レッドソックスの吉田正尚はいかにして打撃不振を乗り越えたのか? 復調の要因と注目の数字を分析

Kevin Skiver

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NPBのオリックス・バファローズからMLBのボストン・レッドソックスにポスティングシステムで移籍した吉田正尚外野手は、今季開幕から打撃不振に陥っていたが、4月中旬以降目覚ましく復調している。吉田はいかにして調子を取り戻したのか? 本誌『スポーティングニュース』のKevin Skiver記者が、吉田の打棒復活について詳しく分析する。

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MLB開幕直後は明らかに打撃が不調だった吉田正尚

ボストン・レッドソックスがオリックス・バファローズからポスティングされていた吉田正尚外野手と5年総額9000万ドル(約120億円/1ドル=133円換算)の契約を結んだとき、多くのMLBファンや専門家たちは過大評価だと考えていた。

吉田は日本で打率.326、出塁率.419、長打率.528の通算成績を残した。申し分ない数字ではあるが、守備面にやや不安があるうえ、MLBに慣れるまでの調整期間があるだろうことから、レッドソックスはもっと効率のよい補強をするべきだと思われていたのだ。

シーズンが開幕してしばらくの間は吉田がそうした不安を払いのけることはできなかった。4月中旬までの打率は.167まで低迷し、とくにゴロの多さが目立った。レッドソックスがチームとしてさらに深刻な問題に直面していたため、幸か不幸か吉田の不調ぶりはあまり報道されることはなかった。しかし、吉田が打席で苦しんでいたことは明らかだった。

とくにシーズン直前のワールド・ベースボール・クラシック(以下、WBC)における吉田の大活躍は対照的だ。日本代表チームが戦ったWBCの7試合で、吉田の打撃成績は打率.409、出塁率.531、長打率.727、本塁打2本という爆発的なものだったのだ。

吉田正尚のMLB成績

吉田の打率は4月18日にシーズン最低へ落ち込み、そこから目覚ましく復調した。5月2日までの12試合で、打率.435、OPS 1.263である。その期間中のBABIP(本塁打を除くグラウンド内に飛んだ打球が安打になった割合)は.432と非常に高かったが、数字以上に特筆するべきことがある。吉田のスイングが専門家にも絶賛されているのだ。

WBCでアメリカ代表チームの監督を務めたマーク・デローサ氏がシーズンの早い時期に吉田のスイングがいかに優れているかを説明したことがある。下の動画の4分35秒時点でデローサ氏は吉田のスイングを詳しく解説している。

吉田正尚が不調に陥った原因

シーズン序盤に吉田が不調に陥った原因は、明らかにボールの上を叩いていたことだ。ボールはよく見えていた。4月18日までに三振は5個しかなく、四球は8個選んでいたのだ。しかし、吉田はボールを上げることができていなかった。高めのボールすらゴロを叩いてしまっていたのだ。

4月18日まで吉田の打球角度は41打球中23球(56%)がマイナス数値だった。平均打球角度はマイナス5度、強打率は33%、そして平均打球速度は時速85.1マイル(約137km)だった。

低めのボールだけではなく、吉田は高めのボールでさえ上を叩いてしまっていた。空振りは少なかったとは言え、吉田本来の打球ではまったくなかった。

下がその代表的な例だ。ソニー・グレイが投じたボールは吉田のベルト付近の高さだった。しかし、吉田が大振りした打球は簡単なゴロでアウトになってしまった(もっとも、このときは三塁ランナーが生還した)。

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吉田正尚は何を変えたのか

打率がシーズン最低に落ち込んだ後、吉田がスイングを改善したことは明らかだ。ライナー性のボールが増えてきている。

4月18日以降5月2日までに打球角度はプラス6度になり、打球速度は時速93.6マイル(約150.6km)に上がった。本塁打も4本放ち、シーズンで5本目となった。

ボールが上がるようになり、吉田の成績もそれに伴い急上昇してきた。強打率は59%になり、打率も.298に上がった。

打球角度がマイナスになる確率は24.3%にまで大幅に下がった。

強打者がスランプに陥ることはよくある。しかし、彼らはそこから適応するすべを知っている。吉田がこの数週間に行ったことはその良き例になるはずだ。とくに投手が際どいコースに投げてきたときに、そのことがよく分かる。

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吉田のこれからの課題はこの好調をどれだけ維持できるかになる。打球角度、打球速度、そしてゴロ率は選手の打撃成績を完全に占うことはできない。野球というゲームには数多くの要素が絡むし、吉田にとってもそれは変わらない。 .432というBABIPをシーズン終了まで続けることは誰にもできないのだ。

しかし、そうした数字は別にしても、吉田の打撃は明らかに改善された。レッドソックスのファンは楽観的になるのも無理はない。しかし、今後は相手投手も吉田の適応に対抗する適応を行うだろう。それでも現在の好調ぶりを維持することが今後のハードルとなる。

吉田正尚に関する数字

吉田の復調ぶりを示すカギとなる数字は以下の通りだ(数字は現地5月2日時点)。

12

吉田は現在12試合連続安打中である。ロビー・グロスマン(テキサス・レンジャーズ)と並び、継続中の記録としてはMLB最長である。その期間の打率は.435であり、シーズン打率も.298まで上がった。ホームランも同期間に4本打っている。

.432

同期間のBAPIPが.432であることは前述の通りだ。そして強打率は63%である。それまで2本だった長打も8本打っている。

12(再び)

3月30日から4月18日まで、そして4月20日から5月2日まで、この2つの期間を比較すると、吉田の平均打球角度はマイナスからプラスに転じ、12度上がった。ライナー性の強打が増え、それが安打数の増加に繋がっているのだ。

原文: Masataka Yoshida stats: How Red Sox slugger has overcome early MLB struggles after move from Japan
翻訳:角谷剛

※編集部注:当記事は米国東部時間2023年5月2日時点の情報を基に構成されています。その後、現地7日(日本時間8日)の試合までに吉田選手は連続安打を16に伸ばしています。

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Kevin Skiver

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Kevin Skiver has been a content producer at Sporting News since 2021. He previously worked at CBS Sports as a trending topics writer, and now writes various pieces on MLB, the NFL, the NBA, and college sports. He enjoys hiking and eating, not necessarily in that order.