米野球殿堂:ボンズとクレメンスは2021年こそが殿堂入りの最大のチャンス

Joe Rivera

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バリー・ボンズとロジャー・クレメンスの2人に残された時間は少ない。

禁止薬物の使用を認めた2人は野球殿堂入り投票の候補になるのは2021年で9回目になる。過去数年において、この2人は投票者の支持を受けてきたとは言い難い。2人とも殿堂入りの資格を満たすには充分すぎるほどの成績を挙げたことは明らかなのであるが、ステロイドを摂取していたとの疑いが彼らの伝説を曇らせており、あるいは永遠に殿堂入りが叶わないかもしれない。

だが、2021年の殿堂入り投票は彼らに有利に働くかもしれない。この年から初めて投票対象となる予定の選手たち及び引き続き投票対象となる選手たちの名前を見る限り、さほど有力な候補が残っているとは言えないからだ。次にクーパーズタウンへ集まる面々の中では、ボンズとクレメンスの名前が浮かび上がってくるかもしれない。

それとは別に、BBWAA (全米野球記者協会)がより強く注目すると思われる候補者が何人かいる。

現時点において2021年の殿堂入り投票で有力候補になるだろう名前を挙げてみよう。

 

ボンズとクレメンスを巡る状況

バリー・ボンズとロジャー・クレメンスはともに殿堂入り候補になってから9年目を迎える。候補資格が有効なのは10年であることを考えると、2人に残された時間は少ない。だが、2021年に有資格初年度となる選手のなかにさほど有力な候補がいないことが彼らに有利に働くかもしれない。各投票者に許された投票可能な最大10枠に余裕が生まれると思われるからだ。

ボンズとクレメンスの得票がどのようになるかは依然不明ではあるが、ここ数年は少しずつではあるが増加傾向にある。2016年のボンズの得票率は45.3%で、クレメンスは46%だった。それ以来、2人とも着実に得票率を伸ばしつつあり、60%に近い位置まで来た。さらに投票者の心情に変化を起こさせる何かが必要だろう。

野球殿堂なるものをどのように用いるかが重要なカギとなるだろう。統計の数字や成績はもちろんのこと、あるシンプルな質問を問いかけなくてはいけない。「この選手を抜きにして野球の歴史を語れますか?」だ。おそらくは、ボンズもクレメンスも、それぞれのポジションにおいて野球史上最高クラスの成績を残している。つまりこの問いへの答えはノーだ。

歴史的に見れば、野球はずっと純粋なものではあったとは言い難い。もし私たちが歴史から目を背け続けたとしたら、私たちは歴史から何も学ばず、また何も伝えることができなくなる。

 

カート・シリングは最後に笑うか?

シリングが未だに殿堂入りを果たしていないことにはいくつかの理由がある。その殆どは野球とは関係ない、しかも引退後に起きたことでもある。

シリングは通算79.8のWARを積み上げ、生涯防御率は3.46, FIPは3.23、3,116個の三振を奪い、そしてサイ・ヤング賞候補トップ5に3回選ばれ、そのうち2回は第2位だった。この数字だけを見れば、シリングは既に殿堂入りしていなくてはおかしい。シリングの言動を非難する人はいるが、そのことで先発ピッチャーとしての価値を低く見積もるべきではない。

シリングもまた殿堂入り候補になってから9年目を迎える。この4年間に渡って得票を増やしてきている。ワールドシリーズ優勝を3回経験し、アリゾナ・ダイヤモンドバックス在籍時の2001年ワールドシリーズではニューヨーク・ヤンキースを相手に大活躍を見せ、シリーズMVPに輝いたことさえもある。投票者たちはシリングを長い間候補者に留めることで、世間の目から引き離そうとしているようにも見える。

 

注目すべき初の有資格者たち

マーク・バーリー: バーリーは記憶に残る以上のピッチャーであった。通算WARは60.1を数えるが、奪三振数や防御率は殿堂入りレベルとは言えない。完全試合とノーヒッターを達成しており、そのことが後押しするだろう。

A.J.バーネット: バーネットは好調の時は球界きってのピッチャーだった。問題は好不調の波が大きかったことだ。通算で2500個以上の三振を奪っているが、263本のホームランも打たれている。これは9イニングに1本近い数字になる・

