MLBのロックアウトは解決の目途が立たない。春季キャンプの開始は延期されそうな気配が濃厚になってきた。こうなると、レギュラーシーズンの開始も遅れるか、さらには試合数の削減もありえるのでは、と心配する野球ファンも出てくるだろう。
もはや現在の状況では通常のレギュラーシーズンを望むことは絶望的に見えるかもしれないが、歴史に目を転じてみると、選手たちとオーナーたちには交渉を続ける時間がまだいくらかは残されているようである。
1990年、1976年MLBロックアウトからの教訓
1990年のMLBロックアウトは2月15日に始まり、32日間続き、3月19日に終了した。予定されていた4月2日のシーズン開幕日を前に、通常なら各チームが開幕ベンチ入りを果たす選手のリストを決めなくてはならない時期だった。ロックアウトの解決が長引いたため、スプリングトレーニング(春季キャンプ)はわずか3週間に短縮された。オープン戦は3月26日にようやく開始され、そしてレギュラーシーズンの開幕は1週間延期された。結局、4月9日が新たなシーズン開幕日となった。MLBはさらにレギュラーシーズンの終了を3日延ばし、162試合制を守ることができた。
それより14年前の1976年、オーナーたちは春季キャンプ開始直後の2週間にわたってロックアウトを行い、選手たちをチーム施設から閉め出した。その後、春季キャンプは3月17日に再開された。この年もレギュラーシーズンは影響を受けなかった。
これら2つの例は2022年現在の状況にとって悪くない前兆のように見える。
さらに注目に値することに、1990年も1976年も、シーズンが開始されるとファンはすぐにロックアウトのことを忘れてしまった。これらのシーズンを現在の地点から振り返ってみても、ロックアウトがあった事実は注釈程度の印象しかなく、まるで通常のシーズンであったようでもある。
2022年はソーシャルメディアによって怒りが拡散される文化になっていることで、あるいはロックアウトの記憶が消えるまでにもっと長い時間がかかるかもしれない。それでも、今シーズンも過去の例と同じような経緯を辿ることは十分に予想できる。どきどきするプレイを見ていられる限り、野球ファンは限りなく寛容になる傾向があるからだ。
1990年と1976年のロックアウトは2022年に起きている出来事とまったく同じ条件で比較できるものではないが、162試合制を可能にするための期限は似たようなものになるだろう。オーナーたちは3月16日ぐらいにロックアウトを終了すればよい。つまり、レギュラーシーズンのスケジュールを変更することなく、双方には合意に至るまでの交渉の時間がまだ十分に残されているということだ。MLBが1990年の例を踏襲するとすれば、レギュラーシーズンの開始は1週間延期され、新たなシーズン開幕日は4月7日くらいに変更されることになるだろう。
春季キャンプはどれだけ短縮することができるか
それでも、春季キャンプの開始が遅れ、その期間が大幅に短縮されることは理想的な状況ではない。しかし、それほど心配することでもないかもしれない。もともと、選手たちはこれまでにも春季キャンプは長すぎるという不満を口にしてきたからだ。どれだけの準備期間を必要にするかは選手によって様々であるが、ほとんどの選手は現行の6週間は過剰であると考えている。過去のコンディショニング方法とスケジュールにとらわれた歴史的な遺物だと言うのだ。従って、3~4週間程度に春季キャンプが短縮されると、それはかえって選手たちに歓迎され、それどころか新たな基準にさえなるかもしれない。春季キャンプを可能な限り短縮するとすれば、最低では1週間だと言う選手もいるだろう。
こうして見ると、レギュラーシーズンについてパニックに陥るには、今はまだ時期が早過ぎるようだ。仮にロックアウトによって春季キャンプが2~3週間ほど短縮されたとしても、2022年シーズンはさほどの問題を抱えることなく、試合数も減らさずに行うことが可能である。
(翻訳:角谷剛)