MLBチームが「ルール・ファイブ・ドラフト」を信頼し続けるワケ(前編)

Shlomo Sprung

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シーズンは開幕したが、その直前、MLB各チームは25人ロースターを決定するのに最も頭を悩ませる時期を経験する。

選考される選手の中には、毎年12月のMLBウィンターミーティング最終日に行われるルール・ファイブ・ドラフトで獲得された選手も含まれる。ルール・ファイブ・ドラフトには一連の規定があり、40人ロースターに登録されていない選手や、マイナーリーグで最低4~5年は在籍した選手でないと指名対象にはなれない。さらに、ルール・ファイブ・ドラフトで獲得した選手は、翌年のシーズンを通して25人ロースターに登録しなければいけない(獲得される選手はダブルAより上のステージでプレーした経験のない選手がほとんど)。または、5万ドルを支払えば元のチームに選手を返還することもできる。

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選手の移籍にこれだけ複雑な制約があるとなれば、ルール・ファイブ・ドラフトで獲得した選手が活躍する確率が低いことにも驚きはない。昨シーズン、ルール・ファイブ・ドラフトによってメジャーの舞台へ駒を進めた選手は18名。そのうち、2017年に活躍と呼べる働きができた選手はわずか5人だ。そして、「FanGraphs」のデータによるとWAR-0.7以上の結果を残せた選手は1人もいない。

それでもMLBチームがルール・ファイブ・ドラフトで選手を獲得するのはなぜだろうか?

我々はMLBチームの重役2名に話を聞き、依然としてルール・ファイブ・ドラフトが重要な理由や、ルール・ファイブ・ドラフトで獲得する選手の調査方法、そして、チームが選手の選択肢を増やしていく過程について聞いてみた。

「私たちは、選手獲得のためにあらゆる手段を講じています」。カンザスシティ・ロイヤルズのアシスタントGM兼スカウト部門専務理事であるジーン・ワトソンはそう話した。「ルール・ファイブ・ドラフトに向けた準備には、常に誇りを持っています。私たちにとっても有用な制度だと感じていますよ」。

ロイヤルズは12月のドラフトで2名の選手を獲得した。右腕投手のブラッド・ケラーとバーチ・スミスだ。両者ともにチームの開幕ロースターに名を連ねる可能性は十分にあるが、現時点ではまだ未定であるため、ワトソンは彼らの成績面については語りたがらなかった。しかし、ロイヤルズは、オールスター出場のリリーフ投手ホアキム・ソリアや、投手ネイト・アドコックなど、ルール・ファイブ・ドラフトで質の高い選手を獲得したという。そして、ルール・ファイブ・ドラフトがチームにとっての利益を生む間は、これからも活用し続けるつもりだという。

ナショナル・リーグのある幹部(最近のルール・ファイブ・ドラフトの交渉に直接関わっていたため匿名希望)は、チームがこういう方法で選手を選ぶのはデメリットがほとんどないからだと言う。

いわく、ドラフトで選手を獲得するのにかかる10万ドル、選手を元のチームに戻すのにかかる5万ドルは大した額ではなく、「何らかの見込みがある選手をお試しできる、というのが最適な表現だと思う」と言う。

これにはワトソンも同意した。

「うまくいかなければ選手を戻せるというセーフティーネットがある」

もちろん、チームは各自異なった方法でスカウトをし、ルール・ファイブ・ドラフトの選手を評価している。どのチームも、スカウトの報告書や分析、選手の故障歴などを見るだろう、とナショナル・リーグの幹部は述べた。ワトソンにとって、ルール・ファイブ・ドラフトの選手探しは、6月のアマチュア選手のスカウトとは異なる。ルール・ファイブ・ドラフトの選手はすでにマイナーリーグでの実績があるからだ。

後編へ続く)

Shlomo Sprung