マイケル・カダイアー: "Cuddy"の愛称で知られたカダイアーはツインズの外野手を長い間守り続けた選手ではあるが、守備力にはやや難があったし、攻撃面でもパワーに欠けていた。あまり有力な候補とは言えないだろう。

トリー・ハンター:ハンターは素晴らしいセンターだった。数々のファインプレーで記憶に残る。だが、DRS(守備防御点)で見る限りは不安定な外野手であったようだ。打撃はパワーに溢れ、通算で353本のホームランを放ち、wRC+が100を下回ったのは2001年から2014年までの間に1回だけだ。ハンターは面白い存在だが、有資格初年度での殿堂入りを果たすほどの選手ではないだろう。

ティム・ハドソン:ハドソンは今年の有力な候補にはなるだろう。キャリアを通じて良いピッチャーであり続けたが、これといって特筆するほどの数字は残していない。通算222勝、2,080個の奪三振、そしてサイ・ヤング賞候補トップ5に2回入ってはいるのだが、殿堂入りとするには物足りないともいえる。

ニック・スウィッシャー:スウィッシャーはエキサイティングな人気者として記憶されるべき選手だ。全盛期はヤンキース時代の2009年から2012年までだが、殿堂入りに値するような成績ではなかった。

バリー・ジト:ジトは2000年代初頭のオークランド・アスレチックス時代に伝説となった先発ピッチャー・トリオの1人だったときが最盛期だった。大きく縦に落ちるカーブを武器に、2002年のサイ・ヤング賞を受賞し、映画『マネーボール』で描かれたアスレチックスの重要なピースだった。そしてその後数年間もアメリカンリーグ最高の先発投手であり続けた。サンフランシスコ・ジャイアンツに移ってからの2007年から2013年までの成績はぱっとしない。その間の防御率は4.62, ERA+は87だ。

 

2021年に引き続き投票対象となる有力候補

ビリー・ワグナーは圧倒的なリリーフ投手だった。セーブ数などの記録はマリアーノ・リベラには及ばないが、ワグナーは通算で1,196個の三振を奪っている(ポストシーズンを除く)。それはリベラより23個多いだけだが、ワグナーはそれを380イニング少なくて達成しているのだ。もっと評価されるべき選手であろう。

300以上のホームランを放ち、かつ200以上の防御点を挙げた選手たちは以下の通りだ。エイドリアン・ベルトレアンドリュー・ジョーンズ。この2人しかいない。ジョーンズの選手生命は短すぎたかもしれないが、もっと得票があっても然るべき選手だ。攻守両面に優れた1900年代と2000年代初頭における最高選手であったし、あるいは史上最高かもしれない。

ボビー・アブレイユは通算WARが60を数えた、息の長い好選手だった。選球眼に長け、通算の出塁率は.395であったし、守備も堅実だった。素晴らしい選手ではあったことは間違いないが、史上最高と呼ぶほどでもない。

トッド・ヘルトンはこれから注目するべき名前だ。17年間に渡ってコロラド・ロッキーズで強打を誇り、1塁手として守備も非常に良かった。キャリアの晩年は怪我に泣かされたが、得票に値する選手だ。

スコット・ローレンは素晴らしい守備の名手だった。DRS(守備防御点)175は驚異的な数字だ。殿堂入りした三塁手でDRSが100以上なのはマイク・シュミットだけなのだから。ローレンはキャリアを通して傑出したオールラウンド・プレイヤーであったし、投票者からもっと注目されるべきだろう。

アンディ・ペティットはポストシーズンで44回もの先発登板をしている。これはフルシーズン1年分以上に値する回数だ。2021年は3回目の投票対象となるが、少し状況は複雑だ。ステロイド全盛時代に投げていたため、ペティットの18年間のキャリア防御率は3.85(FIP は3.74)なのだ。どうやら10年間は候補でい続けることになるだろう。

500本以上のホームランを放った打者は27人いる。そのうちの18人は殿堂入りを果たしている。3人が現在候補者に入っており、2021年も引き続き対象者だ。サミー・ソーサゲイリー・シェフィールド、そしてマニー・ラミレスであるが、3人とも禁止薬物に何らかの形で関わっていたとしても驚きではない。

(翻訳:角谷剛)

Joe Rivera