MLB史上初の女性GMが誕生 マイアミ・マーリンズ新GMのキム・イングについて

Ryan Fagan

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今オフシーズンにトニー・ラルーサ、A.J. ヒンチ、そしてアレックス・コーラが相次いで雇用されたように、野球の首脳陣には古いタイプの人間がしばしば既定路線のように選ばれる。だからこそ、新しいタイプの人間に組織内のリーダーシップを任せようとする球団があることは非常に新鮮に写る。

11月13日の朝(日本時間14日未明)、マイアミ・マーリンズは新たなジェネラル・マネージャー(GM)職にキム・イング女史が就任することを発表した。前任者のマイケル・ヒル氏は今シーズをもって契約満了で辞任する。このことでイング氏はMLB球団の運営に携わる全ての女性の中で最高ランク位に就いただけではなく、MLB史上初の女性ジェネラル・マネージャーとなった。マーリンズのプレスリリースによれば、イング氏は北米にあるあらゆる男子プロスポーツ団体を見渡しても初めての女性GMだとされている。さらに、イング氏はMLBの中でも最高ランク位のアジア系アメリカ人でもある。

イング氏を採用したマーリンズの最高経営責任者(CEO)のデレック・ジーター氏もこの歴史的な決断を下したことで称賛されるべきだ。だが、何よりも重要なのはイング氏がこれまで長年築き上げてきた野球界における輝かしいキャリアと彼女の野球への情熱に目を向けることだ。また、「外部からの雇用」というフレーズが既に溢れているが、このことだけは明確にしておかなくてはいけない。イング氏が「外部者」である唯一の理由は女性をGMに雇う球団が他になかったからだ。けっしてイング氏の経歴や経験がこの職に不足しているわけではない。

これは話題作りのための起用ではない。マーリンズを良くするための起用に他ならない。

イング氏は野球界におけるキャリアのほとんどで裏方に回ってきた。野球界内部では高い評価を得てきたが、一般には目立つことはなかった。2017年までにGM職の面接を7回も経験している。多くの野球ファンは彼女の名前を耳にしたことはないだろう。数多くの聞いたこともないGM補佐や野球関係者が「突然」出世してきたときのように。そこでイング氏を知るためのいくつかの事実をここに紹介しよう。

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キム・イング氏の経歴とは?

シカゴ・ホワイトソックス(1990-96): インターン生としてキャリアを開始し、いくつかの役職を上り、最終的には編成ディレクター補佐に昇進した。

アメリカン・リーグ事務局(1997): ウェイバーと記録部門ディレクター

ニューヨーク・ヤンキース(1998-2001): わずか29歳でヤンキースのGM補佐に当時の最年少で就任した。女性としてもこの職に就いたのは史上2人目だった。ジーター氏と一緒に働いたのはこのときである。ジーター氏はその頃スーパースターへの階段を上っている最中だった。ヤンキースはこの間、1998,1999、そして2000年にワールドシリーズを制覇している。

ロサンゼルス・ドジャース(2002-2011): ドジャースの球団副社長及びGM補佐に就任し、ニューヨークからロサンゼルスに住居を移した。ここでイング氏は球団経営に関わる広範囲な業務に携わった。「ジェネラル・マネージャーを補佐して、メジャー選手の獲得、サラリー仲裁の管理、そして日々の球団運用を担当した」とMLBのニュースリリースにはある。2005年には初めて他球団のGM職面接に臨んでいる。

MLB機構(2011-2020): ジョー・トーリ氏の部下として、野球業務担当上級副社長の職に就いた。ここでも幅広い業務を担当した。そのなかにはMLB国際部門の管理も含まれる。

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キム・イング氏はどこから来たのか?

イング氏はインディアナ州インディアナポリスで生まれたが、ニューヨーク近辺のクイーンズ、ロング・アイランド、ニュージャージで育った。シカゴ大学を卒業し、公共政策の学位を取得した。

 

キム・イング氏を知る人からの評価

デレック・ジーター氏(マーリンズのニュースリリースより):「球団オーナー主席のブルース・シャーマン氏及びオーナーグループに代わり、キムの素晴らしい知識の集積とチャンピオン・レベルの経験がマイアミ・マーリンズにもたらされることを期待しています。我々の球団運営チームにおける彼女のリーダーシップは我々の将来における成功への道に大きな役割を担うでしょう。そして、彼女は少年少女野球とソフトボールの発展に力を注いできました。このことは我々が地域の青少年スポーツを発展させ、南フロリダ全体のコミュニティに寄与しようとしている貢献度をさらに高めてくれるでしょう」

ダレン・ウィルマン氏(MLB研究開発ディレクター)のツイートより
キム・イングからは連絡を受けたことがあります。私が主宰する『Baseball Savant』サイトの説明を求めて、データやメトリックの解析について理解を深めたいということでした。彼女はとても話しやすい人で、野球と高度な統計学に深い知識を持っていました。マーリンズは素晴らしい人選をしました。

ダン・エバンス氏(元シカゴ・ホワイトソックスGM): 「キムは私が今まで出会った中で最も好奇心旺盛な心を持った人物でした。彼女はいつも我々が行っていることの理由について的確な質問をしてきました。その結果として、私は考えややり方を改めることもありました。彼女がここまで昇りつめてきたのは、彼女には経験から得た知恵、本から学んだ知識、そして誰にも教えることはできない強靭な精神力が備わっているからなのです」

ネッド・コレッティ氏(元ロサンゼルス・ドジャースGM): 「(サンディエゴ・パドレスとの面接の後で)私は彼女にこう言いました。これは君のせいではない。君は準備ができている。君に必要なのはチャンスと君を信じてチャンスをくれる人物だけだとね。あの当時は彼女がコントロールできることではありませんでした。彼女はあの職に就くためにできることはすべて行っていました。彼女はこのチャンスに相応しい人物です。ただ彼女にチャンスを与えて、それを実現させようと思う誰かが必要なのです」

(翻訳:角谷剛)

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Ryan Fagan, the national MLB writer for The Sporting News, has been a Baseball Hall of Fame voter since 2016. He also dabbles in college hoops and other sports. And, yeah, he has way too many junk wax baseball cards.