MLBの黒歴史:キング牧師の暗殺と、史上最悪の経営陣【最終回】

Sean Deveney

MLBの黒歴史:キング牧師の暗殺と、史上最悪の経営陣【最終回】 image

※トップ画像は、1962年、ワシントンD.C.スタジアムでオールスターゲームを観戦するケネディ元大統領

ホワイトは当時、フィラデルフィア・インクワイアラー紙に対し、「球界での黒人の道を切り開いたチームがあんな立場を取ることが私には腹立たしい。もちろん、オーナーのオマリーにとっては事件が何の関係もないことはみんな分かっている。彼は新参者のビジネスマンなのだ。お金にしか興味がない」と語っていた。

▶スポーツ観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう

最終的にオマリーは試合を水曜日に変更することに同意したが、インクワイアラーの記者フランク・ドルソンは「フィリーズの意義ある意思表示で始まったものが、厄介な失敗に変わってしまった」と言った。

「心は、政治より深く根ざしているんだ」

確かに、キング牧師暗殺についての球界の対応は失敗だったが、選手たちが声を上げず、キング牧師の葬儀日に試合をするというさらなる大失敗をオーナーたちにさせてしまっていたら、よりひどいことになっていただろう。

しかし、幹部陣はこの経験からあまり学んでいなかった。わずか2カ月後、ニューヨーク州上院議員ロバート・F・ケネディが暗殺されたが、球界の対応はまたしてもお粗末だった。「バット・デー」という人気企画をケネディ暗殺の翌週末に予定していたジャイアンツのオーナー、ホレイス・ストーンハムは、メッツがケネディに敬意を表して試合を辞退すると、憤慨した。

エッカートは、ケネディの葬儀後(結果的に遅れたのだが)に試合を開始してもよいと宣言した。メッツ担当の記者ジョー・トリンブルは、「“プレイボール!”と叫ぶ前に、シャベル一杯の最後の砂がお墓にかけられるまで待ってくれるとは、なんて優しい」と書いた。

しかし、選手たちはまた勝利した。ケネディの葬儀日の試合には反対だというメッツの姿勢を、元選手であるチームのマネージャー、ホッジスが支持したのだ。「選手たちがああいった形で意思表示をしてくれて大変うれしい」と彼は言った。「私は決して政治的な人間ではないが、感情はある。この心は、政治より深く根ざしているんだ」。

球界がキング牧師とケネディの暗殺で生み出した失敗に、ひとつ追記しておこう。エッカートはその年の終わりに解任され、やがてボウイ・キューンが後任となった。「エッカートを責めることはできない」と長年球界に勤めるある人物はスポーツ・イラストレイテッドに語った。「彼は懸命にがんばっているものの、これっぽっちも知識のない領域に巻き込まれているのです。もし、時計の修理を水道設備の修理業者に出しても直っていなかったら、 彼のことを思い出せば、その最大の理由が分かるはずです」。

原文:How MLB badly bungled its response to Martin Luther King Jr.'s assassination
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

Sean Deveney

Sean Deveney is the national NBA writer for Sporting News and author of four books, including Facing Michael Jordan. He has been with Sporting News since his internship in 1997.