MLBで次にノーヒットノーランを達成するのは誰か? プロファイリングから予想される8投手に共通する特徴とは

Edward Sutelan

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まだ5月ではあるが、どうやら今年はノーヒットノーランの当たり年のようだ。

今シーズンここまでで既に6人の投手が9イニングを1本の安打も許さずに投げ抜いた。マディソン・バムガーナーも7イニング制で行われたダブルヘッダーの1試合を無安打に抑えたが、MLBはこれを公式なノーヒットノーランの記録としては認定していない。それでも2021年シーズンは5月21日の時点で既に年間最多ノーヒットノーラン記録と並んでいる。この調子でいけば新記録となる7個目のノーヒットノーラン試合が生まれる可能性は高いと言えるだろう。

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ここで、今年ここまでの歴史的快挙を成し遂げた投手たちの名前を振り返ってみよう。ジョー・マスグローブ、カルロス・ロドン、ジョン・ミーンズ、ウェイド・マイリー、スペンサー・ターンブル、そしてコーリー・クルーバーだ。意外に感じないだろうか? そこにはジェイコブ・デグロム、ゲリット・コール、マックス・シャーザー、そしてダルビッシュ有の名前が含まれていないのだ。

そうなると、次にノーヒットノーランを達成する可能性があるのは誰なのだろうか? それを予想することは困難だ。ギャンブル(ベッティング)市場はデグロムやダルビッシュのような剛腕タイプに高いオッズを与えるだろう。しかし、上に挙げた7人の投手たち(バムガーナーも含む)のサンプルに目を向けると、彼らは相手チームを無安打に抑えるようなタイプには見えない。

このスピードボール全盛の時代において、ノーヒットノーランを達成した投手のなかに剛速球タイプと思われる者は1人もいない。速球の平均球速が時速94マイル(約151.3キロ)を越える投手はロドンだけだ。野球データ解析サイト『Baseball Savant』によると、ロドンのそれは時速95マイル(約152.9キロ)である。

そして全投球のなかで速球の割合が35%より大きいのはロドン、ミーンズ、そしてターンブルの3人だけだ。さらに速球が横方向に動く距離が3インチ(約7.6センチ)より短いのはマイリーとターンブルだけである。ミーンズはスライダーかカッターの割合が全投球の20%より少ない唯一の投手である。

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彼らは弱い打球率とボール球を振らせる率が平均以上であることも共通している。例外はバムガーナーだ。打球がゴロになる率が40%に満たない投手はミーンズとバムガーナーのみである。

つまり、彼らはバッターに打たせてアウトを取ることに長けた軟投タイプなのだ。このタイプに当てはまる他の投手は誰だろう? 今シーズン既にノーヒットノーランを達成した7人の投手のデータを元に、彼らともっとも似通ったタイプの投手を探してみた。そのリストを作成するにあたって採用した条件は以下の通りだ(5つのうち4つ以上該当する投手を選んだ)。

  • 速球が横に動く距離が3インチ(約7.6センチ)以上
  • スライダーかカッターの使用割合が全投球の20%以上
  • 速球の球速が時速94マイル(約151.3キロ)未満で、かつその使用割合が全投球の37%以下
  • 打球がゴロになる率が40%以上、弱い打球になる率が17%以上(『Fangraphs』のデータより)
  • ボール球を振らせる率が31%以上
     

シェーン・ビーバー - クリーブランド・インディアンス

言うまでもないことではあるが、ビーバーは穴馬とは呼び難い。昨年のアメリカン・リーグでサイヤング賞を受賞した投手であり、今シーズンももっとも圧倒的な成績を挙げている投手の1人であるからだ。しかしビーバーは時速160キロ以上の速球を投げるような他チームのエースたちとは少し違ったタイプだ。

ビーバーの速球は平均球速が時速93マイル(約149.7キロ)でしかない。しかしそのボールは激しく動く。横方向への移動距離は10インチ(約25.4センチ)だ。この動く速球はビーバーがもっとも多く投げる球種ではあるが、その割合は35.6%に留まり、ビーバーの主武器とは言えない。スライダーの割合は26.6%だ。バッターがボール球を振る率は32.3%、そして弱い打球になる率は16.9%である。ゴロを打たせてアウトを重ねるタイプなのだ。
 

前田健太 - ミネソタ・ツインズ

昨年はサイヤング賞候補になるほどの活躍を見せた前田だが、2021年シーズンここまでの防御率は5.26と苦しんでいる。それでも前田は2021年にノーヒットノーランを達成した他の投手たちともっともタイプが似ている投手の1人である。

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前田は速球を全投球の22.6%の割合でしか使わない。平均球速は時速91.1マイル(約146.6キロ)、横に動く距離は7.5インチ(約19.1センチ)。この速球でコーナーを丹念につく。主武器であるスライダーの使用割合は40.8%だ。全打球の42.3%がゴロになり、20.2%が弱い打球になる。さらにボール球を振らせる率は30.7%である。問題となるのは強打になる率が46%と高いことだろう。
 

