MLB2022年シーズンで注目すべき有望株:ボビー・ウィットJr.、アドリー・ラッチマン、フリオ・ロドリゲスらがリードする激戦の新人クラス

Edward Sutelan

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ここ数年、何人かの有名な有望株選手たちがメジャーリーグ昇格を果たした。

ロナルド・アクーニャ・ジュニアと大谷翔平は2018年にブレイクした。ブラディミール・ゲレーロ・ジュニアとフェルナンド・タティス・ジュニアが2019年のビッグネームだった。ルイス・ロベルトは2020年にデビューした。ワンダー・フランコとランディ・アロサレーナは2021年にタンパベイ・レイズが躍進した中心的存在となった。

2022年の新人クラスはさらに特別になるチャンスを秘めている。トップ有望株と広く認められている選手たちの多くがMLBシーズン開幕ベンチ入りを果たし、さらに何人かが近い将来メジャーに昇格すると考えられているからだ。

新たな包括的労使協約にある一項が各チームにトップ有望株選手を開幕ベンチ入りさせることを奨励することにつながった。開幕をメジャーリーグで迎えた新人がその年の新人王候補のトップ3、あるいは最優秀選手賞(MVP)かサイヤング賞のトップ5に選出された場合、そのチームは次のドラフトで補足指名権を得ることになったからだ。チームにとって、有望な選手を早い時期にメジャー昇格させる新たな理由ができたのだ。

2022年は注目すべきビッグネームがひしめいている。シーズン開幕にあたり、米スポーティングニュースが特別視するのは以下の有望株選手たちだ。尚、このリストは2022年にメジャーデビューを果たす選手たちに限っている。

C.J. Abrams
Getty Images

CJ・エイブラムス、サンディエゴ・パドレス

マイナーリーグでは盗塁はあまり重要視されなくなっている。パドレスのCJ・エイブラムス遊撃手はその流れを変えようとしている。2019年のドラフトで全体6位で指名されたエイブラムスはマイナーリーグで最も足が速い選手のひとりであり、春季キャンプでもその抜群の能力を見せつけ、開幕ベンチ入りを大きくアピールした。

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2019年にドラフト入団してすぐの年に早くも34試合に出場し、21回の盗塁を試み、15個を成功させた。2020年はマイナーリーグが新型コロナウイルスの影響で中止になったが、その翌年には2Aで42試合に出場し、15回の盗塁を試み、13個を成功させた。打撃成績は打率296、出塁率.363、長打率.420 だった。このペースを162試合でも保てることができれば、シーズン60盗塁となる。

エイブラムスは2021年シーズンの長い時期を故障によって欠場した。高校を卒業してから、まだ76試合にしか出場しておらず、経験不足であることは否定できない。だが、その打撃能力、スピード、そして守備力はプレーオフ復帰を目指すパドレスにとって貴重な新戦力になり得る素材である。タティス・ジュニアの離脱が数か月間に及ぶと見られているので尚更だ。

*訳者注:エイブラムスはここまで3試合に出場し、9打数1安打。1回の盗塁失敗がある。

Hunter Greene

ハンター・グリーン、シンシナティ・レッズ

レッズファンにとって、ここまでは失望が多いオフシーズンだった。ポストシーズン進出の可能性があるはずのチームが補強する代わりに戦力ダウンしているように見えたからだ。しかし、2022年には明るい材料もいくつかある。その最大のものは、2017年ドラフト全体2位指名のハンター・グリーンである。レッズはグリーンが4月10日にメジャーデビューを果たすことと先発ローテーション入りすることを発表したのだ。

*訳者注:グリーンのデビュー登板は5回を投げて、3失点、奪三振7個で、勝利投手になった。

グリーンのマイナーリーグ生活は順調には始まらなかった。2017年のデビュー年は苦しみ、2018年はシーズン途中まで防御率4.48の後、トミージョン手術を受けた。2021年に復帰してからは、マウンド上で圧倒的な成績を残した。106回1/3を投げ、防御率3.30、139個の三振を奪い、四球はわずかに39個だった。

