イチローでも16季かかった"通算3000安打"を次に実現するMLB選手は誰か。カブレラ後、最長の空白期間が生まれる理由とは

Edward Sutelan

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通算3000安打とは、あらゆるプロスポーツのなかでも最も困難な記録のひとつである。現在までにわずか33人しか達成していない。4月23日(日本時間24日)、デトロイト・タイガースのミゲル・カブレラが39歳で"通算3000本安打クラブ"への仲間入りを果たした。

コロラド・ロッキーズ戦の初回、アントニオ・センザテラ投手が投じた1球をカブレラは右方向に強いゴロで転がるシングルヒットを放った。

1970年代以前まで、”通算3000安打クラブ”にはおよそ4年に1人くらいの頻度で新メンバーが仲間入りしていた。1970年代に入るとややペースが落ち、ロッド・カルー(1985年8月5日達成)からロビン・ヨーント(1992年9月9日達成)まで最長の7年がかかっている。2000年以降は4年に1人以上のペースに戻っている。

しかし、カブレラの後しばらくは新メンバーが現れないと思われている。あるいは歴史上最長の空白期間になるかもしれない。

通算3000安打に到達するためのカギ

通算3000安打を達成した選手たちの傾向を子細に見ていくと、いくつかの重要なカギが共通していることに気がつくだろう。最初のカギは選手がデビューした時の年齢である。

33人中25人(カブレラも含む)は21歳以下でデビューしている。通算3000安打達成者で最もデビュー時の年齢が高かったのはイチローで、27歳である。しかし、イチローはその後10シーズン連続で200安打以上を続け、42歳のときに16季かけて通算3000本に達した。2番目にデビュー時の年齢が高かったのはウェイド・ボッグスの24歳である。ボッグスはシーズン200安打以上を7回達成し、18年のメジャー生活中4シーズンを除いて120試合以上に出場した。

ただ若くデビューすれば良いというわけではもちろんない。打者は安定して成績を残さなくてはいけない。この33人は平均して3.3回のシーズン200安打を記録している。現役選手で3回以上のシーズン200安打を達成している選手はひとりしかいない。ホセ・アルトゥーベの4回だ。

しかし、現役選手で通算3000安打クラブ入りしている2人のメンバー、アルバート・プホルスとカブレラは1回しかシーズン200安打以上を達成していない。そうなると、これは絶対条件ではなさそうだ。この2人に共通しているのは安定性である。シーズン162試合平均の安打数は、カブレラが187本で、プホルスは180本だ。それでも通算3000安打クラブの中では最下位に近いのであるが。162試合平均の安打数が最も低かったメンバーはリッキー・ヘンダーソンの160.6本である。

2022年シーズンが始まる前、85人の選手がシーズン162試合平均で最低160本以上の安打ペースである。しかし、それは打席数を考慮に入れていない数字だ。オニール・クルーズはシーズン243本ペースであるが、それは2試合に出場して3本の安打を打ったからだ。最低でも1000試合以上に出場して、且つシーズン160本以上のペースで安打を記録している選手は30人しかいない。

しかし、通算3000安打クラブに所属するメンバーたちのシーズン162試合平均安打数は189.1本なのだ。もしある選手がシーズン平均で160本の安打しか打たなかったとすると、3000本に到達するまでに18.75シーズンかかる計算になる。現役選手でシーズン平均189本以上の安打を記録している選手はひとりしかいない。これもアルトゥーベで200.3本だ。

そして、別のカギはキャリアの長さだ。通算3000安打クラブのメンバーのうち、現役シーズン数が20より少ないのは12人しかいない。そのなかで40歳より若く引退したのは、まだ現役のカブレラ(39歳)、カルー、ヨーント、そしてロベルト・クレメンテだけである。現役選手中、40歳を過ぎてもプレイを続けているであろう選手を予想することは不可能だが、そのリストはそれほど長くならないことは確かである。

次に通算3000安打を達成するMLB選手とは

残る現役選手のなかで、最低でも通算2000安打を達成済みの選手は3人しかいない。ロビンソン・カノ(2629)、ヤディアー・モリーナ(2115)、そしてジョーイ・ボット(2033)である。

問題はカノとモリーナは39歳で、ボットは38歳だということだ。カノはあと残り321本ではあるが、2018年シーズン開始以来253本しか安打を記録していない。モリーナは2022年シーズン後に引退する予定だ。ボットは引退の時期を明らかにしていないが、残り1000本到達には時間がかかる。

この3人以外で、最低でも通算3000安打の半分以上を達成済みの現役選手は以下の通りである。

選手 年齢 安打数
ネルソン・クルーズ 41 1923
エルビス・アンドラス 33 1874
アンドリュー・マカッチェン 35 1837
エヴァン・ロンゴリア 36 1818
ホセ・アルトゥーベ 32 1783
ジャスティン・アップトン 34 1748
フレディ・フリーマン 32 1720
エリック・ホズマー 32 1646
マイケル・ブラントリー 35 1583
ポール・ゴールドシュミット 34 1578

見て分かる通り、全員が30代以上であるし、4人を除いては34歳以上だ。

通算3000安打クラブ入りの重要な要素は若いうちにキャリアを開始し、まだ若いうちに安打数を積み重ねることだ。上記のリストのうち、30歳になる前に1500安打に到達した選手は2人しかいない。エルビス・アンドラスとホセ・アルトゥーベだ。これらの数字は『Baseball Reference』を参照している。

