元ロサンゼルス・エンゼルス職員に有罪判決:故タイラー・スキャッグス投手の薬物過剰摂取による死亡に関与

Edward Sutelan

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ロサンゼルス・エンゼルスの元広報部長エリック・ケイ被告は、2019年に同チームに所属していたタイラー・スキャッグス投手にフェンタニル(訳者注:麻薬性鎮痛剤の一種。近年米国で乱用が社会問題となっているオピオイドに分類される合成薬品)を提供し、同投手を死に至らしめたとして、テキサス州フォートワース地方裁判所が有罪判決を下した。

このニュースを報じたUSA Today紙の記事によれば、ケイ被告はエンゼルスがテキサス州アーリントンに遠征中、フェンタニルを「故意的にかつ意図的に」スキャッグス氏に手渡したと判決文は述べている。有罪判決が下るまでに、事件の審議は3時間もかからなかった。

2019年にスキャッグス氏が死亡した際、テキサス州タラント郡の医療捜査機関は死因をアルコール、フェンタニル、そしてオキシコドン(筆者注:オピオイド系の薬物)を複合摂取したことによる、吐しゃ物が喉に詰まった窒息死であったと判断した。

USA Today紙は、ケイ被告には最低でも20年の禁固刑か終身刑が下されると伝えた。ワシントン・ポスト紙は、ケイ被告の弁護団は6月28日に予定されている判決日の後に控訴すると報じている。

タイラー・スキャッグスの死亡経緯

2019年7月1日、スキャッグス氏はテキサス州アーリントンにあるホテルの一室で意識を失っているところを発見された。エンゼルスはテキサス・レンジャースとの対戦が予定されていた。

スキャッグス氏からテキストメッセージと電話の返信がないことに不安を覚えた妻がチーム関係者に連絡し、ホテルの部屋を訪ねたのだった。スキャッグス氏が呼びかけに応えなかったことで警察へ通報されたが、駆けつけた警察官らは同氏がそのときすでに死亡していたことを確認した。その時点では犯罪が関与した疑いは認められなかったとされている。

エンゼルス球団は公式声明の中で「タイラー(スキャッグス)は今までも、そしてこれからも、私たち家族の大切な1人です。この悲劇に見舞われた奥様のカーリさんと家族の皆様に、私たちの心からのお悔やみとお祈りを申し上げます」と述べた。

そして声明はこう続けた。
「現時点ではこれ以上の情報はありません。どうかタイラーの家族に皆様の愛とお祈りを送り続けて下さい」

8月末の解剖結果で、スキャッグス氏が死亡したときの体内にアルコール、フェンタニル、そしてオキシコドンが検出されたことが報じられた。遺族はスキャッグス氏本人が違法薬物を所持していたことについて、エンゼルスの職員が関与していたことを信じていると声明を出した。

解剖結果を受けて、米国連邦麻薬取締局(DEA)がこの事件についての捜査を同年9月に開始した。ケイ被告は連邦捜査官に対して、スキャッグス氏が禁止薬物を摂取していたことを知っていたこと、そして死の数日前にオキシコドンの錠剤を手渡していたことを供述したと報じられた。しかし、ケイ被告はその錠剤が死の直接原因であったとは考えていないと述べた。

2020年8月、ケイ被告はスキャッグス氏が死亡した原因になったフェンタニルを提供した疑いで起訴された。

エリック・ケイ裁判

ケイ被告の裁判は2月8日に第一回口頭弁論が行われるまで始まらなかった。その後わずか9日間で結審した。

テキサス州北部地域の米国連邦裁判局によると、スキャッグス氏が複数の錠剤を所持していて、その1つには「M/30」とラベルに記されていた。この錠剤にはフェンタニルが含まれていた。

裁判の中で、何人か別の選手たちがケイ被告から錠剤を受け取っていたことが明らかになった。選手たちはスキャッグス氏のホテルの部屋にあったものと似た青色のM/30錠剤を受け取っていた。この選手たちはケイ被告のみがこの錠剤の提供元であったこと、そして受け渡しが球場内で行われていたと述べた。リンジー・ベラン米国判事助手は彼ら選手たちが「エリック・ケイから手渡された禁止薬物によって死の一歩手前だった」と語ったとワシントン・ポスト紙が報じている。

