もし大谷翔平が健康で好調を保ったとすれば、他選手にア・リーグMVPのチャンスは残っているのか

Ryan Fagan

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アリゾナ州テンピ - ブラディミール・ゲレーロ・ジュニアは2021年にスーパースターへと成長した。22歳の選手が送ったシーズンとしては、我々がかつて見たことがないほどの活躍を見せた。

ゲレーロはトロント・ブルージェイズで一塁を守り、48本の本塁打を打ち、123得点と111打点を挙げ、打撃記録は打率.311、出塁率.401、長打率.604だった。アメリカン・リーグとナショナル・リーグを合わせた歴史の中で、ゲレーロが記録したこの6つのシーズン記録をすべて上回った選手は13人しかいない(ベーブルース、ルー・ゲーリック、ジミー・フォックス、ミッキー・マントル、そしてアレックス・ロドリゲスは複数回達成している)。そして、それを24歳になる前のシーズンでそれを達成した選手はひとりもいないのだ。

ゲレーロ・ジュニアのシーズンは実に驚異的だった。

それにもかかわらず、ゲレーロがア・リーグ最優秀選手賞(MVP)の投票で、1位得票をひとつも受けることはなかった。大谷翔平が30票すべてで1位を獲得したのだ。そして、そのことに疑問を投げかける意見はまったくなかった。ゲレーロのシーズンは歴史的であったが、大谷のそれは超越的だったのだ。大谷には同じグループに所属する13人の選手はいない。唯一無比の存在なのである。

大谷は46本の本塁打を打ち、26個の盗塁に成功し、8本の三塁打を打った。MLBの歴史の中で、この3つの数字を同一シーズンで記録した選手は他にはいない。他には100打点、.965 OPS 、4.9 bWAR がロサンゼルス・エンゼルスの指名打者として大谷が挙げた記録である。大谷は投手としてもア・リーグの先発投手のなかで平均以上だった。23試合に先発登板し、防御率3.18、FIP 3.52、9イニング平均で奪三振10.8個、4.1 bWAR が投手として挙げた記録だ。

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かくして、二刀流選手の大谷が30票満票で1位得票を獲得し、ゲレーロは30票中29票で2位投票を集めた(サルバドール・ペレスが残り1つの2位投票を獲得した)。ここでひとつの疑問が浮かんでくる。大谷以外の誰かが2022年のア・リーグMVPに選出される可能性はあるだろうか。2022年にはなくても、2023年、2024年ではどうだろうか。

驚くべきことに、大谷はまだ27歳なのだ。

エンゼルスのチームメイトであるデビッド・フレッチャー は米スポーティングニュースにこう語った。
「もし大谷がシーズンを通して健康だったら、MVPに選ばれないことは想像することさえ難しいよ。大谷は他の誰よりも努力しているし、その成果がすべて出ているのを見るのは楽しい」

フレッチャー は間違っていない。

健康面がカギであることは言うまでもない。もし大谷に1か月かそれ以上の故障離脱期間があれば、他の選手にもチャンスは生まれるだろう。そのことに疑いの余地はない。だが、もし大谷がずっと健康でいたとすれば、どうなるだろうか。

「もし大谷が昨シーズンと同じだけか、それに近い成績を挙げたら、またMVPを取るよ。問題は健康だけだ。それしかない」とエンゼルスのジョー・マドン監督は米スポーティングニュースに語った。

真実を述べるなら、我々はまだ大谷が昨シーズンに達成したことの意味を正確に把握できていない。現在生存している誰も、それに似たものを見たことがないのだ。我々には比較材料というものがない。ベーブ・ルースは1919年に二刀流選手として活躍した。しかし、現在の野球はベーブ・ルースの時代のものとはまったく異質なものである。オールスター級の打撃力とオールスター級の投手力を兼備する選手の価値を評価する基準とその方法を見つけることは難しい。

もし仮に大谷が健康で、打撃成績が15%下降したが、投手成績は5%上昇したとすれば、それでもまだMVPに相応しいだろうか。ほぼ間違いないと言ってよいだろう。もし防御率が3.65に上がり、本塁打が「たったの」37本だったとすれば、それでもまだMVPに相応しいだろうか。多分、そうであると言ってよいだろう。一般の野球ファンは大谷の昨シーズンと今シーズンを比較するかもしれないが、MVPの投票権をもつ全米野球記者協会の投票者たち(ア・リーグのチーム本拠地がある15都市ごとに2人ずつ)は大谷の2022年シーズンを他の選手たちと比較するからだ。そして、打者と投手の両方でそれだけのインパクトを与える選手が他にいることは考えられないし、それを成し得た選手がリーグの最優秀選手に選ばれないことも想像できない。

そうなると、大谷の成績がどれだけ落ちたら、他の選手にMVPの可能性が出てくるだろうか。そう考えた方がよさそうだ。話のタネとしては面白いかもしれないが、忘れてはならないこともある。大谷は今でも成長していることだ。今年の成績がまったく落ちないことも十分に考えられるし、あるいはもっと成績を伸ばすかもしれない。

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「大谷は競争心が強いし、野球に関する高い知能を持っている。観察力も優れているから、平均的な選手が長年かかって理解することを既に知っている。物静かな男だけど、実行するときには、観察と分析してきたものを存分に発揮する。大谷が投げるとき、これ以上ないほどの詳細なスカウティング・レポートを彼に渡すこともできるだろう。だけど大谷はそのときに自分の目で見えるものを信用するだろうね。同じことが打席に立つときにも言える。盗塁しようとするときにも言える。それが大谷という選手なのさ。他の選手とは違う。そのことはどれだけ評価しても、し過ぎるということはない。そうやって今まで成長してきたのだろうね。大谷は人生のすべてを野球に捧げてきたし、だからこそ我々はこうやって大谷の偉業を見ることができるのさ」とマドンは言った。

そしてマドンは大谷が2022年には打者としてさらに成績を伸ばすであろう、もうひとつの理由を指摘する。

「大谷の打撃成績はもっとよくなるよ。その理由は他の選手の名前だよ。トラウト、レンドン、ウォルシュ、エトセトラ、エトセトラだ。大谷は昨シーズンの大部分でラインアップのなかで孤軍奮闘していた。特にプレーオフ枠争いが激しくなっていたシーズン終盤には、まともに勝負してもらえていなかった。あまり気が付いた人はいないようだけどね。それに大谷はチームバッティングのために、自分の打ち方を変えることさえもあった。だけど、他の選手が戻ってきたら、大谷はそれをしなくてもよくなる。だから、もっと良い成績を挙げるだろうね」とエンゼルスの指揮官は言った。

春季キャンプが開始した頃、大谷は「昨シーズンよりずっと調子は良いと感じている」と報道陣に言った。

「もしそれが本当だったら、リーグの全員にとって本当に恐ろしいことだよ」とフレッチャーは笑いながら、そう言った。

もう一度言おう。フレッチャーは間違っていない。

(翻訳:角谷剛)

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Ryan Fagan, the national MLB writer for The Sporting News, has been a Baseball Hall of Fame voter since 2016. He also dabbles in college hoops and other sports. And, yeah, he has way too many junk wax baseball cards.