ロサンゼルス・エンゼルスのジョー・マドン監督が4月15日(日本時間16日)の対テキサス・レンジャーズ戦で誰もが驚く作戦を行い、大差でのリードを許す結果になった。敵の巧打者コーリー・シーガーをまるで全盛期のバリー・ボンズや全盛期のジョシュ・ハミルトンのように扱ったのだ。その狙いはチームを奮い立たせることだったと監督は言った。
4回裏レンジャーズの攻撃で満塁となった場面で、マドンはシーガーを敬遠で歩かせることを命じたのだ。それにより、レンジャーズは4-2と試合をリードした。その回さらに犠牲フライとボークで2点が追加され、点差は6-2へと広がった。
次の回で、エンゼルスの打撃陣とレンジャーズの投手陣がマドンを救った。5回表の攻撃でエンゼルスは5点を奪い、逆転に成功した。試合は最終的に9-6でエンゼルスが勝利を収めた。
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ジョー・マドン監督はなぜこの決断をしたのか
マドンは一体何を考えていたのだろうか。満塁での敬遠策は72年間で3回しか行われた例がない。試合後のインタービューで語ったマドン自身の言葉によれば、それは心理学である。
「大きな失点を防ぐためだよ。そして正直に言うなら、チームに刺激を与えたかったということもある。普通はそんなことはしない。だけど、あのときはダグアウトから出て、あんなことをすれば、チームはそれに反応するかもしれないって思った。ただそれだけのことだよ」
「シーガーはとても良いバッターだ。まだ試合は序盤だってことは分かっていたけど、あれで試合の流れを変えることができると考えた」
「我々が直面したあの場面では、あれこそが正しい作戦だと考えたのさ」
エンゼルスのセンターを守るマイク・トラウトはそう考えなかったようである。シーガーが自動で打点を与えられているところを見送り、唖然とした表情を浮かべていた。
選手たちはどのように反応したか
興味深いことに、この作戦を知らされた人物たち ― 救援投手のオースティン・ウォーレンも含む ― は「理解した」とマドンは言った。
「あれはマウンド上で素晴らしい瞬間だった。歴史的と言ってもいいくらいにね」とマドンは言った。
試合後のウォーレンはそれほどまでには感動していなかったようだ。
「もちろん、僕は驚いたけどね。だけどジョー・マドンにノーとは言えないよ。僕はマドンをとても信頼しているし、実際に上手くいったしね」とウォーレンが言ったとMLB公式サイトは伝えている。
マドンは自身の作戦を解析数字ではなく勇気で決めると言った。
「数字はひとつのことだけどね、人間というものはそれとはまったく違う。私にとっては、あの場面で我々に必要とされていたのは人間的要素だ。数学とは何の関係もない」
シーガーはマドンの思い切った作戦について多くを語らなかった。
「最終的に僕たちは試合に負けた。それがすべてだよ。もし勝てていたら良かったのだけどね」とシーガーが言ったと地元紙『ダラス・モーニング・ニュース』が報じた。
「あれをすごい作戦のように見て、上手くいったと褒めたたえることもできるだろう。しかし、そうではない。あれは失敗した作戦だ。ただ我々がその後よくなかっただけだ。その時点では6-2で勝っていたのだからね。勝つべき試合だった」とレンジャーズのクリス・ウッドウォード監督は言った。
他にこの作戦を行った監督はいるか
前述したように、1950年以来、満塁での敬遠策が行なわれた例は今回を含めて3回ある。そのうちの2回はマドンが行なったもので、しかも対戦相手はどちらもレンジャーズだった。2008年8月17日、当時タンパベイ・レイズの監督だったマドンは9回にジョシュ・ハミルトンを歩かせることを命じた。
それより10年前の1998年5月28日、アリゾナ・ダイヤモンドバックスの監督だったバック・ショーウォルターがサンフランシスコ・ジャイアンツ戦の9回でバリー・ボンズを歩かせた。
過去2回の事例では、満塁での敬遠策を行なったチームはその時点で試合をリードしていた。そしてどちらもそのリードを守り、試合に勝利している。今回のエンゼルスは逆転勝ちであったが、何はともあれ、この作戦を行なった場合での戦績は3戦3勝ということになった。
(翻訳:角谷剛)
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