アンドラスはキャリア最初の11シーズンで2年を除くすべてで最低でも150本以上の安打を記録した。だが直近の2シーズンではたったの141本だ。現時点で通算3000安打までは1126本を残している。これからシーズン平均150本を続けたとして、あと7年半はかかる計算になる。そのときにはおそらく41歳になっているだろう。

長い間ヒューストン・アストロズの2塁手を務めてきたアルトゥーベは、次の通算3000安打達成者に最も近い選手だと思われる。まだ32歳であるし、29歳で1568本に到達した。安定した打撃成績を残していることで知られ、2014年から2017年まで4年連続でシーズン200安打を記録した。

そうなると、問題は出場試合数になるだろう。アルトゥーベは昨年146試合に出場したが、それ以前に140試合以上に出場したシーズンは2017年にまで遡る。そして現在もまた故障者リストに入っている。もちろん、2020年シーズンは60試合しかなかったことは考慮に入れなくてはならない。これは通算3000安打を狙うすべての現役選手にとっての不利な材料だ。アルトゥーベは2021年に167本の安打を記録した。2017年以来、160本以上を記録したシーズンは2回しかない。もしシーズン平均160安打を続けたとして、通算3000安打に到達するまでには7.6 年かかる。そのときには39歳になっているはずだ。

次に興味深い名前はフレディ・フリーマンだ。ロサンゼルス・ドジャースに移籍したばかりのこの1塁手はここまで13年間の現役生活でシーズン出場試合数が147試合を下回ったことが3回しかない。新人シーズン(20試合)、2015年(118試合)、そして2020年(60試合)である。シーズン200安打を達成したことは1度もないが、162試合平均では177本を記録しているうえ、打撃力は衰える兆しを見せない。直近4年間ずっと最優秀選手賞(MVP)候補のトップ10入りを果たしている。

フリーマンの健康と負担の少ない1塁手というポジション、さらには指名打者(DH)になる可能性を加えると、通算3000安打の候補者として挙げてよいだろう。162試合平均安打数は177本であり、このペースを守れば、あと7.2 年で通算3000安打に到達する。そのときの年齢は38歳か39歳だろう。

カノが通算3000安打に到達しない限り、次に達成するのはアルトゥーベかフリーマンということになりそうだ。しかし、この2人ともそれまでには最短でも7年はかかると思われる。

30歳以下で通算安打数が多い現役選手は以下の通りである。

選手 年齢 安打数
マニー・マチャド 29 1444
マイク・トラウト 30 1427
ブライス・ハーパー 29 1284
ザンダー・ボガーツ 29 1253
クリスチャン・イエリッチ 30 1215
ムーキー・ベッツ 29 1160
フランシスコ・リンドー 28 1013
ホセ・ラミレス 29 1005

彼らが健康を維持し、現役生活を長く続けることができれば、このなかから通算3000安打に到達する選手が現れてきても不思議ではない。

それよりもっと若い世代ではどうだろうか。23歳のフアン・ソト はここまで498本の安打を記録し、テッド・ウィリアムズと比較されるまでの逸材だ。ブラディミール・ゲレーロ・ジュニアもまた23歳で、彼もまたカブレラとよく比較され、385本の安打を記録している。ワンダー・フランコは21歳になったばかりであるが、衝撃的なデビューを飾った。しかし、もちろん、彼らには長い年数が必要になる。

通算3000安打に到達するまでにかかる長い年数を考えると、カブレラが達成したことの偉大さが分かる。これからしばらくは達成者が現れないだろう大記録なのである。

通算3000安打を達成したMLB選手

選手 通算安打数
ピート・ローズ 4256
タイ・カッブ 4189
ハンク・アーロン 3771
スタン・ミュージアル 3630
トリス・スピーカー 3514
デレク・ジーター 3465
ホーナス・ワグナー 3430
カール・ヤストレムスキー 3419
ポール・モリター 3319
エディ・コリンズ 3315
アルバート・プホルス 3308
ウィリー・メイズ 3293
エディ・マレー 3255
ナップ・ラジョイ 3252
カル・リプケン・ジュニア 3184
エイドリアン・ベルトレ 3166
ジョージ・ブレット 3154
ポール・ウェイナー 3152
ロビン・ヨーント 3142
トニー・グウィン 3141
アレックス・ロドリゲス 3115
デーブ・ウィンフィールド 3110
イチロー鈴木 3089
クレイグ・ビジオ 3060
リッキー・ヘンダーソン 3055
ロッド・カルー 3053
ルー・ブロック 3023
ラファエル・パルメイロ 3020
キャップ・アンソン 3011
ウェイド・ボッグス 3010
アル・ケーライン 3007
ロベルト・クレメンテ 3000
ミゲル・カブレラ 3000

原文:Next to 3,000 hits: Why it could be a long time until another MLB star follows Miguel Cabrera
翻訳:角谷剛

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Edward Sutelan

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Edward Sutelan joined The Sporting News in 2021 after covering high school sports for PennLive. Edward graduated from The Ohio State University in 2019, where he gained experience covering the baseball, football and basketball teams. Edward also spent time working for The Columbus Dispatch and Cape Cod Times.