【第1話】ダルビッシュの47球

Muneharu Uchino

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2017年11月1日、ロサンゼルス。
2回表、2アウトランナー3塁。

マウンド上のダルビッシュ有は、その日の47球目を投げようとしていた。
打席にはヒューストン・アストロズの1番打者、ジョージ・スプリンガー。

 

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今季34本塁打を放った28歳の右打者は、ワールドシリーズ第6戦まで4本塁打と絶好調。
今日の第1打席でもダルビッシュから、レフト線への二塁打を放っている。

Astros 3-0 Dodgers

負けたら終わりのワールドシリーズ第7戦、これ以上の失点は許されない。
カウントは3-2、ダルビッシュがセットポジションに入る。

ダルビッシュがこのワールドシリーズで投じた96球目は真ん中低め、96マイルの速球だった。

この1球がダルビッシュにとって、この試合最後の、そして今季最後の1球になった。

スプリンガーが振り抜いた打球は、ドジャー・スタジアムの左中間スタンドに突き刺った。
推定飛距離483フィート(約133.5メートル)の2ランホームラン。

Astros 5-0 Dodgers

スタジアムが静まり返り、ロサンゼルス・ドジャースのダグアウトからデイブ・ロバーツ監督が出てくる。
ダルビッシュはロバーツ監督にボールを渡し、険しい表情でダウアウトに歩き出す。

1 2/3回、47球、5失点。
4日前の第3戦に続き、2回を投げ切ることができなかった。

スプリンガーに対して速球を投じたのは、苦渋の選択だった。
ダルビッシュは試合後の記者会見で、こう語っている。

「前回の登板でスライダーと、まあ自分の一番得意にしている曲がり球系が全くダメで、この中4日の間にずっと修正をしてきて、ストライクを投げるレベルまで持ってこれたんですけども、打者を圧倒できるレベルまでは引き上げることができなかったので、まあ色々試行錯誤してきたのは良かったですけれど、最後2試合でそれができなかったのが残念です」

やはり、このワールドシリーズで話題になった「滑るボール」の影響もあったのだろうか。
ダルビッシュはもっとも重要な場面で、一番得意なスライダーを投げられなかった。

第2話につづく)

Muneharu Uchino