ジョーダン・モンゴメリー - ニューヨーク・ヤンキース

モンゴメリーもまた今シーズンここまでは不安定ではあるが、2021年にノーヒットノーランを達成した投手たちと共通した特長を備えている。

モンゴメリーは4シーム速球を滅多に使わない。速球の球速は時速92.6マイル(約149キロ)で使用割合は12.1%に過ぎない。しかしその速球は横方向に7インチ(約17.8センチ)も動く。バッターにボール球を振らせる率は31.3%に及び、打球がゴロになる率は43%だ。強い打球になる率はわずかに35.3%と低い。防御率4.75のモンゴメリーだが、今シーズンここまでは不運だっただけかもしれない。
 

柳賢振 - トロント・ブルージェイズ

リスト入りしている他の投手たちに比べると、柳賢振の名前はさほど不自然には聞こえないだろう。柳は2017年から毎シーズンで防御率3.00未満を続けているし、昨シーズンの防御率は2.51だった。

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この34歳のサウスポーは打者を抑えるためには球速は必ずしも必要ではないことを示す完璧なサンプルであり続けている。速球の球速は時速89.5マイル(約144キロ)とかなり遅いが、横方向への移動距離は10.8インチ(約27.4センチ)にも及ぶ。全投球の28.6%をこの速球が占め、カッターの割合は25.5%である。打球がゴロになる率は48.5%、弱い打球になる率は16.4%だ。今シーズンで特筆すべきは、柳が打者にボール球を振らせる率が32.5%と高いことだろう。Baseball Savantによれば、この数値はMLB全体で上位12%の位置にある。

マーティン・ペレス、ボストン・レッドソックス

ペレスにとって今シーズンは飛躍の年になりそうだ。ここまでの防御率は3.40であり、2013年以来初めて4.00以下が視野に入っている。ノーヒットノーランもあり得るだろうか?

ペレスは4シーム速球を滅多に使わない。全投球のうち、その割合はわずかに9.9%だ。そしてその球速は時速93.3マイル(約150.2キロ)に過ぎない。しかしその速球は横方向に10.6インチ(約26.9センチ)も動く。全投球の34%を占める主武器のカッターの落差は22.6インチ(約57.4センチ)にも及ぶ。打球がゴロになる率は41.7%、弱い打球になる率は20.7%と非常に高い。ペレスのキャリアを通しても最高の数値だ。リスト内の他の投手たちに比べるとやや低い数値だが、それでもボール球を振らせる率は23.7%である。
 

ローガン・ウェブ - サンフランシスコ・ジャイアンツ

今シーズンここまで、ジャイアンツは驚くほど好調だ。その好調を支えている大きな要素は先発ローテーションがMLB全体でも指折りのパフォーマンスを見せていることだろう。その先発投手陣にあって、ウェブはエースと呼ばれる存在ではないが、その貢献度は大きい。そしてウェブの特長はノーヒットノーランを達成しそうなタイプにきわめて近いように思える。

ウェブの速球は時速93.1マイル(約149.8キロ)で、全投球のうち15.3%を占めるに過ぎない。もっともよく使う球種はスライダーで、こちらの割合は22.6%だ。速球は横方向に8.7インチ(約22.1センチ)動く。打者にボール球を振らせる率は31.5%、打球がゴロになる率は58.7%、弱い打球になる率は22.3%である。

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アレックス・ウッド - サンフランシスコ・ジャイアンツ

2014年にロサンゼルス・ドジャースのジョシュ・バケットとクレイトン・カーショウが達成して以来、1つのチームから2人の投手がノーヒットノーランを同シーズンで記録したことはない。ウッドとウェブのコンビは2021年にそれを達成できるだろうか?

ウッドは典型的な軟投型の左腕だ。このタイプはすでに今シーズン2個のノーヒットノーランを記録している。ウッドは時速91.6マイル(約147.4キロ)のシンカーが全投球の40%を占め、スライダーの割合は34.2%だ。そのシンカーはさらに横方向へも16インチ(約40.6センチ)動く。今シーズンの打球がゴロになる率は61.5%と驚異的に高く、弱い打球になる率も20.4%である。そして打者にボール球を振らせる率も35.5%と高い数値を残している。
 

ライアン・ヤーブロー - タンパベイ・レイズ

ヤーブローにとって最大の障壁の1つは試合に先発登板できるかどうか、そして完投できるか、かもしれない。レイズの首脳陣は今シーズンここまでヤーブローを5回先発させ、4回はロングリリーフとして起用した。5回の先発登板で6イニング以上を任されたことはない。もしノーヒットでイニングを重ねたら、あるいは試合の最後までマウンドを託されるかもしれないが。

ヤーブローもまた伝統的な4シーム速球をあまり使わない投手だ。全投球のうち、シンカーが11.4%、そしてカッターが44.4%を占める。シンカーは14.1インチ(約35.8センチ)横に動き、カッターは33.5インチ(約85センチ)落ちる。打者にボール球を振らせる率は28.6%、打球がゴロになる率は38.3%、弱い打球になる率は21.7%である。

(翻訳:角谷剛)

Edward Sutelan

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Edward Sutelan joined The Sporting News in 2021 after covering high school sports for PennLive. Edward graduated from The Ohio State University in 2019, where he gained experience covering the baseball, football and basketball teams. Edward also spent time working for The Columbus Dispatch and Cape Cod Times.