デレク・ジーター氏がマイアミ・マーリンズの経営者と共同オーナーであった時期が終わりに近づいてきた。
2月28日（日本時間3月1日）、ジーター氏はチームCEO（最高経営責任者）の役職を下りることと球団の株式所有者でもなくなることを発表した。2017年8月にブルース・シャーマン氏が率いるオーナーグループが球団を買収して以来、ジーター氏は共同オーナーのひとりでもあり、CEOでもあった。
「私たちは5年前にマーリンズ球団の立て直しに向けたビジョンを立ち上げました。そして私はCEOとしてその計画を実現するために尽力してきたことを誇りに思っています。懸命な努力、信頼、そして責任感を通して、私たちはこの球団をすべての方向から変え、労働環境を改善し、そして成功に向けた長期的な戦略プランを実行してきました」とジーター氏は発表の中で述べた。
シャーマン氏は声明を発表し、ジーター氏が球団フロントオフィスで過ごした4年間を後に、球団組織から離れることを認めた。
「マーリンズはジーター氏の多くの貢献に感謝し、そして氏の将来に幸運を祈ります。私たちはこれから球団を引っ張っていく新しいCEOを探しますが、その間も、ビジネスと野球の両面において、豊富な人材をもっています。オーナー・グループは球団の将来への投資を引き続き行います。そして私たちはマーリンズをふたたびポストシーズンに進出するチームへと作り上げ、ファンと地域コミュニティの発展に貢献できるよう全力を尽くします」とシャーマン氏は声明の中で述べた。
なぜジーター氏はマーリンズから離れるのか…ひとりでチーム年俸総額の3/4近い報酬が足かせ？
ジーター氏がマーリンズに在籍していたことを誇りに思うと発言した一方、どうやら氏は球団の長期的計画からは外されていたようだ。
「球団の将来へのビジョンは私がかつて任されたものとは違ってきています。新たなシーズンが始まる今こそ、私が身を引くには良いタイミングです」とジーター氏は声明に書いた。
ジーター氏の決断はMLB機構と選手会が新しい包括的労働協約の交渉を続けるロックアウトのさなかに下された。2月28日はメジャーリーグがレギュラーシーズンを予定通りの3月31日に開幕するためのデッドラインと指定した日でもある。
交渉で行われている主な議論のひとつに、いかにチームを競争へ追いたて、最近よく見られるようになった「タンキング」を防ぐかがある。
タンキングとはあるチームが年俸額を低く抑え、その代わりに高順位のドラフト指名権を得るために、本気で上位を目指さないことを指す。ジーター氏とシャーマン氏がマーリンズのオーナーになって以来の4シーズンを合わせた勝敗成績は218勝327敗である。そしてジーター氏の下でマーリンズがポストシーズンに進出したのは2020年だけだ。その年のマーリンズはパンデミックの影響で短縮されたレギュラーシーズンで31勝29敗の成績を挙げ、出場枠が拡張されたポストシーズンに滑り込んだ。
マーリンズは2018年と2019年のシーズンにおいて選手たちに支払った年俸額が不当に低かったとMLB選手会が非難する3チームのひとつでもある。他の2チームとはピッツバーグ・パイレーツとタンパベイ・レイズである。
スポーツ契約専門サイト『Spotrac』によると、2022年シーズンを前にしたマーリンズの年俸総額はリーグで4番目に低い（5,570万ドル、約64億円）である。オフシーズンにアビサイル・ガルシアやミゲル・ロハスと契約し、ジェイコブ・スタリングスやジョーイ・ウェンドルをトレードで獲得したにもかかわらずだ。
一方、ジーター氏は、スポーツ専門局『ESPN』によると、マーリンズが発行した株式のうち4％を所有していた。経済紙『Forbes』は2021年3月時点でこの球団の価値を99億ドル（約1,137億円）と試算した。そうすると、ジーター氏が所有する株式の価値は3,960万ドル（約45億5000万円）という計算になる。
さらに、スポーツ専門サイト『The Athletic』のレポートによると、ジーター氏がマーリンズから受け取っていた年俸は500万ドル（約5億7450万円）で、この契約は2022年後半まで失効しないということである。
（翻訳：角谷剛）