本格派の速球投手を好む人にとっては、グリーンは見逃せない投手だ。コンスタントに160km/hを越え、レッズのファンサイト『Redleg Nation』によれば、実戦で167.4km/hを記録したこともある。大きく曲がるスライダーも武器に加え、速球のスピードはメジャーリーグ全体でも指折りの投手である。レッズのマウンドから目を離すことはできない。

Max Meyer
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マックス・マイヤー、マイアミ・マーリンズ

マイヤーは2017年ドラフト組と同年代ではあるが、プロ入りの時期は異なる。2017年に34巡目で指名されたが、入団を拒否して、ミネソタ大学への進学を選んだ。ゴールデン・ゴーファーズ(ミネソタ大学のニックネーム)では目覚ましい成績を挙げ、3年後のドラフトでマーリンズから全体3位指名を受けた。

僅か1年のマイナーリーグ時代、マイヤーは2A から3Aへ昇格し、どちらのレベルでも圧倒的な成績を残した。2A で20試合、3Aで2試合に先発登板し、合計の防御率は2.27、111回を投げ、130個の三振を奪い、与えた四球は42個だけだった。

マイヤーはグリーンのように160km/h超を連発する投手ではないが、それでもそれに近い球速と豊富な持ち球を持っている。140km/h近い高速スライダーはマイナー時代に最も効果的だった決め球のひとつだ。大卒のマイヤーは同年のドラフト入団組の中では最も早くメジャー昇格を果たすと見られている。2021年には早くも3Aに到達し、プロ入り2年目でのメジャー昇格も夢ではない。

*訳者注:マイヤーは2022年シーズン開幕を3Aで迎え、最初の先発登板では4回を投げ、2失点、5奪三振だった。

Jose Miranda
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ホセ・ミランダ、ミネソタ・ツインズ

有望株選手にはアマチュア時代に輝かしい経歴を持つドラフト上位指名選手と下位指名から時間をかけて昇格してきた選手がいる。ホセ・ミランダは後者のタイプだ。2016年ドラフトでツインズから全体73位指名を受けてプロ入りし、実力を発揮し始めるまでにはしばらくの時間が必要だった。

しかしミランダは2021年には騒がれる存在になった。2Aと 3Aの合計で30本の本塁打を打ち、そのうちの17本は3Aで打ったものだ。打率.344、出塁率.401、長打率.572の素晴らしい打撃成績を残し、さらに特筆すべきは三振率の低さだ(2A で11.5% 、3Aで 13.1%)。

ミランダの守備は特に優れているわけではないが、複数のポジションをこなすことができる。今シーズン中にメジャー昇格するとすれば、その点はプラスに働くだろう。打撃力ではメジャーリーグでも大きなインパクトを与えることができるはずだ。

*訳者注:ミランダは2022年シーズン開幕を3Aで迎え、ここまでの5試合で25打数5安打1本塁打。

Gabriel Moreno
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ガブリエル・モレノ、トロント・ブルージェイズ

ブルージェイズはほとんどのポジションが固まっているように見える。このチームに唯一欠けているとすれば、スター性のあるキャッチャーだ。ガブリエル・モレノはその解答になれるかもしれない。モレノがブレイクし、有望株選手チャートの中で自身の評価を高めるには絶好の舞台が整っている。

モレノは2019年に1Aへ昇格し、そこで好成績を挙げた。85試合に出場し、打率.280、出塁率.337、長打率.485 の数字と12本の本塁打を記録したのだ。この22歳のキャッチャーがさらに注目を集め始めたのは2021年になってからだ。2A ニューハンプシャー・フィッシャーキャッツで32試合に出場し、打率.373、出塁率.441、長打率.651、本塁打8本、三振25個、四球14個、という目覚ましい成績を残した。シーズン途中で親指を骨折したため、3Aでは僅かしか出場機会がなかった。2022年シーズンは3Aで迎えると見られている。

今のところ、ブルージェイズはダニー・ジャンセンとアレハンドロ・カークをキャッチャーとして起用していく予定だ。しかし、この2人の打撃力はそれほどの評価を受けてはいない。もしモレノが2Aで残した成績を3Aバッファロー・バイソンズでも再現できるようなら、メジャー昇格もさほど遠くはないだろう。そうなれば、すでに強力なツインズの打線がさらに強力になる。

