主役を演じたワールドシリーズがまだ遠い先のことだった9月上旬、ミニッツメイド・パークのロッカーの前でジョージ・スプリンガーの口から出た言葉は、聞く者の心を打った。
ヒューストン・アストロズのセンターはそれまで、ヒューストンの壊滅的な打撃を耳にしていた。テキサス州を襲ったハリケーン「ハービー」による洪水被害の写真や映像を見ていたのだ。
スプリンガーは「その場に行き、必要なら壁に突っ込むのが僕らの仕事だ。僕らがすべきことを何でもやる。僕らの街はそれに値するからだ」と述べた。
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フロリダでテキサス・レンジャーズと対戦していたときも、ヒューストンに戻ってニューヨーク・メッツとのシリーズに臨んだときも、彼はその想いを繰り返し口にしている。
彼の目にその情熱を感じたときに、ひとりでもヒューストンの人の気持ちを盛り立てられるのでれば、彼は真っ先に壁に向かっていくと100%信じることができただろう。
結果的には、その必要はなかった。ワールドシリーズでの5本のホームランというだけで、それは果たされたからだ。ただ、第7戦よりも前のことも振り返ってみよう。今回は第1戦だ。スプリンガーは4三振に終わり、アストロズは1点しか挙げられなかった。
「スプリンガーはどうした?」多くの人がそう疑問に思ったものだ。
その質問に答えたのがA.J.ヒンチ監督だ。答えは「何もない」だった。第2戦の前に、ヒンチ監督は「彼のスイングは素晴らしいと思う」と述べている。
「彼は最もしびれる選手のひとりだ。オールスター選手だよ。そして我々はエネルギー、パフォーマンス、クラブハウスでの音楽まで、彼を非常に頼りにしている。この男にできないことはない。だから、彼のスイングがダメだなんて言うのは正しくないね。今夜は非常に当たるはずだからだ。彼が口火を切り、良いボールが来れば、うまく実りを生んでくれる。誰もそれは疑っていない。私にとって彼のスイングは完ぺきだ」
その完ぺきなスイングで、第2戦のスプリンガーは3安打を記録。10回表には決勝点となる2ランを放った。それからスプリンガーは第4戦、第5戦、そして第6戦とホームランを続けたのだ。
そして第7戦。スプリンガーは先頭打者として2塁打で出塁すると、コディ・ベリンジャーの送球ミスからホームイン。さらに第2打席で再びホームランを放った。4試合連続、最多タイとなるワールドシリーズ5本目の本塁打だ。
同一シーズンでのワールドシリーズ4試合連続ホームランは、史上初の快挙だ(ベーブ・ルースとルー・ゲーリッグの4試合連続ホームランは2シーズンにまたがっている)。
文字通りに壁へと突っ込む代わりとなることを、彼はやってのけた。打ちひしがれたアストロズのファンたちを幸せにする。それを、彼は成し遂げたのだ。
原文:World Series 2017: George Springer gives recovering Houston five more reasons to cheer