元記事:Let's embrace the Miller-Britton Theory of Playoff Bullpen Management
公開日:2017年10月10日
私たちはブルペン・マネジメントの進化を目撃している。それは美しいものだ。
この革命には、ひとつの基礎的な哲学がある。プレーオフでは、最も重要な場面で最高の投手をマウンドに送れ、というものだ。
シンプルだろう? もし先発投手が序盤に崩れたら、もちろんセットアッパーのデービッド・ロバートソンを3回1アウトから投入し、相手の攻撃を封じよう。負けたら終わりの試合で、もしかつてのサイヤング賞投手、デービッド・プライスが登板可能なら、もちろん3回から投入してスコアボードにゼロを並べよう。
これは決して難しいことには思えない。しかし野球の歴史において、多くの監督はこのアプローチを採用してこなかった。
こうしたムーブメントが巻き起こるにはキッカケが必要だ。そして、昨年クリーブランド・インディアンスがワールドシリーズ第7戦まで戦っていたときのアンドリュー・ミラーこそがキッカケだった。彼の監督であるテリー・フランコーナは、伝統的なブルペンの役割に捉われない投手起用で注目を集めた。アメリカン・リーグ地区シリーズ第1戦で、フランコーナはセットアッパーのミラーを5回、4-3でリードしている場面で投入した。左腕は2イニングを投げ、インディアンスは試合を5-4で勝利した。
それはもう1年前の出来事だが、その投手起用がいかに魅力的なものだったかは忘れられない。2016年のプレーオフでミラーは10試合に登板した。8回より前に登板したのが9度、そして最低でも2イニングを投げたのが7度。ワールドシリーズ第7戦でつまづくまでの9試合で計17イニングを1失点に抑えた彼の活躍がなければ、インディアンスは勝者が全てを制する試合で延長戦まで戦うことはなかっただろう。
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野球界は気付いたのだ。
ボストン・レッドソックス対ヒューストン・アストロズのア・リーグ地区シリーズ第1戦の前、アストロズのAJ・ヒンチ監督は、故障明けの若手投手のランス・マッカラーズをプレーオフでどのように起用するのか、尋ねられた。
「『アンドリュー・ミラーの役割』になるだろう」ヒンチは言った。「先月、同じことを100回くらい聞いたよ」
アンドリュー・ミラー・ルールの信条はこうだ。「イニングは関係はない」
もし相手チームが4回に1アウトで2人のランナーを出したら、優秀なリリーバーを送り込む。この場面で許す可能性のある得点は、7回や8回に許す得点と同じだ。そうだろう? 得点が貴重なプレーオフでは、試合な重要な場面で5番目か6番目に優秀なリリーフ投手を送り込んでいる余裕はないのだ。
誰もが登板可能だ。セットアッパー。クローザー。翌日の先発投手。数日前に登板したばかりの先発投手。誰もが候補になる。
繰り返すが、これは合理的なことだ。
この革命は、アンドリュー・ミラーが全てではない。全くない。革命のルーツを辿ると、2016年のア・リーグ地区シリーズ第1戦の5回にフランコーナがミラーを投入した、その数日前にさかのぼる。
トロントで行われた2016年のア・リーグワイルドカードゲームを覚えているだろうか。ホストのトロント・ブルージェイズは5回裏、ボルティモア・オリオールズ相手に2-2の同点に追いついた。試合は同点のまま7回まで進行し、8回、9回、そして10回へと突入した。オリオールズのバック・ショーウォルター監督(彼は素晴らしい野球人だ)は、従来の方法に固執した。敵地での延長戦ではリードを奪うまで、自軍のクローザーは使わない、というものだ。クローザーには、セーブがつく場面で出てきて欲しいのだ。
オリオールズのクローザーは2016年、球界で最高の投手だった。ザック・ブリットンはシーズンで防御率0.54、47度のセーブ機会を全て成功させた。しかし、このワイルドカードゲームではセーブ機会が現れることはなく、ショーウォルター監督はブリットンの代わりに、11回1アウトという場面で先発投手のウバルド・ヒメネスを投入した。ヒメネスはシーズンの防御率が5.44だった。
彼は3人のバッターと対戦した。デボン・トラビスとジョシュ・ドナルドソンがシングルヒットを放ち、エドウィン・エンカーナシオンがサヨナラ3ランを放った。オリオールズは、彼らのうち最高の投手を使うことなく、敗れた。それは、全く残念なことだった。
ザック・ブリットン・ルールの信条はこうだ。「いつも、いつも最高のピッチャーたちを使え」
最高の投手をマウンドに送らずに、プレーオフの舞台から姿を消すべきではない。もちろん、最高の投手でもときに失点する。今年のア・リーグ地区シリーズ第4戦、アストロズは8回と9回に3点を奪い、それはクリス・セールとクレイグ・キンブレルからの得点だった。レッドソックスの第1戦の先発投手だったセールは、この試合で4回からマウンドに上がり、8回に打たれるまでは完璧だった。レッドソックスファンは来たるオフシーズンを、この思い出と共に生きることができる。
しかし月曜日のシカゴでは、ナショナルズにとってこれに当てはまらないことが起きた。このチームはプレーオフに向けてブルペンを強化すべく、ショーン・ドゥーリトル、ライアン・マドソン、ブランドン・キンツラーという3人の実力あるリリーバーをトレードで獲得した。先発投手のマックス・シャーザーは6 1/3回を完璧に抑え(彼を降板させた決断については、また別の話だ)、ダスティ・ベイカー監督は3人のリリーバーで次の2イニングを乗り切ろうとした。先ほど名前を上げた3投手のうち、キンツラーだけがマウンドに上がった。
ナショナルズファンにとっては、納得のいかない場面だろう。試合は8回裏、1-1の同点で、2アウトランナー2塁だった。打席にはカブスの左打者アンソニー・リゾーが入り、左腕のドゥーリトルが登場かと思われた。しかし彼の代わりに、ベイカー監督はオリバー・ペレスを投入した。ペレスは今季50試合で防御率4.64の左腕である。
リゾーは外野にポテンヒットを放ち、代走のレオニス・マーティンは簡単に得点し、これが決勝点になった。それはポテンヒットだった。リゾーは鋭いライナーを放ったわけではない。しかし、この場面は試合でもっとも重要な打席であり、最高のリリーフ投手を出す代わりに(ドゥーリトルは今季ナショナルズで22回のセーブ機会で21度成功している)、ベイカー監督はプレーオフロースターに入るかどうかの背戸際にいた投手を起用した。
この投手起用は理解に苦しむ。
とにかく、そろそろこの新しいアプローチに名前をつけてよい頃ではないだろうか。「プレーオフのブルペン・マネジメントにおけるミラー・ブリットン理論(the Miller-Britton Theory of Playoff Bullpen Management)」と呼ぼう。
もし、この理論の名前「The MBTPBM」が発音しにくかったら? 大丈夫、問題ない。もし簡潔にしたかったら、シンプルに「MB理論」もしくは「ミラー・ブリットン」と言おう。
何と呼ぶにせよ、覚えておいて欲しい。