*訳者注:モレノは2022年シーズン開幕を3Aで迎えた。また出場機会はない。

Julio Rodriguez
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フリオ・ロドリゲス、シアトル・マリナーズ

マリナーズは2021年シーズンにおいて最大のサプライズのひとつだった。90勝を挙げ、プレーオフ進出までもう少しまで迫ったのだ。2022年はさらに良いシーズンになることが予想されているが、その大きな理由のひとつはフリオ・ロドリゲスの存在である。この21歳の外野手は有望株選手リストのトップにまで登りつめてきた。春季キャンプでも強烈な印象を残したロドリゲスを、マリナーズはメジャーリーグに昇格させることを発表した。

専門家たちは何年もロドリゲスの打撃能力を高く評価してきた。そしてロドリゲスは一度もその期待に背いたことはなかった。しかし、昨シーズンこそが最も高いレベルでの実力を証明した年になった。2Aに昇格すると、46試合に出場し、打率.362、出塁率.461、長打率.546 、本塁打7本、三振37個、四球29個の成績を残したのだ。

ロドリゲスの打撃はダイナミックではあるが、三振か四球かホームランかといった典型的なタイプの強打者でもない。スカウトたちは打線の中軸を担い、首位打者と本塁打王を狙える才能があると見ている。マリナーズの外野はすでにジェシー・ウィンカー、ジャレッド・ケレニック、そしてミッチ・ハニガーで埋められているが、ロドリゲスがシーズン中に台頭してきたとしても、それは驚くべきことではない。

*訳者注:ロドリゲスはここまで3試合に出場し、12打数1安打、三振6個とやや苦しんでいる。

Adley Rutschman
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アドリー・ラッチマン、ボルチモア・オリオールズ

毎年のドラフト会議を前に、誰がその年の全体1位指名を受けるかが話題になることは多い。しかし、2019年ドラフトはその例外だった。2018年ドラフトが終了してから、翌年にオリオールズが全体1位指名権を行使するまで、オレゴン大学のキャッチャーだったアドリー・ラッチマンが選ばれることを誰も疑う者はいなかったからだ。それからのラッチマンもその評価を揺るぎないものとした。

2020年にマイナーリーグが中止したこともあり、2021年シーズンを前にして、ラッチマンのプロ選手としての出場は37試合に留まっていた。しかし、ラッチマンの実力はまったく落ちていなかった。2Aでの80試合で.901 OPSの成績を挙げ、3Aに昇格した。そこでも43試合で.896 OPSの成績でシーズンを終えた。両レベル合算の成績は打率.285、出塁率.397、長打率.502 、本塁打23本、三振90個、四球79個、だった。

打撃能力以上に、スカウトたちはラッチマンをマイナーリーグでも最高の守備力を備えたキャッチャーとして評価している。ポジションごとの最強打者に与えられるシルバースラッガー賞と、最高の守備力を持った選手に与えられるゴールデングローブ賞を同時に受賞できる逸材だと見られているのだ。春季キャンプは上腕三頭筋の腫れにより途中で離脱したため、一旦マイナーに戻され、メジャー昇格は投球に目が慣れてきてからになるかもしれない。しかし、2022年シーズンの前半にはラッチマンのプレイをメジャーの舞台で見ることができるだろう。

*訳者注:ラッチマンは2022年シーズン開幕を3Aで迎えた。また出場機会はない。

Spencer Torkelson
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スペンサー・トーケルソン、デトロイト・タイガース

ラッチマンと同じように、2020年スカウトで全体1位指名権を持っていたタイガースがスペンサー・トーケルソン一塁手を指名することはほぼ確実視されていた。このアリゾナ州立大学のスター選手は大学野球やサマーリーグで強打を存分に発揮し、スカウトたちは最もメジャーリーグのレベルに近い打者のひとりとして評価していた。マイナーリーグを僅か1年で通過し、タイガースでのキャリアを開始しようとしている。

トーケルソンは2021年シーズンを1Aで始めたが、その年のうちに3Aまで昇格した。3Aトレド・マッドヘンズでは40試合に出場し、打率.238に留まったが、.881 OPS、四球23個、三振36個の数字は、トーケルソンが選球眼に長け、確実なミート能力がある選手であることを示した。.233 BABIPの数字は、少ないサンプルサイズでアンラッキーに見舞われた打者であったことを示している。春季キャンプでは .895 OPSの成績を残し、メジャー開幕ベンチ入りを確定させた。

タイガースはマイナーリーグではトーケルソンを1塁手と3塁手で起用したが、ミゲル・カブレラが今年からは指名打者(DH)に専念すると見られているため、トーケルソンにはレギュラー一塁手としての期待がかかる。アメリカン・リーグ新人王レースで最有力候補のひとりだ。タイガースはトーケルソンに加えて、もうひとりの有望株選手であるライリー・グリーンも昇格させると見られている。これらの若い選手たちは近い将来にチームの中心的存在になることを求められている。

*訳者注:トーケルソンはここまで3試合に出場し、8打数0安打、四球3個、三振6個とやや苦しんでいる。

Alek Thomas
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アレク・トーマス、アリゾナ・ダイヤモンドバックス

ダイヤモンドバックスはこれからの数年で盛り上がる材料を必要としている。52勝110敗のシーズンを終え、今年もまたナショナル・リーグ西地区の最下位が予想されているからだ。しかし、チーム組織のトップ有望株選手であるアレク・トーマスのメジャー昇格が間近であることは好材料になるだろう。

トーマスはマイナーリーグで優れた打撃能力を発揮してきた。2021年にはそれにパワーが加わった。2A と3Aで106試合に出場し、18本の本塁打を打ち、打率.313、出塁率.394、長打率.559の成績を残したのだ。52個の四球を選び、僅か99個の三振を喫し、そして13個の盗塁に成功した・

まだ21歳で、3Aでは34試合にしか出場していないことから、トーマスがシーズン開幕をメジャーで迎えるとは予想されていない。しかし、2021年と同じような活躍を見せれば、マイナーに長く留まることはないだろう。ミート能力、パワー、そしてスピードなど、トーマスに欠けているものはあまりない。チェイス・フィールド(ダイヤモンドバックスの本拠地)に新たな興奮をもたらすはずだ。

*訳者注:トーマスは2022年シーズン開幕を3Aで迎えた。ここまでの5試合で22打数5安打。

Bobby Witt Jr
(Getty Images)

ボビー・ウィット・ジュニア、カンザスシティ・ロイヤルズ

2022年には多くの有望株選手がメジャーに昇格する。そのなかでも最も騒がれるのはボビー・ウィット・ジュニアであろう。元MLB投手のボビー・ウィットを父に持つこの内野手は2019年ドラフトではラッチマンに次ぐ全体2位で指名された。それ以来、有望株選手トップ3の位置に留まり続けている。高卒ドラフト入りの選手でありながら、ウィットはロイヤルズの開幕ベンチ入りを果たし、メジャー昇格をラッチマンより先に実現した。

高校を卒業した時から、ウィットは5ツール(万能型)選手として評価されてきた。マイナーリーグでの成績はそれを証明するものだ。2021年シーズンを2Aで始め、61試合で.939 OPS、本塁打16本、盗塁14個の成績を残すと、3Aに昇格した。そこでも63試合で.933 OPS、本塁打17本、盗塁15個とほぼ同じレベルの成績を残した。

ウィットはすぐにでも野球界を代表する若手スターの仲間入りをするだけの能力がある。打撃はミートが上手く、パワーもある。足は速く、守備力も高い。スポーツ・ギャンブル専門サイトの『Vegas Insider』では、ウィットをアメリカン・リーグ新人王の最有力候補としている(訳者注:ナショナル・リーグの最有力候補は鈴木誠也)。ロイヤルズには楽しみな若手選手が多いが、ウィットはその1番手のようだ。

*訳者注:ウィットはここまで3試合に出場し、12打数2安打3打点。安打は2本とも2塁打。

(翻訳:角谷剛、各訳注は現地時間4月12日時点)

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Edward Sutelan

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Edward Sutelan joined The Sporting News in 2021 after covering high school sports for PennLive. Edward graduated from The Ohio State University in 2019, where he gained experience covering the baseball, football and basketball teams. Edward also spent time working for The Columbus Dispatch and Cape Cod Times.