MLB機構と選手会の間で締結された新たな包括的労使協定にはいくつかのルール変更を含む。そのなかで最も重要な変更のひとつが、拡張されたプレーオフのシステムである。これまでプレーオフに進出できたのは10チームだったが、今年からは12チーム(各リーグから6チームずつ)へ増えるのだ。
2022年から、MLBポストシーズンには以下のチームの間で争われる。
- アメリカン・リーグ地区優勝3チーム
- ナショナル・リーグ地区優勝3チーム
- アメリカン・リーグ・ワイルドカード3チーム
- ナショナル・リーグ・ワイルドカード3チーム
この新形式では1試合のみのワイルドカード試合は廃止される。代わりに地区優勝チームで勝率が3番目のチームとワイルドカード枠3番目のチームが対戦し、またワイルドカード枠1番目と2番目チームが対戦する。これらの対戦は3試合制シリーズで行われ、シリーズ開催地はシード順上位チームの本拠地になる。
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もうひとつの重要なポイントは、新形式ではレギュラーシーズンを同率で並んだチーム同士が対戦する163試合目がなくなることだ。その場合はNFLが導入しているようなタイブレークによって順位が決定される。
MLBプレーオフの新たな構造とは
新構造における各リーグのプレーオフ進出チームは以下の通りになる。
- 第1 シード: リーグ最高勝率
- 第2 シード: 地区優勝チーム中勝率2位
- 第3 シード: 地区優勝チーム中勝率3位
- 第4 シード: 地区優勝チーム以外で最高勝率
- 第5 シード: 地区優勝チーム以外で勝率2位
- 第6 シード: 地区優勝チーム以外で勝率3位
第1シード と 第2 シードは第1ラウンドが不戦勝になる。第3 シード と 第6 シードが3試合制のシリーズを第3 シードの本拠地で行う。同じことが第4 シードと 第5 シードの間で行われる。
MLBプレーオフではシード順の組み換えは行われるか
この形式ではシード順の組み換えは行われない。第2ラウンドで第1 シードは第4 シード対 第5 シードの勝者と対戦し、第2 シードは第3 シード対 第6 シードの勝者と対戦する。これにより、シリーズのバランスを保たれ、また第1 シードが第2ラウンドで他の地区優勝チームと対戦する事態が起こらないようになる。
2021年ならどのチームがMLBプレーオフに進出したか
2021年プレーオフは以下の通りだった。
アメリカン・リーグ | ナショナル・リーグ |
タンパベイ・レイズ | サンフランシスコ・ジャイアンツ |
ヒューストン・アストロズ | ミルウォーキー・ブルワーズ |
シカゴ・ホワイトソックス | アトランタ・ブレーブス |
ボストン・レッドソックス | ロサンゼルス・ドジャース |
ニューヨーク・ヤンキース | セントルイス・カージナルス |
この形式では、レイズ、アストロズ、ホワイトソックス、ジャイアンツ、ブルワーズ、そしてブレーブスはワイルドカード・ラウンドでは試合がなかった。レッドソックス、ヤンキース、ドジャース、そしてカージナルスがワイルドカード・ラウンドで対戦した。
新形式では以下のようになる。
アメリカン・リーグ | ナショナル・リーグ |
タンパベイ・レイズ | サンフランシスコ・ジャイアンツ |
ヒューストン・アストロズ | ミルウォーキー・ブルワーズ |
シカゴ・ホワイトソックス | アトランタ・ブレーブス |
ボストン・レッドソックス | ロサンゼルス・ドジャース |
ニューヨーク・ヤンキース | セントルイス・カージナルス |
トロント・ブルージェイズ | シンシナティ・レッズ |
変更後のルールでは、ホワイトソックスが本拠地の3試合制シリーズでブルージェイズを迎え撃つことになる。同じように、ブレーブスが本拠地の3試合制でレッズと対戦する。言うまでもないことだが、こうなっていたとしたら、ナショナル・リーグの側に大きな影響があったはずだ。ブレーブスは昨年ワールドシリーズ制覇まで勝ち上がったからだ。
どのシード順が最も大きな影響を受けるか
第4 シードと 第5 シードは小さな影響を受ける。ワイルドカード・ラウンドが1試合制から3試合制のシリーズに変わるからだ。しかし、新形式でもっとも大きな影響を受けるのは第3 シードである。第1ラウンドの不戦勝を失い、第6 シードとのシリーズを戦わないといけなくなる。ワールドシリーズへの道のりが以前よりはるかに険しくなったのだ。もし第6 シードが激戦区から来た場合(例えば今年のア・リーグ東地区やナ・リーグ東地区のように)、地区優勝チームの3番手には厳しい対戦相手となる。
地区優勝以外のチームに第1ラウンド不戦勝の可能性はあるか
もし2021年のジャイアンツとドジャースのように、同地区内のチームがリーグ内1位と2位の勝率をあげた場合、勝率2位のチームは第2 シードにはなれず、第4 シードの位置を与えられる。MLBは地区の意義を最小化するNBAとは異なる方針を採用するからだ。
今のところ、地区優勝を重視することはMLBの基本方針である。このことはしばらくの間は変わらないだろう。
MLBプレーオフはなぜ拡張されたのか
プレーオフを争うには相応しくない戦力のチームがポストシーズンに紛れ込んでしまう懸念はある。しかし、MLBはNBAに比べると上位チームと下位チームの差は小さい。今年もシーズン70勝のチームがプレーオフに進出するようなことは起こらないだろう。新ルールが昨年適用されていれば、91勝のブルージェイズと83勝のレッズがプレーオフに進出したことになる。
率直に述べるなら、MLBのプレーオフが拡張された理由は、チームがより多くの収益を得ることができるからだ。だからこそ、オーナーたちはこの変更を繰り返し主張してきたのだ。そして地区優勝を重視することは妥協の産物である。覚えておくべきは、プレーオフに進出するチームが単にひとつ増えただけではないことだ。最低でも6試合が追加されたのだ。6試合分の収益は大きい。ワイルドカード・ラウンドはもう1試合だけではなく、ポストシーズン内のシリーズとして組み込まれたからである。
(翻訳:角谷剛)
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