判事事務所によると、スキャッグス氏が死亡した夜に、ケイ被告が同氏のホテルの部屋に訪れたことを示すテキストメッセージが裁判での有力な証拠として用いられた。

ワシントン・ポスト紙によれば、被告の弁護団はスキャッグス氏が禁止薬物を過去に他の人物からも受け取ったことがあったことから、死亡の直接原因になった錠剤をケイ被告が手渡したものではなかった疑いがあると主張していた。また弁護団は死因がフェンタニルではなく、アルコールかオキシコドンであった可能性も指摘した。

AP通信が報じたところでは、医療捜査官、医師、そして政府専門家らはすべてフェンタニルがスキャッグス氏の死因であることはほぼ間違いないと話した。

判事事務所によれば、ケイ被告は2つの罪状で有罪とされた。1つは致死性のある薬物を流通させたこと、もう1つは薬物を流通させることを目的に所持したことである。

USA Today紙によれば、ケイ被告、エンゼルス球団、そして広報部門副社長のティム・ミード氏がスキャッグス氏の遺族から死亡事件の責任を問う訴訟を起こされている。

ケイ被告の量刑が決まるのはいつか

ケイ被告の量刑は6月28日に決定される。

ワシントン・ポスト紙は被告の弁護団は判決の後で控訴すると報じている。

評決への反応

エンゼルス球団:

「すべてのエンゼルス球団関係者はこの悲劇がもたらした苦しみ、特にスキャッグス氏の遺族に対して、深い悲しみを感じています。この事件によって傷つけられたすべてのご家族とご友人に、心からお悔やみを申し上げます。

選手たちの証言は私たちにとって聞くことが大変に困難なものでした。それはあらためて、禁止薬物の乱用とその被害があまりにも隠ぺいされがちであることを私たちに知らしめました。タイラーの死を知った直後から、私たちはこの悲劇を巡る真相をすべて明らかにすることに努めてきました。

メジャーリーグ機構と選手会がオピオイド系薬品に関する規則を改訂し、現在その薬害に苦しむ選手たちを助けるために重要な一歩を踏み出したことを感謝しています」

スキャッグス氏の遺族:

「私たちは米国政府と陪審員がこの重大な事件を正しい評決へ導いてくれたことに深く感謝しています。タイラーは私たち家族の光でした。彼は去ってしまいました。何物をもってしても、彼を生き返らせることはできません。私たちは正義が行われたことについては安堵しています。たとえ、今日と言う日が、私たち家族の人生における最悪の日を思い出さざるをえない、痛みに満ちた日であったとしても、です」

チャド・ミーチャム米国連邦判事:

「この事件は我々に冷厳な事実を再認識させる。フェンタニルは人を殺すということだ。フェンタニルを売買するものは、その場所が世界的に有名な野球スタジアムの外であれ、あるいは路上の取引であっても、それを手にした人々の生命を危険にさらしているのだ。誰もこの致死的な薬物に免疫を持ってはいない。タイラー・スキャッグ氏は人々に愛された投手であったし、そのキャリアを上りあげる途中だった。司法当局はご遺族と友人たちの想像を絶する悲しみに対して、薬物ディーラーの責任を追及できたことを誇りに思う」

マイケル・モルフェッタ被告弁護人:

「この事件は後から作り上げられたものだ。エリック・ケイ氏を弁護するものとして、彼を私たちの手に取り戻す」とモルフェッタ弁護人は言った。

弁護人の1人、レーガン・ウィン氏は「私たちはもちろんこの評決に失望している。私たちは政府の主張を疑うべき多くの理由があると考えていた。これはもう1つの悲劇だ。エリック・ケイ氏は連邦刑務所で最低でも20年か、あるいはそれ以上過ごすことになる。そしてタイラー・スキャッグ氏は2度と帰ってはこない」と言った。

(翻訳:角谷剛)

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Edward Sutelan joined The Sporting News in 2021 after covering high school sports for PennLive. Edward graduated from The Ohio State University in 2019, where he gained experience covering the baseball, football and basketball teams. Edward also spent time working for The Columbus Dispatch and Cape Cod Times.