事:大谷翔平の元通訳・水原一平氏の賭博問題はいつから始まっていた?|告発された水原氏の違法賭博をめぐる経緯

MLBは賭博を軽微な問題とはとらえていない。その歴史を紐解いても、球界を追放された選手のほとんどはリーグのギャンブルポリシーに違反した選手たちだ。MLB史上最多安打を記録したピート・ローズ(元シンシナティ・レッズ)は野球賭博を認めたことで追放処分となった。『シューレス』ジョー・ジャクソンを含む1919年のホワイトソックスの選手8名は、ワールドシリーズでの八百長によって追放処分を受けた。

水原氏は野球賭博はしてない、そして大谷は水原氏の賭博について知らなかったし、全く関与してないと主張している。それでも、リーグでは調査の準備を進めている。それはなぜか。

ここではMLBのギャンブルに対するポリシーについて紹介していく。

MLBのギャンブルポリシーはどんなもの?

MLBのギャンブルポリシーは広範囲にわたっている。近年スポーツ賭博が合法化され、あらゆるスポーツリーグによって認証・支持されている中では必要なものだ。

最初の規定はルールの21条にある。ここでは、その対象となる試合が直接的に自らと関係のない試合であっても、すべての選手、チームおよびリーグ関係者・従業員が野球の試合に対する一切の賭博を行うことを禁止している。懲罰は1年間の資格停止、関係のある試合に対して賭博を行った場合には永久に資格停止となる。

違法なブックメーカー、その代理人を通じて賭博を行った場合、懲罰はロブ・マンフレッド・コミッショナーの裁定によって決められる。自身で違法なブックメイキングを行った場合、そのサポートをした場合には、懲罰は1年間の資格停止となる。規定によれば、違法なブックメーカーとは「賭博行為が違法とされている区域で行われた賭博運営の一部として、人々から賭け金を受け取る、賭けを行う、取引するといった行為を行う人物」とされている。

この違法なブックメーカーに関する部分が水原氏はもちろんのこと、もしかすると大谷もリーグの処分対象となりうる規定だ。水原氏は、カリフォルニアのブックメーカー、マシュー・ボイヤー氏を通じて賭博を行っていたことを認めている。そして、ボイヤー氏は今現在、IRS(米国国内国債入庁)の調査対象となっている。

水原氏は野球を賭けの対象にしたことは一度もない、海外サッカー、野球以外のスポーツに賭けていたと説明しているが、ボイヤーはカリフォルニア州のブックメーカーであり、カリフォルニア州は賭博が禁止されている。ボイヤー氏との関係性はMLBの厳しい調査対象となるだろう。

関連記事:大谷翔平が資格停止処分を受ける可能性 MLBの調査は何を調べているのか|水原元通訳賭博問題

また、MLBのギャンブルポリシーの中には、直近のCBA(労働協約)の一部として追加された、選手のみを対象とする項目がある。リーグ、選手会ともに、この追加規定は「合法なスポーツ賭博が普及する中で我々のスポーツを保護する」ために必要なものとしている。

添付資料60の中には、野球の試合について、少年野球を含む全てのアマチュア、プロの試合を選手が賭博の対象とすることを禁じている。他の選手に代わりに賭けてもらうことも認められない。禁止されている賭博の対象にはオールスターゲームやホームランダービー、プレイオフの結果、選手の成績やドラフトの結果なども含まれている。選手たちはまた、ファンタジーベースボール(実際の試合結果に基づいて加算されるポイントを競うシミュレーションゲーム)やデイリーファンタジー(ファンタジーベースボールの一種でシーズンを通じてではなく、短期間で行われるもの)への参加も禁じられている。試合の結果を操作すること、意図的に影響を与えることも禁じられている。

[AD] MLBグッズをAmazonでチェック!

一方で、賭博が合法とされている地域であれば、選手たちは野球以外のスポーツに対して合法な賭博を行うこと、野球以外のファンタジースポーツに参加することは認められている。

このほか、選手たちには以下のようなルールが課せられている。

  • 賭博に影響を与えるような秘匿情報を漏らしてはならない
  • スポーツ賭博を運営する会社の所有権を1%を超えて保持してはならない
  • スポーツ賭博を運営する会社の役員、取締役、従業員になってはならない
  • スポーツ賭博を運営する会社の所有権を保持する場合にはコミッショナーに情報公開しなくてはならない

選手はスポーツ賭博を運営する会社の所有権を大量に保有することはできないが、特定の野球の試合、イベントに関連しない場合であれば、その会社を広告宣伝することはできる。

※この記事はスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。翻訳・編集:石山修二

本サイトに掲載されているリンクから商品の購入やサービスの契約をされた場合、本サイトが収益を得ることがあります。

Edward Sutelan

Edward Sutelan Photo

Edward Sutelan joined The Sporting News in 2021 after covering high school sports for PennLive. Edward graduated from The Ohio State University in 2019, where he gained experience covering the baseball, football and basketball teams. Edward also spent time working for The Columbus Dispatch and Cape Cod Times.

石山修二 Shuji Ishiyama

石山修二 Shuji Ishiyama Photo

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター