【第4話】ダルビッシュの47球

Muneharu Uchino

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(第3話はコチラ

 

1回表に2点を先制されたドジャースは1回裏、先頭打者のクリス・テイラーが打席に入る。
アストロズ先発は第3戦に続きダルビッシュとのマッチアップとなった24歳右腕、ランス・マッカラーズだ。

 

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マッカラーズは試合前、こう語っていた。

「このシリーズは第7戦まで戦われる運命だったのだ」

球団創設56年目で初のワールドシリーズ制覇を目指すアストロズと、1988年以来29年ぶりのワールドシリーズ制覇を目指すドジャース。
かつてはナショナル・リーグ西地区のライバル同士だった両軍のワールドシリーズは、史上稀に見る大熱戦となっていた。

第1戦はドジャースのエース、クレイトン・カーショウが7回1失点の快投を見せ、ドジャースが3-1で勝利。
第2戦はシリーズ新記録となる本塁打8本の乱打戦となり、延長11回の末にアストロズが7-6で勝利。
第3戦はアストロズ打線がダルビッシュを早々に打ち崩し、アストロズが5-3で勝利。
第4戦は同点の9回にドジャースが一挙5点を奪い、ドジャースが6-2で勝利。
第5戦は延長10回、壮絶な打撃戦の末、アストロズが13-12で勝利。
第6戦は一転して投手戦となり、ドジャースが3-1で勝利。

そして迎えた第7戦、運命のマウンドを託されたのがダルビッシュとマッカラーズだった。

ダルビッシュは試合後、こう語っている。

「もちろんこの一番最後の試合、第7戦というところで任されるピッチャーっていうのは、1年に2人だけ、2人も出ないので、まあ第7戦までいかないとない話ですから、ここを経験できたことはすごく大きかったですけど、チームが勝てるようなピッチングがしたかったです」

ダルビッシュが言う通り、ワールドシリーズ第7戦とは、投げたくても投げられるものではない。
マッカラーズはメジャー3年目にして、この大舞台で投げる機会に恵まれた。

しかし、マッカラーズもダルビッシュ同様、立ち上がりに苦しんだ。

先頭打者のテイラーにいきなり二塁打を許すと、1アウトを取った後、3番ジャスティン・ターナーに死球。
打席に4番、コディ・ベリンジャーを迎えた。

ここで、今季39本塁打を放った新人スラッガーに対して、マッカラーズは得意のカーブを投げ続けた。

マッカラーズは“スナップドラゴン”と自ら称する、縦に大きく変化するカーブを武器としている。
ニューヨーク・ヤンキースとのリーグ優勝決定シリーズでは、24球連続でカーブを投げた場面もあった。

マッカラーズは第3戦で、ベリンジャーから3打席連続三振を奪っている。
第7戦でも、結果は変わらなかった。
ベリンジャーは内角低めのカーブに力ないスウィングで空振り三振。

2アウトランナー1、2塁。
打席には5番、プイグ。

カウント3-1からマッカラーズのカーブはすっぽ抜け、プイグのヒジを直撃。
この回2つ目の死球で、2アウト満塁となった。

打席には6番、ジョク・ピーダーソン。
このワールドシリーズ、3本塁打と絶好調だ。

マッカラーズがピーダーソンに投じた初球のカーブは外角へ抜けたが、判定はストライク。
際どいコースだったが、マッカラーズは判定に助けられた。
2球目も膝元にカーブを投げ込み、空振りで2ストライク。
3球目もやはりカーブで、ピーダーソンが引っ張った打球はセカンド正面のゴロになった。

3アウトチェンジ、ランナー3人残塁。
ドジャースは満塁の好機を作りながら、1点も取ることができなかった。

1回裏終了時、既に試合開始から30分が経過していた。

第5話につづく)

Muneharu Uchino